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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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緊急会議


 ナオトを地下牢に閉じ込めたあと、私たちは緊急会議を行うことになった。


 なるべくならナオトが目覚める前にその後のシナリオと環境を整えておきたいところだ。


 一番の問題はロイヤの今後。


 ロイヤ抜きでは今後のプロジェクト進行は不可能。仮に裏方に戻ってもらうにしても、何かのトラブルで私たちの目の前に現れてしまうリスクを考えないわけにはいかない。


「ワシに提案がある」


 沈黙を破ってセツが切り出した。


「ロイヤは何者かによって操られていたことにする……幸いにも勇者は王が傀儡化した現場を見た直後だ。ロイヤもまた同様だとしたところで不自然にはなるまいて」


 それができるならロイヤがパーティを離脱しなくて済む。


「賛成ニャ」


「でも、どうやってそれを正当化するッスか?」


「そこはワシが賢者の力をもって、なんやかんや呪いを解いたことにすればよいじゃろう」


「だけど問題は、ナオト様の心に残る王国への疑念……と言ったところかニャ?」


「ナオトさんがあんなに正義感の強い人だったとは驚きだったッス」


「そこはワシもちと見誤っておった。王国への疑念、このままにしておくのも得策とは言えぬであろう」


「なんとかすっきり収まるシナリオを考えるしかないニャ」


「ここは超絶売れっ子ラノベ作家のセツさん頼りッスね!」


 駄作家任せが一番不安なんだが……とは言ってる場合でもないので私も黙っている。


「ここはみんなで知恵を出し合うニャ」


 私たちは三人で互いに頷きあった。


「その前に一つ気になってたニャ。さっき廊下でナオト様を追いかけてたとき、どうしてロイヤは追いつかなかったニャ?」


「答えは簡単ッス。単純にナオトさんのほうが速かったッス」


「ロイヤより速かったニャ!?」


 人間離れした動きで敵を殲滅するロイヤを見ている限り、とてもそんなふうには思えないが……。


「たぶんナオトさん、元々の身体能力はオレより高いッスよ? たしかにオレは黒子衆になってから九条財閥秘伝の技術で後天的に人間離れした身体能力を身につけているッスけど、ナオトさんの潜在能力は計り知れないッス」


 な、何者なんだ九条ナオト……。


 そしてそれだけの能力を持ちながら、なんでニートなんかやってたんだ……?


 私はいまだ気を失っているナオトをひと目見た。


「そういえば、村長はナオト様の同級生だったニャ?」


 私が問うと、セツは始め少し嫌な顔をした。


「これはナオトの問題じゃから、本当はあまり話したくはないんじゃがのう……ここまで苦楽をともにしたお主らじゃ、少しぐらい話してやってもよいかのう」


 そしてセツは珍しく真面目な口調で話し始める。


「ロイヤの言うとおり、昔のナオトはなんでもよくできる奴じゃった。身体能力だけでなく、頭も良くてな」


「それがどうしてニートになってしまったのニャ?」


「偶然、仲の良かった友人が影でナオトを悪く言っていたのを聞いてしまっての。ほれ、金や教育のおかげとか言っての」


「もしかしてその友人って、村長のことニャ?」


「アホか。ワシはむしろブチ切れてそやつらに殴りかかってやった側じゃ」


「それでどうなったニャ」


「ボコボコにされてやったぞい」


 返り討ちだったか……。


「じゃがまあ、それまで恵まれた環境でまっすぐ育ってきたナオトには、それが堪えたんじゃろうな……」


「きつい話ッスね」


「元々まっすぐな性格じゃから、本心ではニートをしている自分に負い目もあったじゃろう……おそらくはだいぶ自分も責めたはずじゃ。そうしているうちに、きっと自分を卑下し、本来の能力すら閉じ込めてしまったのじゃろうて」.


 私たちの前で明るく振る舞うナオトにも色々あったんだなぁと、少し憐憫な思いを抱いた。


「じゃが、ここ最近のナオトはとても楽しそうにしておる。きっと、そういう前向きな気持ちの変化が、能力面でも少しずついい方向に現れているのかもしれん……」


「まじッスか……? 取り戻し始めた自信とともに、自ら閉じ込めていた能力が解放され始めたとでも……?」


「ま、それはワシの思い込みかもしれんがの」


 私はそこでまた、ナオトを騙している罪悪感を覚えた。


「でもそれは私たちが嘘の世界を冒険させているからであって、村長自身も以前は言ってたニャ。早い段階で真実を明かしたほうがナオト様の精神的ダメージが少なく済んでいいと」


「オレたちのやってること、間違ってるッスか?」


「わからぬ……たしかに以前はワシもリリアンを敵視していたことがあった……が、最近のナオトを見ている限り、ワシの考えが誤りだったのかと思うこともある」


「まだナオト様のために私に何ができるかなんて、思いついてないけどニャ……」


「意外と何をしようとせんでも、隣で賑やかにしていてやることがナオトのためになっているのかもしれぬ……」


 セツは目を閉じて、今までの冒険を思い出しているようだった。


 そこでいつになく真剣な面持ちで目を開くセツ。


「だが、最初に言ったとおり、このまま一生、この冒険を続けることなどできん。……そろそろ終わりにするときが近づいてきたのではないか?」


 私はそれを拒むことができなかった。


 できなかったというのは私自身、本心ではもっとこのパーティーでバカ騒ぎをしていてもいいかなと思っていたからこそだ。


 けれど、それよりもナオトのためを考えれば、いつまでも彼を騙し続けることはできないという思いのほうが私のなかでは大きくなってきていたのだ。


「セツさんはどうするつもりッスか?」


 ロイヤが尋ねると、セツはゆっくりと口を開く。


「いよいよ研究施設に向かうためのシナリオを練り直すのじゃ」

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