10.薬を作れる様になりました
一ヶ月後、ようやく一人で薬を作れる様になり、ヌェイリブさんによる技能テストが行われた。
回復ポーションと、MP回復ポーション、状態異常回復ポーション。
ロールプレイングを一度でもやった事がある人ならば、誰もが知っている有名どころのポーションばかりだ。
私はまずは回復薬作りから始めた。
薬草をすり潰して鍋に入れ、決まった分量の水と共に火にかける。
そして煮詰めて濾した液体に、自分の魔力を流し込んで精製する。
回復薬の作り方は、これで終わりだ。
難しいのは、すり潰し具合や、火にかける時間、そして自分の魔力を流し込む所の三点だ。
回復薬が作り終わったら、他の薬を作っていく。
手順はほとんど変わらないが、使う魔法や、魔力を流す量などが変わって来るので、注意が必要だ。
出来上がったポーションを、50mlの液体が入る小瓶へと順に入れて行く。
一回の精製で出来るのは五本。
其々の薬を五本ずつ作り終わると、私はヌェイリブさんの顔を見た。
私の作り方をずっと見ていたヌェイリブさんは、手順に問題は無いと合格を出してくれた。
とは言え、それで終わりと言う訳ではない。
今度はそれを、鑑定士を生業としている人のお店、鑑定事務所へと持って行く。
鑑定士に鑑定して貰うと、瓶に直接、作成者と、薬の効能と、その完成度がレア度として表示される。
レア度表記は、上からSS、S、A、B、C、D、E、そして一番下はFとなる。
鑑定士さんの名前が入ったお墨付きのマークを入れて貰って、ようやく完成品となる。
今回、私が作った薬の全てを鑑定して貰う。
まだ作り始めたばかりの私の薬は、全部がBランクと言う高評価を得た。
とても嬉しくて、ヌェイリブさんの顔を見ると、口角を上げてコクリと頷きを落としてくれた。
(やった!全部合格だ!)
高校受験で自分の番号を見つけた時の様に、私は飛び上がって喜んだ。
その日の夕方。
鑑定士に評価して貰った薬を持って、家に帰った。
本来なら鑑定済みの薬は、薬の販売所へと卸しに行って売るのだが、それはまた今度だとヌェイリブさんから止められたので、持ち帰って来た。
マノアさんに瓶を見せながら報告すると、とても喜んでくれて、その日の夕食はめちゃくちゃ豪華だった。
机一杯に用意された料理に、私は目を丸くした。
こんなに沢山用意するのは大変だったと思う。
申し訳ないとは思いながらも、マノアさんのお祝いが嬉しくて、いっぱい食べた。
食欲旺盛な男性陣の為に、この家の日々の食事は肉料理が多い。
実家もそうだったので、その点は特に気にはならない。
しかし乙女的な事情で……特に体重的な事情で、普段は多くても八分目位に抑えるようにしている。
でも今回だけは、自分へのご褒美も兼ねて、遠慮なく沢山食べた。
マノアさんの手料理は、どれもとても美味しい。
お腹がいっぱいになった私は、物凄く幸せな気持ちで心もいっぱいになった。
夕食が終わる頃、お酒のコップを置いたヌェイリブさんが、私を見つめた。
「これでもう、サナはきちんと仕事をする事が出来る様になったな。明日になったら住む家を探しなさい。お金は二十万リェンを用意しよう。収入を得る様になったら、キチンと返済して行く事。分かったな」
「えっ?」
私のフォークを持つ手が止まった。
同じように驚きを見せたロッチアが、顔を向ける。
「えっ?コイツ、此処に住まわせるんじゃないの?だって陛下からの命令なんだろ?」
「いや。陛下からは、面倒を見てやれと言われただけだ。取り敢えず一人で生活できる様になったのだから、あとは自分でなんとかしていって貰う」
突然のヌェイリブさんの言葉に、マノアさんも驚き顔を向けている。
「あなた、そんな直ぐに決めなくても……。取り敢えず、お仕事をしてみて、稼げる様になってからでも遅くはないでしょ?」
「サナは預かっているだけなんだ。いつまでも此処にいらせる訳にはいかない」
「でも……」
「マノア。キチンと区別をしてくれ。扶養と預かりは違う」
「それは分かって居るわ。でも、サナは此処に来てまだ一ヶ月なのよ。もう少しだけ様子を見てあげても良いじゃない」
「だから、それが分かっていないと言っているんだ!」
「あの、待って下さい!」
エスカレートしていく喧嘩に、私は思わず席を立ち上がった。
「私なら大丈夫です!明日から家を探して、ちゃんと自立出来ます。だから、心配しないで下さい!」
「でも……。やっぱり、私は心配だわ」
「大丈夫です!困った時には、相談しますから」
私は席を立ったついでに、食べ終わった食器を片付け始めた。
普段はとても仲の良い夫婦が、自分の所為で喧嘩をしてしまう。
そんな空気に、とても耐えられなかった。
(大丈夫。なんとかなる)
不安いっぱいで押し潰されそうな心に負けないように、何度も心で呟きながら、私は部屋に戻り眠りに就いた。




