第55話 魔導師の目的①
剣と魔法の世界、ガルガトル。
魔導師は生まれ持った素質を必要とし、世界には限られた数の魔導師しか存在しない。
そんな中、前世が同じ世界だった魔導師が2人いた。
エドガーとエルヴィン。
2人の前世は偶然にも、魂の力が支配する夜の世界、常夜。
偶然とは重なるもので、2人の前世は共に強力な術を操る外法師だった。
魂の研究が遅れているガルガトルにおいて、外法師の知識は異端として畏れられた。それは世界の名だたる国で重用される魔導師とて同じ。
しかし、そんな中でも大国の王は彼らを認め、保護した。
「王には感謝してもしきれぬな、エルヴィン」エドガーは機嫌良く酒をあおっている。
「ああ…そうだな…」
「私はこの国の生まれだったから詳しくはわからんのだが、エルヴィンの国では外法師はどう扱われていたのだ?」
「悪魔の遣い、さ」エルヴィンは強めの酒を一気に飲み干す。
「マスター、おかわり」
「悪魔…か…ならば迫害を…?」
「いや。そうでもないさ」
「そうか、ならば良いが…」
「ただ、この国の方が〝やりやすい〟というだけ…」
ーーーーー
「あの、ちょっといいですか?」
「何かな?」エドガーは不思議そうな顔をしている。
「回想長過ぎません?」
「え?その、いや…これからなんだが」
「まずはこうなった経緯からでしょ。背景はその後で」
「今日のしのぶさんは手厳しいな…」曽根崎はなぜか嬉しそうにしている。
「わ、わかった。ユーリー、それについては君が」
「はい。えーと…事実だけ言うと…」
ユーリー(曽根崎)の死がエルヴィンの策略だと知ったエドガーは、ココア姫(坂巻)を含む、王国の者全員にまやかしの外法を使い、自分の存在を忘れさせた上で陰ながらココア姫を見守っていた。
エルヴィンには国の仕事に疲れたとウソをついた。
その後、ココア姫は異世界に転移。さらに数日後、エルヴィンも転移。エドガーは、エルヴィンがココア姫を追ったと勘違いし、エルヴィンの残した資料をもとに、転移術でその後を追った。
「ここまでがガルガトルでの話だ」
転移できたはいいものの、魔法も使えず外法もまともに使えない事が分かったエドガーは、止むを得ずガルガトルからの転生者を探す事にした。そこで見つけたのがユーリーだった。既に10年が経過していた。
すぐにでも事情を話したかったが、ユーリーの性格を考えると転生後の人生を捨ててまでココア姫を守ると考え、様々な事情を隠して、ガルガトル人を探す様頼んだ。
「と、いうのが最近までの流れなんだ」
「…なるほど。で、曽根崎さんは俺に会ってエドガーを悪人だと思い、心愛はエドガーの記憶を消されていたから、エルヴィンしか思い出せなかったんですね」
「すまない、ユーリーの事を気遣ったつもりだったんだ…」
エドガーは頭を下げる。
「エドガーさんの気持ちはよく分かります。でもエルヴィンと毒島が別人というのは…」
「毒島は傀儡だった様だ。転移して大企業の課長になるのは難しい。エルヴィンは探偵をやっていたらしく、たまたま大企業の課長である毒島に会い、彼を操り、あの〝特殊営業〟をやらせた。魔力や魂の資質の高い者を探していたらしい」
そういう事か…
エルヴィンはまだ気絶している。顔もパンパンなままだ。
うーん…やり過ぎた。女になったとはいえ…股間を打った時の痛みは覚えている。
「で、あの特殊営業とかいうので皆さんが使っていた魔法やらなんやらは…」
「実際には使えず、あの場で皆座っていただけだ。ただし、本人の能力以上の事はまやかしの中でも出来ない」
「だから魔力がどうのこうのと…あ、じゃあうちの課長の前世が仙人なのは事実…?」
「そうだ」




