第83話 姫さまよりも女王様!?①
真理衣を待っていたら坂巻が来た。
「よっ!」
「お、おう…心愛、よく家にいるって分かったね」
「ミク姉さんに聞いたから」
喜多嶋め…いや、周囲の転生者や転移者に現状を伝えたらそうなるか…
「そうなんだ…なんか、白くなったね」
坂巻心愛。初めて出会った時は真っ黒に日焼けした肌に金髪で、黒、ヒョウ柄、ゴールド!ミニスカ!といった装備でいかにもギャルという姿だったが、今はグレーの肩出しニットにスキニーパンツ。大人ギャル風になっていた。肌は白くなっているが、金髪碧眼は元からなのだろう。メイクはギャルのままだが、元来の美女ぶりはどんなメイクでも崩れない。
「いやぁ、アタシも店長だし、流行は追わないといけないからさ。どう?可愛い?」坂巻はその場でくるりと一回転した。
「うん、まぁ」
「なによそれぇ?ほんと、アタシに興味ないよねぇ」坂巻は溜息をついた。
「で、どうしたの?」
早く帰ってくれないと、真理衣がまた怖い顔になるぞ…
「いや、しのぶ君が男に戻る前に女の生活に慣れ過ぎたらかわいそうだなと思って、裕佳梨と色々考えてきたのよね」
曽根崎と…?
「へ、へー。そーなんだー。でもほら、今日はお客さんがくるからまた今度で…」
俺は…女でいるべきなんじゃないか。真理衣は元からバイセクシャルで、彼女の前世は男だ。今は女しか愛せないかもしれない。
しかし女の体が面倒なのも、清光商会で出世するのも、女のままでは厳しい。どうしたものか…
「ちょっとくらいいいじゃん。っていうかしのぶちゃん、メイクしてない?」
「え?まぁ…」
真理衣に会うから…
「良くない!うーん!良くないな!」
坂巻はズカズカと部屋に入り込んできた。
「お、おい」
「なにこのぬいぐるみ!可愛い!」
坂巻はソファに置いてあった、犬とアザラシが混ざった様なキャラクターのぬいぐるみを手に取り抱きしめた後、そのまま俺の方を振り返った。坂巻は厳しい顔をしている。
「…マジで女子じゃん。ヤバイよしのぶ君」
「いや、なんか気になって買っちゃったんだよね…」
「あーダメ!これはヤバい!一刻も早く男に戻らないと!あとどれくらいで戻れんの!?」
「なんなんだよいきなり…えーと…あと32人、転移者を還す必要があるってさ」
男に戻るかどうかは置いておいて、髑髏斎が俺に残った魔力を狙っている以上、それを消費しなければならない。
「32!?それ、その間に完全に女の子になっちゃうじゃん!ダメだよぉ」
坂巻が顔を近づけて来る。
「ねぇ…今、カノジョがいるんでしょ?」坂巻は囁く様に話す。
「え?う、うん」
「イイコト、してるんだよね?」
「なんでそんな事言わなきゃ…」
「してるのね?…女同士、気持ちいい?」
「え?えー?えっ?」
なんだ!?何を言ってる!?
「真っ赤になって…可愛いね。でも本当にだめ。すっかり女の子」
何をしたいんだ。顔が近い!俺は浮気はせんぞ浮気は!
「なんなんだよ…!」
俺は坂巻を押し戻し、少し語気を強めて言った。
「ごめんごめん、こーいうものを持ってきたから…そういう話しなきゃいけなくて、さ…」
坂巻は持ってきた紙袋から、柔らかい棒状のものを取り出した。
「こ、こここここれ…」
それはかつて見慣れた棒が2本、双頭になっている〝道具〟だった。
見慣れているモノのはずなのに、物凄くグロテスクに見える。なんだか怖い。
「あ、あぅ…」何も言えない。
「あ、ごめん電話」
お坂巻は俺を無視して電話をとった。
「え?なによ?ああ、え?知らなーい。え?しのぶ君の家」
「姫ェ!」
曽根崎が突然俺の部屋に突っ込んできた。
「あっ。やべっ」
「ひ、姫、それは…!」
曽根崎は双頭のシリコンの塊を指差して固まっている。
「ごめん、借りてる」




