森の縫い目ダンジョン攻略25-30 冒険の再開
数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。
この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。
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なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。
町の興奮が冷めない中、ダンジョン攻略を再開しようとしていた。
しかし、レンを連れて冒険は、まだ不安があった。
一緒に冒険に連れて行ったとしてもいつ裏切られるか分からない。あんな事件があった後だ信用できない。
マキとユキには、明確な目的がある。
ポーターを復興、そして、そこを壊滅に追いやったカーズウルフを討つという、困難な目標だ。
今ここで、立ち止まってしまっては、目標を見失うわけにもいかない。
進まなければ…
ダンジョンもあと少しで目標の30階に到達できる。
目標が目前に迫ったいま、みんなで協議を重ねた。
その末に出した結論は、レンを兄に預け、マキ、ユキとエメダの3人で冒険を再開することにした。
3人で行くことに対しては、兄に猛反対されたが、マキは強い決心を伝え兄を納得させた。
ただの遊びで言っているわけではない。ポーターを取り返すこと、両親の無念を晴らすことを語り、その熱意に負けた兄は、渋々うなずいたのだ。
兄はキワザスに留まることにし、マキ達がダンジョンから戻ると武器の手入れ、補修などサポートに徹してくれる約束をした。
レンはというと特に暴れたり、逃げたりする様子もなく、救われて反省したのか兄に従い穏やかに過ごしていた。
鍛冶師の兄と錬金術師のレン。
2人は徐々に話す事も増えていき得意分野の知識や経験を共有し、技術者として高めあっていった。武具の作成にそして、錬金術での強化、いい相棒になれば可能性は無限大に広がりマキをサポートすることが可能となるはずだ。
再開する頃には、町の様子も少し落ち着きを取り戻しつつあった。
マキ達は、功労者でも何でもないので自由に行動が可能であった。
余談ではあるが、あのナイトは町を救った功績により、領主から正式に領主配下騎士団の近衛騎士団長を命じられ、キワザスに滞在を命じされたという噂も流れていた。
今まで自由奔放に冒険をしていた彼が、キワザスに腰を据えることになるとは、誰も予想していなかった。
領主の命により、当面は町を離れることはできないが、領主お抱え騎士団へ教育もある程度完了すれば解放されるに違いない。と信じたい。
こうしてマキ、ユキ、エメダの3人は、再びダンジョンへ赴く。
1週間ぶりの冒険だ。
行き先は、25階になる。
仲間も減りこれまで通りとはいかずに苦戦も覚悟していたが、意外にもそうはならなかった。
スタンピートの時に大量の魔物を撃破した影響か、階層内の魔物も少なく、勢いもないので、苦労はあまりなかった。
容易にさせていた要因はもう1つあった。
スタンピートの時の土の塔での活躍で、クウィは、「時空間魔法」のひとつである亜空間倉庫を覚えていた。
これまで、荷物管理に悩まされていたが無くなったのだ。
持ち帰りたい素材は多くあったが、持てる限界がある。
小さなマジックバックと男性陣が荷物を持ち、お金になりそうな素材のみに限定したり、魔石のみを回収したりと持ち物には苦労していたが、クウィのレベルアップのおかげでその辺りも改善した。
むしろ、3人になったことで機動力も連携能力もあがり戦いがスムーズに行えるようになっていた。
25階,26階は深い森林地形でそこそこ敵も強かったが、これまでの経験も生きスムーズに歩みを進めることができた。
30階まで残り3階層となった。30階は当たり前だがボス階層だ。
