11.家探しをします
次の日は、お昼ご飯を食べてから街へと住む家を探しに出掛けた。
ヌェイリブさんから私の事を頼まれたロッチアは、午後から騎士の仕事を休んだらしい。
「仕事、休ませちゃってごめんね」
「別に構わないさ。一人じゃ探せないだろうしな」
ロッチアの言う通り、私一人では途方に暮れるしかない。
申し訳無いとは思うが、好意に甘えさせて貰うことにした。
私とロッチアは肩を並べて歩き始めた。
流石に一ヶ月も一緒に暮らしていると、それなりに話が出来るようになっていた。
話をしてみると彼は別に悪い人では無く、向こうも私をこんな奴なのかと良い方に理解してくれた事が大きい。
歩き出したロッチアは、馬車の停留所へと向かって行った。
それに気が付いた私は、慌ててロッチアの顔を見た。
「あ、あのね。出来たら、この辺で探したいなぁって思っていて……。ヌェイリブさん達に迷惑を掛けるつもりは無いんだけど、この辺なら慣れて来た所だったし……」
「あのなぁ……。お前の稼ぎで、この辺に住めると思っているのか?此処は、高級住宅街だぞ」
「えっ……」
それは知らなかった。
ヌェイリブさんの家は、この辺の中でも一際豪華な家だ。
彼だけがお金持ちなのかと思っていたが、その周りの家の人達もかなりの財力を持つ人達だったらしい。
本当は、知らない人ばかりの所に行くのは怖かったので、マノアさんに会いに行ける距離の家がよかったのだが、それは無理だと悟った。
ロッチアと一緒に馬車に乗った私は、カタカタと揺れる馬車の中で不安いっぱいの時間を過ごしていた。
私が借りられそうな地域へと向かってくれているのだが、かなり遠い。
不安げな顔を見せる私をチラリと見たロッチアは、そう言えば……と尋ねてきた。
「お前さ。此処の事って、どれだけ知ってんの?」
「此処?」
「黒の砦の事」
「全然知らない……かな」
「だろうな」
ハハッと小さく笑いを零したロッチアを、私は不思議そうに見つめた。
「なんで?」
「まあ後で説明してやるよ。取り敢えず、先ずはこの砦の中の説明からだな。ほら見てみろよ」
私はロッチアが示した窓の外を見てみた。
遠くに漆黒の城が見える。
「この砦の中は、土地が段々になっているんだ。1番下の第一層が下級層、第二層が中級層、第三層が上級層、そしてその中央に聳え立つのが黒の城なんだ」
「へえ……」
説明を受けて見つめた窓の外には、上級層が広がって見えた。
この黒の砦を簡単に表すと、歪ながらも丸い形をしているので、大きな三段のウェディングケーキが一番近い。
ただし、ウェディングケーキの様に高さは無い。
上から思いっきり潰した様な、平べったい三段ケーキだ。
私達は一番上から、真っ直ぐ下に続く大きな道を降りて来ている。
広くて大きな道には関所の様な門が設置されており、第三から第二と、第二から第一の層に行く途中の二箇所にある。
外周を囲む大きな壁の門から、真っ直ぐ伸びた道なので、途中に関所の様な門がないと、敵があっという間に上級層に行ってしまうからなのだとか。
私達が向かっているのは、一番広さがある第一層。
貧困層と言う訳ではなく、此処が一般人が住む土地らしい。
第一層は、正門側から見て手前の半分に、お店や住宅が立ち並ぶ。
残りの半分では、農業や畜産が営まれているらしい。
中級層には、少し裕福な人達や役人などが住んでいるのだとか。
上級層に住むには国からの認定が必要なのだが、下級層と中級層にはそれが無い。
どちらに住んでも特に問題は無いらしく、お金さえ払えば好きに移住出来る。
とは言え、私の稼ぎがどれ程になるのかが分からない以上、ロッチア曰く、下級層一択なのだそうだ。
下級層に着いた私達は、ロッチアが急いで調べてくれた一番安全で安い地域を目指して歩いて行った。




