見た目からして悪い大臣
城の前で馬車から降りると、そこには大臣役の男性が直々に私たちを待っていた。
大臣は馬車から降りた私たちに固い表情のまま一礼する。
「ようこそお越しくださった。吾輩はここで大臣を務めるコーヴァンと申す者。あなた方を歓迎いたしますぞ」
その態度が固く、少し傲岸に感じるところがあるのも、すべては駄作家の書き加えた謀反を企む設定があるからであり、本名、番場浩一さんは普段とても真面目で親切な方だと聞き及んでいた。少し白髪混じりの初老男性である。
「お招きいただきありがとうございます。俺は勇者のナオト。そして一緒にいるのがパーティーメンバーのリリアン、セツ、ロイヤです」
私たちはナオトの紹介で礼をする。
「これはこれは。さすがは勇者パーティーの方々ですな。皆、精悍な顔つきをされておいでだ」
どう見てもポンコツぞろいのパーティーだが、さすがは大臣役だけのことはあって、お世辞もしっかりと平然とこなしていた。
「さあさ、このような場所で立ち話もよろしくないでしょう。王がお待ちですからな。吾輩が案内しますゆえ、ついてきてくだされ」
そしてそのまま私たちは大臣直々に王のところまで案内されることになった。
なんとなく察することがあるとすれば、先ほどまで私たちが騒いでいた馬車内での出来事もリアルタイムで全世界に向けて配信されていたわけで、当然のごとく王城で待機していたスタッフさんたちもそれを見ていたことだろう。
そして、これはあまり下っ端を案内役にすると、またいつもの暴走が始まりかねない、御しきれないと心配された結果の特別措置……そういうことなのだろう。
「ああ……そうそう。その前に吾輩から一つお願いがありましてな」
不意に大臣が立ち止まる。その様子はめっちゃ怖い。
大臣が悪役設定だからとかそういう次元ではなく、それはもう私たちを重力の魔法か何かで押し潰してきそうな雰囲気なのだ。
「先ほどは馬車の中で大いに盛り上がっていたとのことでしたが……ここから先は厳粛な王族の住まう場所。くれぐれも粗相のないようにお願いいたしますぞ?」
私たちは気まずそうにお互いの顔を見合った。
「特に吾輩から離れて城内を見て回ろうだなどとは……ゆめゆめ、しかなおぼしそと申し上げておきましょう」
普通なら馬車内での出来事を御者が大臣に伝える時間などなかったのに、その様子を大臣が知っているというと不自然な場面であったはずだ。
それなのに大臣から発せられる静かな怒りのような重圧は、その不自然ささえも大臣の強力な力を見せつけてきたシーンに置き換えてしまっていた。
私はまるで学校の先生に叱られているような思いを抱いていた。
「わ、わかったぜ……」
ナオトも大臣の迫力に押されて素直にうなずいた。
「城内には一般人の立ち入りを禁止している区域も多くありますからな……特に西側区域などは重要な機密がたくさんありましてな……万が一にも立ち入ったならば、たとえ勇者どのであろうとも首が飛ぶやもしれませんなぁ……」
たしかに西側区域はモロに未完成だ。重要な機密があるので立ち入り禁止も嘘にはならないが、大臣の迫力のある演技も加えてナオトに警告してくれるとは大臣コーヴァンこと番場さんもなかなかやり手のスタッフさんのようだった。
「な、なぁなぁセツ。あの大臣、ちょっと怖くないか?」
大臣のあとを歩きながら、ナオトは小声でセツに話しかける。
「おおかた権力を握って気が大きくなっておるのじゃよ」
駄作家のあんたがそんな設定したからだよと思いつつ、私は黙ってついていく。
「まぁ一国の大臣なわけだし、威厳も必要だってことは俺にも理解できるんだけどな……」
「ほほう、さすがは勇者じゃ。正直、王城で勇者の品格を損ねやしないかと心配していたが、どうやらワシの杞憂じゃったのう」
「当たり前だぜ。俺だって場の空気ぐらい読めるんだぜ?」
ナオトにも余計なことをする気配がないし、一番心配だったトラブルメイカーのセツも意外とナオトを制する側に回っている。
この調子なら間違っても二人が暴走するような事態にはならないだろう。
そんなふうに私は安心して歩いていた。










