Sランク登録への仕込み(2)
「はい。水晶玉で読み取ったデータはのちほどお渡しするギルドカードに記録されますので、あちらの端末にセットしていただければご自身のステータスを確認できますよ」
ミオラが手で示す先にはなにやら魔術めいた装飾の鏡と台座が設置されている。
「へえ~。魔法のギルドカードにステータスを表示する鏡かぁ~……」
本当はただのICチップ入りカードと鏡型のディスプレイだが。
「イースでは、普通の人はこうやってステータスを確認するんだな……ま、俺はステータスオープンでいつでも確認ができるけど」
ドヤっとしているナオトにミオラはタジタジだ。
「はは……ナオトさんは先ほどからずいぶん勇者だと強調されてますね……もしかして本当に勇者様だったり……?」
まさかぁ? と疑うような視線を向けてから驚くための布石が順調に敷かれる。
「本当だぜ? 俺こそがアルミームソードに選ばれた勇者さ」
「嫌ですよ~? 私だって一度くらいアルミームソードを見に行ったことくらいあるんですからね? 見ればそれが本物かどうかくらいわかるんですから」
「本物だぜ。ほら」
そう言って、ナオトはカウンターの上にアルミームソードを抜き身で置いてみせた。
「え……?」
ミオラは固まった。
「これ……え……? 本物じゃないですか……?」
「だから最初から言ってるんだぜ。俺が勇者だって」
ミオラはしばらく目をパチクリさせたあと、立ちくらみでもしたかのように体勢を崩した。
「私、今ものすごく叫びたいのを必死でガマンしています」
クールな美女がプルプルと震えている新しい感覚の驚き方、芸が細かいと言わざるを得ない。
「うん。見ればわかるんだぜ」
「むしろ、全世界に向けてナオトさんこそ勇者であることを宣言しちゃってもいいですか?」
「やめるんだぜ。目立ちたくはない」
顔がニヤけてるくせに。本当は目立ちたいくせに。
と、まあこんな感じでここでもナオトを気持ちよくさせる小芝居を挟みつつ、いよいよ次は本題の水晶玉だ。
「そうでした。あまりの衝撃につい取り乱してしまいましたが、今は能力測定の途中でしたね」
「そうだな。俺が勇者だとわかってもらえたことだし、早いとこ能力を測ってしまおうぜ」
「えぇ。わかりました。……それではナオトさんからこの水晶玉の上に手をかざしてもらえますか?」
「わかったぜ。……だが、その前に」
ナオトはひとつ咳払いをしてから続ける。
「うしろのポスターを見たところ、水晶玉の反応によっては初期登録されるランクが違ってくるんだぜ?」
「そうですね。でも、滅多なことでは目立つ反応は出ないんですよ? たとえ勇者様でもそう簡単には。たぶん、なんにも起こりません」
「わずかにでも光ればBランク、強く輝けばAランクとあるけど、普通はどんなもんなんだぜ?」
「良くてもDランク。普通はEランクかFランクですね。Bランクの反応でも十年に一人ぐらいですから、いきなりAになる人なんか私は見たことがありません」
「へぇ~。じゃあさ……」
ナオトの顔はまた少し得意げになった。
「もし、もしもだよ? 水晶玉が力に耐え切れずに割れてしまう……なんてことになったら?」
ナオトのやつ勘がいいな。
今まさに私たちがあなたに仕掛けようとしてるのが、その水晶玉が割れるテンプレパターンだよ。
「はは。ありえません、ありえませんよそんなこと」
ミオラは軽快に笑う。しかしその頬には冷や汗が浮かんでいる。仕組みを見抜かれたとでも思っているのだろうか。ここで軽快な笑いをしておくのも割れたときの盛り上がりをいっそう大きくするための前振りだ。
「まあ、そう簡単に割れたりはしないんだろうけどさ、聞いた話だよ? 聞いた話だと、チート能力とか持ってる人が手をかざすと力を測り切れずにパリンとかあるらしいんだぜ……?」
「お、面白い冗談ですねぇ……いったいどこの世界の話なんでしょうねぇ~……?」
「でも、万が一、万が一ってこともあるだろ?」
「も、もし本当にそんなことになったら、AランクどころかSランク。いや、SSランクは確実でしょうね……?」
さっきセツが勝手にSランクを取っちゃったから、新しくSSランクが追加されちゃったよ。
「マジか。じゃあ俺はそのSSランクを狙っていくんだぜ!」
さあ! 盛り上がってまいりましたよ。
絶対に水晶玉は割れないと思っている受付嬢VSなぜか自信たっぷりのナオト。
私の役目はここでかっこよく水晶玉を割らせてあげて、彼を最初からSSランクにしてあげることだ。










