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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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架空の魔王


「それが今回のピンチを回避するためのシナリオとどう繋がってくるのニャ?」


「魔王という存在を使う」


「「魔王?」」


 私とロイヤは首を傾げる。そんな存在はイースにはいないのだから。


「大臣やロイヤを操っていたのは研究施設にいる魔王の仕業だったということにするのじゃ」


「なるほどッス。黒幕的な存在を作ってしまえば、オレが操られていた理由も、研究施設に向かうためのシナリオも、同時にできるってわけッスね」


「そうじゃ」


「だけど、魔王なんてイースのどこにもいないニャ?」


 そんな存在を持ち出して、研究施設にたどり着いたときに倒すべき魔王がいないなんてことがわかれば、それは不自然、矛盾となり、ナオトの目が覚めるきっかけとなりかねない。


 つまりはプロジェクトの継続を不可能にするものである。


 だがしかし、そのときすでに旅の目的地である研究施設にたどり着いているのならば、私たちの目的、自壊コード装置は目と鼻の先。起動など容易いことだろう。


「そう。この違世界、いや、現実世界には魔王どころかモンスターさえ存在しない。その真実を、そこで正直にナオトに打ち明けるのじゃ……」


「そこが本当に旅の終着点になるってわけッスね」


 今までの冒険がすべて嘘の上にあったと知ったとき、ナオトはどんな反応をするのだろうか。


 もう二度と人を信じられなくなっても仕方がないかもしれない。


 私を恨むかもしれない。


 もしかしたらアルミームソードで刺されちゃうのかな……?


 そんなふうに思うと自然と涙が溢れてきた。


「しいて言えば、魔王だったのは私ニャ……」


 最後の最後にとんでもなく重い一撃を、一番近い立場からナオトにぶつけようとしているのだから。


 でも、もう目をそらし続けるわけにはいかない。


 私は一気に涙を拭った。


「わかったニャ。考えてみれば誰も彼も役割に操られていたのは事実ニャ。つまり、すべての黒幕、魔王として名乗り出るのはこの私ニャ!」


「本当にそれでよいのか? リリアンや」


「なんの! 村長だって最初は私のこと、ラスボスよりもたちの悪い存在だって言ってたニャ」


「じゃが、さすがにワシも今までのお主を見てきて考えも変わった……お主はナオトの、いやワシらの、立派な仲間じゃよ……」


「ありがとニャ。そう言ってもらえて私も嬉しいニャ」


「でも、リリアンさんだけがナオトさんを騙していたわけでもないのに、なんだか気が引けるッス……」


「ロイヤもありがとニャ。でも私なら平気ニャ!」


 私は改めて二人の顔を見た。


「村長。その案で行くニャ。すべての黒幕は研究施設にいるニャ。そして、そこでこの冒険を終わらせるニャ」


 私たちの意思は固まった。


「ではワシからラストに向けたシナリオを話していこうと思う……」


 セツがゆっくりと語り始めた。


「まずは現状の整理からじゃ。今、勇者ナオトは王国の乗っ取りを企む大臣の尻尾を掴もうとして、その最中、ロイヤの裏切りによって倒れ、地下牢に放り込まれた」


 私とロイヤは頷く。


「そこでワシはロイヤが何者かによって操られていることに気づき、解呪魔法によってロイヤを正気に戻した」


「それならロイヤがパーティーから離脱せずに済むニャ」


「ありがたいシナリオッス!」


「じゃが、城内で騒ぎを起こしたワシらはその後、大臣の手の者によって捕らえられ、勇者と同じく地下牢に閉じ込められてしまう」


「なるほどニャ……地下牢からの再スタート。悪くない展開ニャ」


「しかもオレたち四人がそろって行動開始できるのもいい点ッスね!」


「でも脱出はどうするのニャ?」


「そこは一人、大臣の悪巧みに気づいていた姫がワシらを解放しに来る展開とする」


「文句なしにベタベタのテンプレ展開ニャ!」


「実は、姫は自分一人で大臣に抗えないと考えて勇者を待っていたのじゃ。そしてワシらの協力を得て、真実の姿を映すと言われる鏡を大臣に向ける……」


「そんな真実の鏡をどうやって用意するッスか?」


「大丈夫ニャ。鏡型の大きなタブレットを大至急スタッフさんに用意してもらうニャ!」


「なるほど。アプリ的なもので大臣を魔物の姿として表示するッスね!」


「というわけで……」


 私は猫耳型インカムをわざとらしくコンコンとつつく。


「九条専務、よろしくニャン!」


 この会話を聞いているだろう九条専務に向かって私は明るくお願いする。


 インカムからはチッと舌打ちが聞こえてきたので、たぶん聞こえていたのだろう。


「そして、なんやかんやで真実の姿を暴かれた大臣は怒りに燃えたロイヤの一撃によって倒れるのが自然な展開じゃろうな」


「オレを操っていた報いってわけッスね」


「じゃが、そこで大臣から不気味な影が飛び出すのじゃ!」


「それが魔王って奴ッスね?」


「わかったニャ。プロジェクションマッピングでも使って、なんとか表現してもらうニャ! ね? 九条専務?」


 私はかわいい声を出して、九条専務におねだり。


「リリアン君、キミはいったい私をなんだと思って……」


「にゃふ~ん! きゅぴきゅぴ! さっすが九条専務ですニャ~!」


「ま、まあ、ここは私も協力を惜しむところではないからな……」


 九条専務が頬を赤らめて照れている姿が目に浮かぶようだ。


「ありがとうございますニャー!」


 なんだか九条兄弟の扱い方がわかってきたような気さえする今日この頃だ。


 とにかく場面展開さえ実現できれば、なんとかこの状況も乗り越えられそうではある。


「大丈夫ニャ! 真実の鏡も。大臣から現れる不気味な影も。全部スタッフさんやスタッフさん、それにスタッフさんたちがサポートしてくれるニャ!」


 私たちは頷きあった。


「そこまでくれば魔王の影が残していく言葉は一つじゃな。『研究施設で待つ』と」


「決まりニャ!」


「決まりッス!」


 あとはこれをナオトが起きてから実現するだけ。


「そうと決まれば、ナオト様が目覚める前に私たちも拘束されて地下牢に閉じ込められるのニャ!」


 私たちは意を決し、自ら投獄されたのだった。

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