27階層は、大きな山がある森林地帯だった。
今まで森林が広がって見通しが悪かったが、27階に上がってくるやいなや山が見渡せるような平原に出たのだ。ダンジョンの構造は謎が多すぎる。
あの山の山頂がきっと28階へ続く道があるとわかるぐらいわかりやすくなっていた。
3人は、疑うことも無く山頂を目指すことにした。
山に近づくにしたがって徐々に敵も強くなる。
中腹に着くころに、岩のオークに遭遇した。
1匹だけと少なく、少し油断していた部分もあったが、かなり苦戦をしていた。
「ガキーン」
エメダの攻撃は、ヒットしてもまずダメージが無いようだ。
金属音のような音が虚しく響き渡る。
岩のオークだけのこともあり、皮膚が本当に岩より硬い。
単なる岩のオークではないのかもしれない上位種か、進化直前の強者のようだ。
今までそこまでダメージがでないということはなかったのに、突然この魔物にはエメダの攻撃が通じなかった。
「あの岩オーク少し変です。」
エメダは、攻撃を与えた感想を含めみんなに情報連携をする。
「ダメージ通らないね!」
マキもユキも見ていたので、難しい顔をする。
今までエメダがしんがりを務めていてダメージが通らないということはなかった。
常に身体強化も使い攻撃力が上がっているにもかかわらずだ。
「もう少し、様子を見て見ましょう。」
マキは、ファイヤーボールを一発お見舞いしてやる。
「ドゴーン」
岩オークに命中するが、中腹に爆発音が響き渡る。ダメージも少ないようだった。
その音を聞きつけてか、魔物が集まってくる。
2体の岩オークに3体のグレイトオークが集まってきた。
1体の岩オークに苦戦しているのにさらに増えてしまった。
攻撃が激化する。
幸いにも、岩オークは体に岩が付いているためか動きは遅い。
攻撃を避けるのは容易であったが、グレイトオーク3体は厄介だった。
3人は、なるべくグレイトオークを優先し倒して行った。
しばらく戦うとグレイトオークは殲滅することができた。
残りの魔物は、岩オーク3体のみだ。
ただ、ダメージが通る攻撃方法が見つからない。
剣で切っても切れない。下手に魔法を放つと岩にぶつかった衝撃音で魔物が集まってくる可能性もあるので、思うように魔法を打ちことができないでいた。
そんな中、岩オークの接近を許してしまい、攻撃を防ぐためにマキは、自分の杖で岩オークの攻撃を杖で受ける。
「バキーン」
そもそも固い岩オークの皮膚に杖が当たり、ぽっきり折れてしまった。
「(泣き)」
マキは、唖然。そして、泣いていた。
これまで、愛用していた杖。不死の魔石が埋め込まれた杖。魔石は割れてはいない。
兄にダンジョンに入る時に作ってもらった大切なものだった。
手入れはしていたもののダンジョン攻略で疲労していたのだろう。ぽっきりいってしまったのだ。
「マキちゃん。大丈夫?」
エメダは、武器が折れたことに心配する。
逆にユキは、少し楽しそう。
「マキは、杖がなくても大丈夫。あれ、飾りだから。」
「ユキちゃんひどい。大事な杖なのに」
ちゃかされてちょっとお怒りモードのマキだった。
「魔石で武器は、作れないのかな。錬金術師のように、鍛冶師のように…」
マキは、教会で言われたことや、レンから教えて貰ったことを思い出したのか、つぶやく。
教会で魔石師を授かったとき、神父様に「錬金術師の下位互換」と言われたことも思い出していた。
「下位であれ互換があるのであれば、武器に付与ができるはずでは?」
町に戻ったら、レンにでも聞いてみることにした。
折れた杖を大事に拾いあげ、クウィに引き渡し倉庫へ大切に保管してもらった。
杖は折れてしまったが、ユキの言っていた通り、杖はあくまで杖。
魔石師にとっては飾りに過ぎない。
杖は魔力を増幅するために使うのが主な目的だ。マキにとっては増幅は魔石で魔力を取れば力技で増幅が可能だった。
