第56話 魔導師の目的②
ガルガトルの転移者達の事情がなんとなくは分かった。
「うちの課長、前世は仙人だったんですね…」
「仙人…ああ、この世界の伝承にもあるな。霞を食べるとか」
「ええ、まぁそうなんですけど…想像上の人種というか…」
「いずれにしても、本人がまやかしの外法の中でその様な術を使ったのならそうだろう。東雲さんも、前世は相当な力を持った魔女だった様だが…」エドガーはコルネリアを知らない様だ。
「そうですというか、違いますというか…」
俺は事情を説明した。
「なるほど…では、女神は東雲さんの身体に魔力を残して魔女コルネリアを転生させたのだな」
「そう、みたいですね」
そうだ。その事実だけは変わらない。ナターリャ。俺を騙していたのか、それとも…
「どちらにせよ、エルヴィンが気絶しているうちに女神を呼んだ方が…」
「ねぇ」
「うわぁ!」
突然ナターリャが現れた。エドガーは驚いて転んだ。
「いつも唐突に現れるな…」
「いーじゃん。で、このおじさんが私の力を奪うとか言ってるんだって?」
「ああ…っていうか俺の身体に魔力を残したってマジかよ!」
「ん?マジ。だって魔力なんて有り余っててもここじゃ一切使えないから」
「まぁ…」
「君が、女神?」エドガーは目を丸くして驚いた。
「はーい。女神でーす」ナターリャは女子高生のよくやるポーズを取った。最近の流行を覚えた様だ。
「そ、そうか…しかし女神よ、魔力の奪取は、ガルガトルに戻ればたやすくできる…」
「でも、そもそもここから異世界に行くのは無理でしょ」ナターリャはエルヴィンを見ながら話している。
「そうだが…この男、エルヴィンがなにか知っているはず」
ナターリャはエルヴィンの額に手を乗せて少し考え、エドガーの方を向いた。
「このおじさん、魂をブロックしてるんだけど、解除できる?」
「いや…そこまでの術となると、私の力では…」エドガーはうなだれた。
「…だから外法師の転移者は面倒なんだよねぇ…仕方ないなぁ」
「どうするんだ?」
「そうだねー。ま、外法の事はよくわかんないけど…」
ナターリャは急に制服のリボンをほどき、セーラー服のボタンを2つ外した。
「な、なんだ!?どうした!?」
「ちょっと本気出す」
そう言うとナターリャの身体が光り、その光が消えると、ナターリャの姿は…大人になった。
身長と胸が急成長し、スカートは脚の長さに対し丈が短すぎてマイクロミニに見える。目のやり場に困る…が、曽根崎とエドガーはお構い無しに凝視している。
「じゃ、本気のぉ…えいっ!」
女神とエルヴィンが目の前から消えた。
「あれが女神…初めてお会いしたが…美しいな」
「ええ…」
スケベ2人は共感していた。
どうでもいい。
数分後、女神だけが戻って来た。
「あのおじさん、こっちで預かるわ」
「どういう事だよ!?」
「あのおじさん、最低でも3回は転移してる。こっちで預かって色々調べてから、本当の元の世界に返すね。で、今回のカウントは…無しでーす!あと4人ね!」
「なんだよそれ!」
「だって見てよしのぶちゃん、私のこの姿。本気だもん。溜まったパワー…使っちゃった」
女神はウィンクする。大人になったナターリャからは可愛さはなくなり、神々しささえある。
スケベ2人は谷間と太ももに夢中だが、俺はそんな事よりその整った顔が気になった。何か違和感があるのだ。
そうだ。あの、出会った時の姿…あの時も制服を着ていたが、制服も違ったし、そもそもこんなに大人びていなかった。
「…なぁ、ナターリャ。最初に転移者探しの指示を俺に したのも、ナターリャ…だよな?」
「…」
「なぁ」
「…まぁ、いずれバレるか」
「バレる…?」やはり、何かウソをついていたのか…
「あれは、私の娘だよ」
娘!?




