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ひと夜 3
「閣下っ!大変ですっ」
下級将校が執務室に飛び込んで来た。
「何事だっ」
問いただしたのはファーレンハイトだった。
「ベッヘム殿が死んでおります」
エルンストとファーレンは驚きを隠さなかった。
営倉の鉄格子のなかでベッヘムは口から血を流して白目をむいていた。
ファーレンハイトが中に入り、脈を確かめ、エルンストに視線を送ると首を振った。
「毒か?」
「恐らく」
エルンストが守衛に問いかける。
「誰か不審な人物を見た者は?」
「・・・いえ」
二人の守衛は俯いてしまった。
二人ともエルンストにとって優秀な部下だ。嘘をついているとは思えないし、思いたくなかった。
医者の見立てによると、時間差で効果が現れる薬草を使われたようだった。
「内通者でしょうか?」
エルンストは首を振る。
「シュバルツリーリエにそんな輩がいるとは思えない」
「ですが・・・」
「犯人捜しはしなくていい。もし俺の近くにいたとすれば、いずれしっぽを現すだろう」
仲間を疑いたくはなかった。
信頼関係は武門のよって立つところだ。だから戦場でも後背の憂いなく戦えるのだ。
それが崩れたとなれば、シュバルツリーリエの瓦解を意味する。
次から次へと押し寄せる事態に、頭を抱えたいエルンストだった。




