これは科学ミステリなのか(解答編)
どうしてこんなことになったのか。
その答え合わせをしてくれるとばかりに九条専務の声がインカムから届く。
「まったく、リリアン君はこんな簡単な科学ミステリーすら解けんというのかね」
ミステリーじゃねーし。私たちが世界中に配信している動画はどっちかというとコメディだし……。
「いいかねリリアン君。ナオトが水晶玉に手をかざしているとき、カウンターの上にはほかに何があった?」
「アルミームソードのことニャ?」
「そう。そしてキミが仕掛けた高周波電磁誘導式カウンターとアルミニウムの特性に思い当たることはないか?」
んな……!?
私は絶句してしまいそうになった。それは盲点すぎる障害物だったのだ。
「アルミニウムは熱伝導、電気伝導性に優れているニャ……だから本来、水晶玉に流れるはずだったエネルギーはアルミームソードに吸われていたニャ……?」
「そしてナオトが剣を納めてリリアン君の順番になったときには水晶玉への加熱が始まっていた……というわけだな」
「そ、そんニャ……」
「犯人、いや犯剣は、アルミームソードだったというわけだ」
くっそ! なにが伝説の剣だ! サルキメラすら斬れないくせに私の計画をぶった斬りやがって!
「ふっふっふ……碑文によれば『アルミームソードの真価は刃に在らず』、だったか? だからと言ってフライパンにしても、細くてベーコンくらいしか焼けんぞ?」
くっそ! くっそ! バカにしやがって!
「ナオトがアルミームソードを温かいと言った時点で異変に気づき、ミオラにスイッチを切らせるべきだったな」
ぐ! そんなの私には無理だよ……!
「まあ、この結果はキミの無能さによるものだ……しかし、結果的に言えばだな。この結果はリアルタイムで動画を見ている視聴者にかなりウケている。失態は失態でも、今回は大目に見てやらんこともない」
「ぐっ……それはどうもありがとうですニャ……」
屈辱……!
「どれ。流れてくるコメントでも読み上げてやろうか?」
「そ、それは遠慮しときますニャ……」
どうせ世界中が私たちをバカにして笑ってるに決まってる。
「ともかくSSランクおめでとう、盗めないシーフのリリアン君? 勇者への賞賛となるべき功績はしっかり盗んだようだがね」
フガーッ!
私は憤慨して叫びたいのを必死でこらえていた。
険しくなっていた私の表情を気にしつつも、なんとか場の雰囲気を取り直そうと、ミオラがパンと手を鳴らした。
「それにしても、さすがは勇者パーティーですね! これなら結果的にパーティー自体がSランクとして登録できますよ!」
「ほ、ほう! いきなりSランクパーティーとな? そんなのもう伝説じゃぞ!」
「わ、わー。Aランクパーティーを追放された脳筋戦士のオレ、Sランクパーティーに拾われるッスね~!」
ソワソワしながらも、このままの流れはまずいとばかりに、セツやロイヤも雰囲気を盛り上げようと明るく振る舞っていた。
しかしその視線が向かうナオトは相変わらず気落ちしている様子だった。
「笑えよ……ロイヤはAランク、セツはSランク。リリアンなんかSSランクだってのに、俺だけがFランクなんだぜ……?」
なんかもう、一度パーティーを解散してコンティニューしたほうがいいのだろうか……?
「Fランクだからと勇者パーティーを追放された勇者だが辺境で再びニートを始めるとか、そんなラノベもありそうなんだぜ……?」
「ニャ~! そんなこと言っちゃダメニャ~!」
そんなふうにカウンター前で騒いでいると。
「なんだなんだぁ? こいつはいったい、なんの騒ぎだ?」
二階から短髪で筋肉ムキムキの男が顔を出した。
男を見上げたミオラが驚いた顔をする。
「あ。ギルドマスター!」
現れた男の名前は久世清春、イース名はハルク。趣味はボディビルダーらしくすごく大きな胸板の持ち主で、身につけた衣服もそれを見せつけるようにパッツンパッツンに伸びている。
ハルクは面倒くさそうに頭をポリポリとかきながら階段を下りてきて、私たちの前までやってきた。










