12.速攻で家を決めました
下級層の住人達も、やはり黒色の服を着ており、顔や体に黒色の蔓のような模様を付けている。
キョロキョロと辺りを見回して歩く私の前で、紙を見ながら歩いていたロッチアが足を止めた。
「おっ、此処だ。ここが紹介を受けた物件だぞ。入ってみようぜ」
「勝手に入っていいの?」
「ああ。許可は今とった。ほら、あそこを見てみろ」
ロッチアが指さす方向には、外に置かれた椅子に座って本を読むお爺さんがいる。
「あの人がここの大家だ。ああやって、毎日怪しい奴が来ないかを、見張ってくれているんだと。一人暮らしにはもってこいだろ?」
「うん。そうだね!」
私は顔を上げたお爺さんに向かって、九十度のお辞儀をした。
彼はコクリと頷きを返すと、再び本へと視線を移す。
私はロッチアと一緒に、家の中に入って行った。
再び紙を見たロッチアは、部屋と情報を照らし合わせて行く。
「えっと、ちょっと待てよ。えーっと、部屋は全部で二部屋とダイニング。ダイニングは少し広めになっている。風呂は無し、トイレは共同トイレが裏のドアから出て直ぐにある」
私は玄関のドアとは違う、裏にあるドアを開けてみた。
そこは中庭の様になっており、そこに小さな小屋が見える。ここがトイレで、四つ有るそうだ。
ぐるりと中庭を囲うように、周囲には八つのドアが見える。
「全部、単身者の女が借りている部屋なんだと。だからトイレも女用が三つらしい。あそこのドアの横に見える門は、トイレの汲み取り専用で、物凄く頑丈な作りになっているから、外部からの侵入は不可能だってさ。飲水の井戸は表に出て少し歩いた所にある」
「へえ……」
ここは女性向けの物件なのだそうだ。
私は中庭を見回した後、部屋の中を見て回った。
六畳ほどの部屋が二部屋ある。
ダイニングも広いので、薬の調合も出来そうだし、部屋が二つあるので、一つは仕事部屋で、もう一つをリビング兼寝室にすれば、生活は出来そうだ。
「あの爺さん、昔はかなりの腕前だったらしいし、店子は意地でも守るってさ。女の一人暮らしならって、騎士の友達からお勧めされた物件なんだ」
「そうなんだ!それなら、ひと安心かも」
見知らぬ土地での女の一人暮らしだから、こうやって大家さんが色々と注意してくれている物件の方が安心かもしれない。
「此処は六万だってさ。まあ、妥当な所かもな」
「うん。私、此処がいいな」
「そっか。それなら、誰かに取られる前に、大家に伝えていこうぜ」
「うん」
私はロッチアと共に、大家さんにお願いをしに行った。
コクリと頷きを落とすだけの返事だったが、鍵を渡してくれたので、どうやら了承してくれたらしい。
日本とは違って、書面での契約なんてものはない。
口約束なのだが、逆に口約束だからこそ、守らないと直ぐに追い出されるのだとか。
「部屋も決まったし、必要なものを買いに行こうぜ。なるべくでかい物を買ってしまおう。俺はそんなに仕事を休めないからな」
「うん。お願い!」
私はその日、ベッドと布団と小さなタンス、テーブルと椅子二脚、食器類や生活用品を買って、ロッチアに運んで貰った。
車なんてないから、小さな荷馬車を借りて来てくれてとても助かった。
買った物を運び終えた私は、ロッチアと一緒に荷物を取りにヌェイリブさんの家へと戻った。
ヌェイリブさんが買ってくれた、洋服が数枚と調合道具一式などがあるからだ。
まさかこんなに早く決めて来るとは思っていなかったマノアさんが、心配そうな顔をしていたが、大丈夫です!と強がって家を出た。
ヌェイリブさんは、今日は仕事で忙しいらしいので、後日お礼を言う事にして、私達は荷物を持って新居へと向かった。
あと一話、今日中に更新します




