23「パーティー道中」
翌朝、宿に来たシルヴを載せ、私たちはメイジューを出発したしました。目的地は山岳部の鉱山街タンプルです。
「せっかくだ。小物も探して狩りまくろうぜ」
「報酬を払うのだし、シルヴに働いてもらいましょうか」
「そりゃいい……」
「任せて下さいよ。ジョルジュさん」
私はキッとシルヴを睨みました。勘違いの新加入冒険者を教育せねばなりません。
「いやあ、リーダーの指示に従って働きますよ……。任せて下さい」
「ジョルジュ。今度の新人はどうなの? 役立たずなら追放していいかしら?」
「リーダーにお任せしますよ」
「まいったなあ……」
「あはははっ!」
私たちの会話にラシェルは声をあげて笑いました。元は冒険者の現在メイドさんです。
私の【探査】に反応です。少ししてからシルヴが操者席から飛び降りました。
「ちょっと行ってきます」
「私も行くわっ!」
扉を開けて馬車から飛び出します。
「ちょっと!」
「まあ、いいじゃないか――」
身を乗り出し止めようとするラシェルを、ジョルジュが制します。
「――シルヴ。リーダーを守れ。俺たちの要だ」
「了解です。行ってきます」
「もうっ!」
「大丈夫さ」
ジョルジュとラシェルを残して、私とシルヴは森の中に入りました。
「とりあえずは戦ってみる? アシストするけど」
「うん、私だって戦えるわ。まかせてよ」
「はいはい……」
シルヴは私を守るように前を歩きます。露払いは新人の仕事ですから。
「リーダー。敵が現われました。数匹です」
草地の中や木々の上に魔力の反応を感じます。可愛らしい姿が見え隠れいたしました。よりによってリスです。戦闘意欲が今一つ湧きませんが、私は剣を抜き前に出ました。
小物の魔獣、漆黒のリス。集団で子供を襲う汚い魔獣です。
草地には三、木々を移動している頭上は四ですか。先手は上ですね。態勢を低くして右手の剣を左に引きます。
さあ、私の思いどおりに動きなさいな。下等な獣さんたち……。
剣を振り上げ飛んだ魔力が、四匹の獲物を仕留めます。返した剣で突っ込んで来る三匹もなぎ払いました。
「たいしたものだ。これで令嬢様なんてなあ」
「女子だって戦えますよ」
「認める」
二人でバラバラなになった漆黒のリスから魔石を集めます。魔獣の核であり、魔導具に利用できる資源でもあります。
途中水場で馬を休ませつつ昼食。午後も平和な移動が続きます。あまりに退屈したジョルジュが、シルヴに手綱を任せて野鳥を三羽仕留めました。
周囲が暗くなり馬車は街道沿いのキャンプ地に到着いたしました。ここに一泊してタンプル到着は明日となります。
「俺は念のため周囲の警戒をして来ますよ」
シルヴは私に言ってからジョルジュを見ます。
「私も行くから。それなら許可します」
「ああ、そうだな。冒険者の最低単位はソロではなくペア以上だ。頼むよ、リーダー」
二人で間道を戻って森に入りました。ここから時計回りにキャンプ地の周囲を警戒するのです。シルヴを先頭に草藪の薄い場所を進みました。
「シルヴは何で、ソロでやっていたの?」
せっかくだし色々と詮索してみましょうか。この人は味方になれる人ですから。
「まあ、深い事情はないよ。立場上あまり詮索されたくなかったしね。短期間のパーティーは相手にも悪いしさ。それに俺は魔法もけっこう使えるから。子供の頃は魔導士になればって言われてたし、一人でも何とかなるんだ」
それで今は剣技で強いって言われている? 凄い才能です。
「魔導士は嫌いなの?」
「別に嫌いじゃないさ。だけど騎士の方が断然カッコいいだろ? 男の憧れ、夢さ」
「そ、そう……」
「そうさっ!」
それじゃあ託児院のちびっ子たちと同じではないですか。もう大人でしょうに。それに魔導士は知的でイケメンで女子の人気はけっこう高いのですよ。まあ、印象ですけど。
騎士団なんて、すぐ強面になって棒きれを振り回すだけの筋肉の塊集団ですよ。まあ、偏見ですけど。
「シルヴにお似合いですね」
「だろ~~」
といいつつこちらを振り返ります。筋肉で反応しましたね。
「んー……。変な感じだよなあ。分かる?」
護衛が異変を感じました。私もこの森には違和感があります。
「自然魔力が乱れているわねえ。たぶん魔導具が影響しているのよ」
「こんな所に?」
「もうちょっと先ね」
「確認しよう。誘導してくれ」
「うん。任せて」
それは木の枝の高い位置に吊されていました。皿のような金属の板に何本も突起が付いています。
「あれは何だ?」
「魔力の探知魔導具ね。騎士団で使っているのとはずいぶん違うけど」
「森を警戒しているのか……」
「いえ。間道を指向しているわ。それに仕掛けるなら山岳部のもっと奥よ」
「チッ! 間道を警戒しているんだな。潰しちまおうか」
外部からの来訪者をチェックするための仕掛けなのでしょう。つまりそのような街なのです。
「いえ。かえって警戒されるしこのままにしておきましょう」
「そうだな。しかしよく気が付いたね」
「子供の頃は、教会で修練すれば聖女にだってなれるって言われていたわ」
「それは凄いなあ」
実は修行は必要ありませんでした。私は子供の頃からアスモデウスさんに、もう聖女だと言われていたのですから。
夕食は野鳥の串焼きに乾燥野菜と肉のスープ、干した果物とビスケットを頂きます。探知魔導具の件はシルヴも私も話しませんでした。これは貴族社会の問題なのです。




