第47話 外法師の正体②
曽根崎が魔導師エドガーと思われる人物を追って行ったので、俺は曽根崎から連絡が来るまで売り子を続ける事にした。
「お姉さん、普段はモデルさん?」この男性はプリンを5個買ってくれた。
「いえ。営業やってます」
「営業?芸人さん?」
「あ、いえ。営業マンです。今日は国枝さんの手伝いで。清光商会の東雲と申します」俺は名刺を差し出した。
「へぇ…私ね…天衣社の毒島と言います。今度清光商会さんがウチに来る予定でしてね…おや。東雲さんは等々力くんと同じ部署ですね…」
毒島!?
「あ、え?あー…あの…こんな格好でアレですけど…わ、私がお伺いする予定で…」
何を言ってるんだ俺は。もっと聞くべき事があるだろ。
「…そうでしたか。それはそれは。等々力くんもこんな美人を部下に持つなんて羨ましい。今日は食品の販売だから、香水もつけていませんね?」毒島は不気味に微笑んだ。吊り上がった目はキツネを連想させる。背筋がゾワっとする。
狐の様な顔の男…
毒島は痩せている。
曽根崎と坂巻の言っていた、エドガーの特徴と合致する。
間違いない。この男がエドガーだ。
「は、はぁ…」
どうする?曽根崎は全く関係ない男を追ってしまった。
この人混みではナターリャを呼ぶと目立つ。もし、ナターリャに任せ、この場の全員の記憶を消せたとしても、男に戻るための力を溜めるのに何年かかるかわからなくなってしまう。
「…東雲さん」
「はっ、はひっ!」
「そんな格好はお望みではないでしょうが…我慢して着るとは、大したものです。お仕事熱心の様だ…良いご提案をお待ちしていますよ…」
毒島は立ち去ってしまった。
そんなに嫌そうにしてたか、俺。
すかさず曽根崎にメッセージを送る。
『毒島がエドガーだ!今遭遇した!戻って!』
すぐに返信が来る。
『こちらもエドガーに会えたが逃げられた。すぐ戻る』
曽根崎へ出した指示が裏目に出てしまった。曽根崎に追わせた男は…別人だった様だ。
数分後。曽根崎が戻って来た。
「すまない、しのぶさん。エドガーに逃げられてしまったよ。まさかしのぶさんのところに行っていたとは」
「さっきの男は別人だったんですね…」
「その様だ。つり目の男なんてたくさんいるし、仕方ないさ…背格好も似ていたので、私も後ろ姿で判断して追ってしまった。すまない」
「逃げられたって、どんな感じだったんですか?」
「別人の男を追っていた時、たまたまエドガーを見かけてね。肩を掴んで『私を騙したのか』と問い詰めた途端に人混みに紛れて走り去ってしまったんだ」
人混みは逃走にはもってこいだ。今回は負け戦だった。仕方ない。
「お姉さーん!プリンちょうだい!」
「あ、はーい!…すいません曽根崎さん、俺、仕事なんでまた後で」
「そ、そうだな」
「じゃ」
「し、しのぶさん!」振り返った俺を曽根崎が呼び止めた。
「その…ミニスカートも、よく似合うよ」曽根崎はキメ顔をした。今日は仕事を中抜けしてスーツ姿だったのでキメ顔がよく似合っている。
「ありがとうございます…もう履きませんけど…」
やはり、変な人だ。
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「で、どうだったの!?」坂巻が俺に迫る。
「毒島がエドガーで間違いない。あとキモかった」俺は身体の匂いを確認された気持ち悪さがまだ背筋に残っていた。
「でしょでしょ!?あいつマジキモいから!」
「…」大村が俺たちの席にハイボールを持ってきた。
「でもさぁ、しのぶちゃんも水くさいよねぇ。私達にも声かけてくれたら良かったのにさー。ねぇ、大村」喜多嶋はぐるりと大村の方を向いた。
「はい」大村は高い声で答えた。
「あんな恥ずかしい格好見せられるかよ」
「持ってきたよー」
ナターリャが入ってきた。
女神は、あの衣装を雑に握りしめていた。