親友のユキであったためそれを知っていたのだ。
魔術師にとって、“杖”はただの道具ではない。
それは、魔力の浪費を抑える節約装置であり、
時に、魔石以上に繊細な制御を可能にする。
もちろん、魔石を使えば瞬時に大量の魔力を得られる。
一般的な魔石なら、一個でおよそ1,000の魔力。
上位種の魔物から得られた魔石なら、5,000の魔力を超えることもある。
だが問題は、その一括供給の粗さにある。
魔石はあくまで魔力の“塊”だ。
1,000の魔力を持つ石から、100ずつ取り出して細かく使うことが難しい。
その操作は時間が経つごとに難しくなり、制御を誤れば魔力は空中へと散逸する。
たとえば、弱い魔物を一撃で仕留めた場合、
放出された魔力をすべて使いきれず、余剰分は虚空へと消え、戻らない。
この点において、杖があれば非常に優秀だ。
杖そのものに付属する魔石が、魔力を一時的に蓄積するバッファとなり、
過剰分を多少は受け止めてくれる。
もちろん限界はあるが、
「杖を通して放つ」ことで、
細やかな出力調整や再利用可能な魔力の保持ができるようになるのだ。
つまり──
魔石は“供給源”、杖は“制御装置”。
強力な術を“撃つ”だけなら魔石でもいい。
だが、無駄なく、流れるように戦うなら、
杖を使いこなせるかどうかが、生死を分けることもある。
細かい魔力制御は、錬金術師の領分である。
彼らが製作する魔道具は特殊な制御機構を内蔵しており、少量魔力を制御する技術は正確で素晴らしい。
まるで目に見えぬ糸を引くかのように、必要な魔力だけをそっと取り出し、漏らさない。
マキは、気を取り直して魔物と対峙する。
マキは、深く息を吐いた。気を取り直し、眼前の魔物、岩オークを見据える。
「さて……この岩オーク、どうやって倒そうか?」
問いかけに、仲間たちは一瞬沈黙する。
エメダは、うつむいて首を振った。
物理攻撃が通らない彼女には、できることが少ないのだ。
ユキは腕を組み、小さく呟いた。
「……岩ってさ、水で濡らすと、ちょっと柔らかくなるんじゃない?
それから火で乾かせば、表面が割れやすくなるかも」
マキは目を見開いた。
「なるほど、熱膨張と収縮の応用ね。面白いかも!」
「でしょでしょ~♪」
すぐにマキとユキは位置をとり、水と炎の連携魔法を放つ。
ユキが湿らせ、マキが乾かす。その繰り返し。
──すると、岩オークの体表の一部が「ボロッ」と剥がれ落ちた。
「今の……効いてるわ! 剥がれた部分、柔らかそう!」
マキは即座に指示を出す。
「エメダ! 剥がれた場所を狙って!」
エメダは少し戸惑いながらも、指示に従い武器を振るう。
……たしかに、さっきよりは手応えがある。けれど――決定打にはならない。
「すみません……結局、あまり効いていないみたいです」
エメダは肩を落とした。悔しさが滲む。
マキは、そんな彼女に微笑みかける。
「ううん、大丈夫。今ので“鍵”が見えた気がするの」
そう言って、マキは再びユキに声をかける。
「もう一回、やってみない? でも今度は、順番と間隔を少し変えてみよう」
「いいね、やってみよっか!」
再び、水。そして間髪入れず、炎。
直後――バシンッ!
先ほどとは比べ物にならない破裂音とともに、岩オークの膝が地を打つ。
「やった……! 今の、確実に効いた!」
「すごい!いい感じじゃん、マキちゃん!」
ユキが上機嫌で魔法を続け、マキもその流れに乗る。
二人の魔法が、リズムよく繰り出される。
湿らせて、乾かして、ひび割れを誘う。
岩オークの表皮が砕け、鈍重だった動きが鈍さを増していく。
エメダも意を決し、砕けた箇所を狙って攻撃。
今度は、はっきりと怯みの反応があった。
三人の呼吸が、次第にひとつになっていく。
最初は噛み合わなかった歯車が、今はきれいに回り始めていた。
亀裂も大きくなり、エメダの攻撃も十分効果が出て、無事に倒す事ができた。




