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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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仲間の裏切り


「みんなは来るなっ! 巻き込みたくない!」


 ナオトはそう言うが、裏方事情を考えればそういうわけにもいかない。西側区域の手つかずの舞台裏を見られたら、大臣の謀反を暴くどころかプロジェクト自体が崩壊だ。


「だめニャ! 私じゃ追いつかないニャ!」


 ナオトの足は私よりも速かった。


「リリアンさん、ここはオレに任せるッス!」


「お願いニャ!」


 後発のロイヤが私を追い抜いてナオトを追う。


「来るなロイヤ!」


「そういうわけにはいかないッス!」


 ナオトとロイヤ、一対一の追走劇が始まる。


 こうなれば人並み外れた身体能力を持つロイヤがすぐにナオトを捕らえると思っていた私は目を疑った。


「お、追いつかないッス……!?」


「う、うそ……? ナオト様、そんなに速かったニャ……?」


 ナオトの全力疾走は私たちの予想をはるかに超えて速かった。


 ロイヤでも差が縮まらないような速さなので、私はすぐに彼らの背中を見失ってしまいそうになる。


「こうなったら九条専務! 女神ノアに制止してもらうしかないニャ!」


 私は本部に訴えかける。


「すまないリリアン君、女神ノアはお隠れになった」


「なんでニャ!?」


「つわりが酷いらしくてな……今後、女神ノアは産休も取得する予定だから、当プロジェクトをリタイアしたのだ」


 つわり!? 産休!? なにそれ私たちがイースを冒険している数カ月の間に妊娠したのか!?


「聞いてニャいんですけどっ!?」


「すまない……実は私の子なのだ……」


「はぁ!?」


 私はブチ切れそうになった。あんたら人が必死に冒険してるときに何しとんじゃい!


「実は初めて彼女のにゃふ~ん、きゅぴきゅぴを見たときから、私は心を奪われ……」


「そんなことも聞いてニャい!」


 私は通信をブチ切った。


 この裏切り者どもめっ! ノアの奴もちゃっかり玉の輿に乗りやがって!


 しかしそんなことを考えている間にも、目の前の状況はますます悪くなっていく。


 九条専務とノアはあとで小一時間問い詰めるとして、今はなんとしてでもナオトを止めなければ!


「まずいッス! この先の角を曲がられたら、もうその先は……!」


 その先には思いっきり建築現場が広がっている。脚立やノコギリなど、イースにもあって不自然ではない道具ならまだしも、むき出しのパネル壁や、現実世界の企業名がデカデカと表示された塗料缶などを見られたら終わりだ。


 でも、もう間に合わない。このペースではロイヤはナオトに追いつかない……!


 そうなればプロジェクトはここで終わりだ……!


 嫌だ。私はもっとこのフザけた冒険を彼と一緒に……!


 私がギュッと目をつぶった瞬間、ロイヤがナオトの背に向かってこんな声を掛けていた。


「ナオトさん! 実はオレ、もう証拠を持ってるッス!」


 驚いて足を止め、振り返るナオト。そしてそこへ追いつくロイヤ。


 次の瞬間、ドムッと鈍い音を立ててナオトのどてっ腹にはロイヤの拳が深々と突き刺さっていた。


「なっ……!? ど、どうして……ロイヤ……」


「すみませんが、詳しい事情をナオトさんが知る必要ないんスよ……」


 ロイヤの冷たい表情、重なる二人の影。


 それはもう完全に知りすぎてしまった者が裏切り者によって消される定型シーンだった。


「ナオトさんがこの国の裏側を知ろうとさえしなければよかったのに……」


「く、くそ……」


 崩れ落ちる身体をロイヤに被せながらナオトは倒れ、気を失った。


 その場に訪れたのは静寂のみ。倒れた勇者、裏切りの戦士、そして遅れて駆けつけた仲間の私たち。


 みんな無表情だった。


「ど、どうするのじゃ……? この状況……」


「すみません。ナオトさんをここで止めるには、もう、こうするしか……」


「たしかにさっきの状況では、ああでもしないとナオト様は止まってくれなかったニャ……」


「じゃが、これでは完全にロイヤが裏切り者扱いじゃぞ?」


「私たちのパーティーで唯一の戦闘要因なのにニャ……」


「すみません、オレ……もうみなさんの仲間じゃいられないッスか……?」


「だめニャ。ロイヤがいなければ、私たちだけで研究施設までたどり着くことなんかできないニャ」


「だけどオレ、ナオトさんから見たら完全に裏切り者ッスよ……?」


「困ったのう……まさか、こんなことになろうとは……」


 もしかして王や大臣に余計な設定さえ加えなければナオトの正義感も発揮されず、こうはならなかったのではとも思うが、それを今さら言ったところであとの祭り、私たちは倒れたナオトを囲んで腕を組んだ。


「とにかく、このままナオト様が目を覚ましたら厄介ニャ」


「とりあえず、勇者を城の地下牢に突っ込むのじゃ」


「あ! それならオレが運ぶッスよ」


 私たちは意を決したように頷きあって、ナオトを地下牢に放り込んだ。


 まさか仲間三人に結託されて地下牢に入れられるとは、かわいそうな勇者がいたものである。


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