Sランク登録への仕込み(1)
私やナオト、セツから受付票を受け取ったミオラはニコニコしながら、ざっくりとそれに目を通していく。
「エンチャンター……くすっ。カッコ勇者のナオトさんに、シーフのリリアンさん。賢者ナイトのセツさんですね……? あら? 賢者ナイトのセツさん……どこかで聞いたような名前ですが……?」
ミオラは首を傾ける。
あれ? こんなところで引っかかる予定があったかな……?
登録はわりとスムーズに進むはずだったのに、などと思っていると。
「ま、まさか! 元Sランク冒険者、賢者ナイトのセッカさんですか!?」
ミオラが飛び上がりながら驚き、大声を上げた。
するとギルド内の視線がたちまち私たちに集まる。
「おい、ウソだろ、賢者ナイトのセッカさんが来ているのかよ」
「あの伝説の賢者ナイト様が!?」
「剣ですら歯が立たないドラゴンを、杖の殴打で内部から破裂させたって話だぜ!?」
「うわー! 私、絵本で見たセッカさんに憧れて冒険者になったのよ!」
次々と上がる賛辞の声。
くそうセツの奴。私に黙って、また勝手な演出を仕込んでやがったな……。
「皆の者、やめよやめよ。ワシはしがない老人のセツじゃよ。人違いというものじゃ」
セツはまんざらでもない様子で、皆の声を抑えるように振る舞っていた。
「はぁ……Sランクなのに謙虚なのって、どんだけ聖人……」
「ねえねえ。私たち、なんとかして弟子入りできないかな?」
「無理だよ~。私たちなんか相手にしてもらえないよ~」
はい、もうお腹いっぱいです。
「どうもすみません……私がつい大きな声を出しちゃって。セツさんの個人情報なのに……」
ミオラがペコペコと頭を下げる。
「いいんじゃよ。あまり気にせんでおくれ」
セツはミオラにも優しく微笑む。
「はぁ……私、感激しました。伝説のとおり素敵な方でした……」
ミオラはうっとりと惚れ込むように両手を合わせていた。
こんな駄作家のくだらない演出にまで付き合ってくれるとは、ミオラさんは本当に真面目な人なのだろう。
「ですが、その……いくら再登録とはいえ、伝説の賢者ナイト様を初級のFランクに登録というわけには……」
「ふむ。ワシもギルドを困らせるつもりはないからの……登録は好きにしてくれて構わんよ」
「ありがとうございます。それでは賢者ナイトのセッカさん改めセツさんはSランクで再登録いたしますね……!」
ちくしょう。これがセツの狙いだったのか……一人だけ抜け駆けしてSランクになりやがって……本来ならナオトだけがSランクになって、勇者すげぇ! ってなるところだったのに、またしても邪魔しくさってからに……。
どうせ親友同士でお揃いとか言いたかっただけなんだろう。
「すごいぜセツ! 最初からSランクかよ!」
ナオトもまるで自分のことのように嬉しそうにしていた。
「冒険者と言っても単に力だけではなく、頭脳、人脈、経験など、様々な能力を総合的に見て判断すべきじゃからの。ワシの昔の経験がどれほど役に立つかはわからんが、その名に恥じぬよう頑張るつもりじゃよ……戦闘以外でのう」
やっぱり戦う気はないんかーい!
ったく、この得意顔が憎たらしいったらない。
「では、続いてナオトさんとリリアンさんの初登録ですね」
セツによるくだらない前振りはともかく、ここからはまた規定路線に戻ったと見てもよいだろう。
私は気を取り直して、カウンターの前に出た。
「お二人は完全に新規登録ですから、基本的にはFランクからのスタートになります」
だが、そんな基本をすっ飛ばしてナオトをSランクに登録してしまうとっておきの作戦とは……?
「ですが、その前にこちらの水晶玉をご覧ください」
そーう! これはもう定番中の定番だ!
ミオラがカウンターの下から取り出したのは、タネも仕掛けもありまくりの水晶玉!
「こちらはなんと、その人の能力値を測るための魔道具となります。この結果によっては飛び級もありますからね。お二人とも、頑張ってくださいね」
そう言ってミオラは微笑む。
しかしその裏で、私とミオラは鋭い視線を交わす。
準備は万全だということだ。
そう、これこそがナオトを最初からSランクに登録する切り札。
世界中の動画視聴者よ、見るがいい! ミオラの背後にデカデカと貼り出されたポスターを!
『水晶玉が光ったらBランク、強く輝いたらAランク』と、まずはこれを読んでから測定しろとばかりに目のつくようになっているよ!
「へえ~。これに魔力を込めればいいんだぜ?」
いったいどうやってありもしない魔力とやらを流すつもりなのか知らないが、ナオトは乗り気だった。










