第82話 神の背任行為②
「転生、転移、魔法、外法、魂…それらの技術が一切無い世界は、ここだけなのよ」
「それって…」
つまり…人間にとってこの世界は、ここから他のどの世界へも意図的に転移転生する事の出来ない、言わば行き止まりの世界という事なのではないだろうか。
「…意外と考えるわね」
思考を読まれている。
「ナターリャ…この世界は…」
「…そうね。ここは行き止まり。どんなに強大な力を持つ者でも、ここからは出られなくなるのよ」
まるでネズミ捕りの様だ。でも、何のためにそんな世界がある…?
「大した意味は無いわ。ここも他の世界と同じ。死ねば別世界に転生するだけ。ここも数ある世界の中の一つってだけよ」
…いや、何か隠されている。しかし、これ以上聴いても教えてはくれないだろう。
「…」ナターリャは黙っている。
「まあいい。で、その神様と髑髏斎は繋がってるのか?この世界に髑髏斎が転生した意味は?」
「その神との関係はわからないけど、エルヴィンも髑髏斎も、私たちの神力を奪うつもりなのよ」
「しんりき…?」
「ここは魔法は一切使えない、外法もまともに使えない。でも、私たち神は力を使える。神の力は魔力でも魂でもなく〝神力〟を使うの。聞いたでしょ?私たちが人化するのは…女神パワー…つまり神力を溜める事が目的なの」
神の力、神力。魔法とも外法とも違うその力は、魔法や外法よりも圧倒的に強い。
神力は、神がその管理する世界の生物に溜まった魔力を僅かずつ吸い出し、神の中で変換される事で溜まっていく。
そんな神力を奪う方法を、エルヴィンと髑髏斎は研究していた。彼らの手法では、神力を奪うためには途方も無い魔力が必要になるそうだ。
そのため、エルヴィンは誰一人として魔力を使っていないこの世界に目をつけたらしい。20回も異世界を渡り歩いた男がこの世界を知っていてもおかしくはない。
「髑髏斎の目的もナターリャなんだろ?人になったままじゃ、危ないんじゃないか?」
「神力を奪うためには膨大な魔力が必要なの。ちょうど、しのぶちゃんに今溜まっているくらいね。でも、その魔力だってこの世界では扱えないから…たとえしのぶちゃんが捕まっても、転移する前に退治しちゃえばオッケーよ」
「なるほど…それで狙われたのかな?でも、媚薬はなんだったんだ?」
「…髑髏斎の協力者に、仙人がいるんじゃないかと考えてるの。しのぶちゃんを媚薬でめちゃくちゃにしたら捕まえやすいじゃない?」
んなアホな。そんな理由で俺の貞操を奪われてたまるか!
「…それは真理衣とここちゃんが調べてくれてるからいいか。髑髏斎も加藤先輩と津島さんが探ってくれてる。いろんな意味で、味方が増えたよ。ナターリャも何かわかったら教えて」
「ええ。私も、背任疑惑の調査や常夜の管理で忙しくなるけど…あ。そろそろ時間ね」
そう言うとナターリャは再び高校生に戻り、部屋の壁の光は消えた。
「そんなわけで改めてよろしく!これから度々天界に帰るけど、仲間が増えたから大丈夫よね!」
「ああ。そうだね」
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ナターリャは再び天界に帰った。転移者を還す時は女神フォンで呼び出して欲しいとのことだ。意外と便利だな、コレ。
そうだ。 真理衣とやり取りしている最中だった。スマホを取り出すと、メッセージが届いていた。
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★まりぃ
課長はシロ。でも転生の記憶あり。犯人は一課にいるみたい。今日もしのぶさんのおうちにいきます♡
★しのぶ
ありがと。待ってる。
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一課に犯人…?どういうことだろう。
真理衣に夕飯を作って待っていると、チャイムが鳴った。先日の反省を活かしてインターホンで応答する。
「忍くん、私だよん」
来客は真理衣ではなく、坂巻だった。




