冒険者登録をしよう!
ギルドにたどり着いた私たちは、ナオトを先頭にまっすぐカウンターに向かった。
そこは木造二階建て、想像どおりのギルドっぽい雰囲気をしている建物だった。
「冒険者登録とパーティ申請をしたいんだが、受付はここでよかったんだぜ?」
ナオトが受付嬢に気さくに話しかける。
「もちろんです。ようこそ、冒険者ギルドへ。冒険者登録は初めての方ですか?」
受付嬢は明るい声で答える。違世界らしいギルドの制服を着た、艶のある黒髪ロングヘアで高身長の20代女性だ。モデルのような美人である。
「え……は、初めてだぜ」
ナオトは彼女の耳を見ながら、驚いたように口をどもらせた。
そう、彼女は長い耳が特徴のエルフ……のコスプレをしていたのだ。
「あら? もしかしてエルフは初めてですか?」
「お、おぅ。だけど平気だぜ。俺は人種とか気にしない人間だからな」
「ふふっ。ありがとうございます」
受付嬢は穏やかに微笑んで言った。
同じ女の私でさえ見とれてしまうほどの美人である。
本名は嵐山澪さんで、たしかイース名は……。
「申し遅れました。私、当ギルドの受付嬢、ミオラと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
ミオラは丁寧に頭を下げた。
「それで本日のご用件ですが、皆様もご一緒に冒険者登録をなさる方々でしょうか?」
ミオラの視線が私たちにも向けられる。
「オレはもう登録済みッス!」
「あ、はい。ロイヤさんはすでに登録済みですね……現在はソロですが実力はAランク。新しいパーティーが見つかってよかったですね」
「うぃッス! このパーティーで上を目指し、オレを追放した奴らにザマァしてやるッス!」
「が、頑張ってくださいね……?」
ミオラはアドリブが苦手なタイプなのか苦笑いを浮かべていた。
「ワシも昔は冒険者じゃったが、おそらく今は再登録が必要じゃろうのう」
「私は村娘で登録するニャ!」
「俺はもちろん勇者だぜ!」
ミオラは少し困ったようにはにかんだ。
「えっと……ほかの方はともかく、村娘や勇者というのはちょっと……」
「えー? 村娘はないニャ~?」
私は不満げに言う。
「えぇ……せめて冒険者らしい職業にしていただかないと冒険者登録はできません」
「でも私は戦えないニャ」
「形だけでも大丈夫ですよ。何か使える武器でもあれば、それを基に決めてはいかがですか?」
「武器……護身用のダガーならあるニャ」
「ダガーですか……それではシーフなどはいかがでしょうか?」
「じゃあ、なんでもいいからそれにするニャ。……でもシーフって何をする人ニャ?」
「シーフは主に斥候やトラップの解除、それから物を盗んだりするのが得意ですね」
「私、物を盗むのは嫌ニャ」
「「盗めないシーフ」」
「ニャ!?」
背後からナオトたちの悪口が聞こえた気もしたが、私が振り返ったときにはみんなそっぽを向いていた。
「とにかく登録上の問題なら私はシーフにするニャ!」
「かしこまりました。では続いてそちらの……」
ミオラの視線がナオトに向く。
「あ、俺か? 俺なら別に登録上の問題にはこだわらないぜ? なんならエンチャンターで登録するよ」
「ご理解ありがとうございます。では再登録を含めた三名はこちらの受付票をご記入ください」
私たちはミオラから受け取った受付票に名前や年齢、職業などを書き込んでいく。
ふと、書いている途中でナオトが私の書いている紙を覗き込んでいることに気づく。
「リリアン。それ日本語だよな?」
「日本語ニャ?」
「ここはイースだよな?」
「イースだけど、日本語ニャ?」
なにを当たり前のことを、とばかりに首を傾げて見せる。
このやり取りはいつか当然あるだろうと想定されていた問答だ。
「今さら気づいたんだけど、街に溢れてる文字も日本語じゃないか」
「それがどうかしたニャ?」
「あれぇ? おかしくね?」
「ナオト様、頭がおかしくなったのニャ?」
「お、おぅ……そ、そうみたい、だぜ……? そうだよな? なに当たり前のこと言ってんだろうな、俺……?」
ナオトは首を傾げ、眉をひそめながらも自身を納得させるための思考に入ったようだった。
「もしかしてナオト様、イースに来たばかりで日本語が苦手なのかニャ?」
「いや? 実はこう見えて俺、日本語は得意なんだぜ?」
「さっすがナオト様ニャ!」
私たちはスラスラと受付票を記入した。










