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27「再びの出発」

 翌日の早朝に私たちはタンプルを出発したしました。昨夜の冒険のおかげで、道行きがちょっと心配です。

 シルヴにつられて私も大きなあくびをしてしまいました。冒険者とはなんと自由なのでしょうか。

 でもラシェルに睨まれてしまいました。令嬢に戻った時にこれをやってしまわないか、こちらもちょっと心配ですね。


 馬車は街を出て朝靄の間道を進みます。やはここは話していた方がよいでしょう。

「ねえ、ジョルジュ。これからの予定はどうなの?」

「この道の途中のキャンプ地で一泊して、翌日には街道に合流する。それからアングレットまで四日っとこかなあ……」

「実は昨日、ちょっとしたトラブルに巻き込まれたのよ。追っ手が来るかもしれないわ」

 暴漢たちとのトラブルより、私はあの屋敷への侵入の方が心配でした。それなりの魔力を持つ者なら、侵入者の痕跡に気が付きます。街にやって来た強力な冒険者二人組と結びつければ――。

「ならキャンプ地はやり過ごして先に進もうか。途中で森に入って野営しよう。寝込みを襲われる心配もない」

「悪いわね」

「いいや。野宿は冒険者の基本さ。シルヴは荷台に移って後方確認だ。単独では動かないよに」

「――として下さい」

「了解です。リーダー」

 シルヴはすかさず後ろに移動いたします。またラシェルに睨まれてしまいました。

「何があったのですか?」

「悪いひとたちにからまれて、シルヴが助けてくれたのよ」

「それは仕方ないですね」

 ちょっと説明を簡略化させて頂きました。


 幸い追跡者は現われません。先客のいないキャンプ地で馬に水を飲ませて私たちも水筒に補給します。

 シルヴがやって来て小声で言います。

「あいつら追って来るかな?」

「さあ? あの街は熱心に魔石を集めてオリハルコンの魔導武器でも作っているのかしら?」

「そんなところだろう。あの探知魔導具はやっかいだな。こっちの動きが筒抜けだ」

「大丈夫よ。さっき全部潰してやったわ」

「さすが……」

 シルヴは呆れたように私を見ます。私の魔力で広範囲に過負荷をかけてやりました。魔導具に照準を合せましたから、相手の【探知】には引っ掛かりません。


 私たちはすぐに出発しました。

 日が落ち始め、ジョルジュは馬車を停止させます。

「この辺りがいいかな。まあ、夜ならそうそう気づかれん」

 そして森の中に馬車を進めます。これならば道からは見えません。

 荷物を下ろして女子たちは荷台に、男性はテントを張りました。【隠密】のスキルを全体に張り、警戒の【探知】も仕掛けます。

 昨夜は寝不足だったので、こんな状況でも熟睡してしまう私でした。


 翌日はまだ暗いうちに出発、昼前には街道に合流いたしました。

「ここまで来れば大丈夫。まあ、のんびり行こうか」

 少しして、他の輸送隊列(キャラバン)の後方に追いつき、速度を合せて進みます。


  ◆


 それからはトラブルもなく平和な旅が続きました。途中の停留地に二泊して、いよいよ第一王都アングレットの街壁が見えてきます。


「シルヴ。追加報酬を渡すから、護衛を続けてくれない?」

「報酬はいらないさ。興味で引き受けさせてもらうよ」

 操者席のシルヴが、首を捻って応えました。馬車は街壁門を前にして道を逸れます。

「貴族門は通れる?」

「そっちの方が助かるよ」

 騎士が立つ門の前で、私は胸に下げていたオリハルコンの小さなプレートを出します。シルヴもそうしました。ジョルジュたち二人は許可証を提示します。

「明日の朝に、バシュラール家の屋敷に来てくれる?」

「了解した」

「ジョルジュとラシェルはせっかくだし街の観光をしてね」

「お嬢様!」

「アジャクシオでの噂を集めて欲しいのよ。ここの人たちにどう思われているか」

「いいじゃないか。シルヴ様の護衛ならば安心だよ」

 ラシェルはメイド義務感から私への同行を希望しますが、私は二人にこの街を楽しんで欲しいのです。

「分かりました」

 広い道にしゃれたお店が並びます。貴族用の商店街を抜けると、大きな屋敷が並ぶ区画となりました。

「ディアーヌ、ジョルジュさん、ラシェルさん。楽しい旅でした。また後で」

 そう言ってシルヴは飛び降りました。振り返ると手を振ってから、自分屋敷へと向かいます。ここより上位の爵位の地域へです。

「驚いた。本当に貴族だったのね」

「ああ。将来有望な騎士様だ。あいつに任せておけば安心さ」

 ここで冒険者パーティーは一時解散となりました。

 これからは貴族の戦いが始まります。


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