第46話 外法師の正体①
俺のあからさまにセクシーな格好と、栗田を叱りつけた姿が男たちの心を射抜いてしまったらしく、男たちはこぞってプリンを買いまくっていた。
なんでM男ばかりが来てるんだよ!?
「あ、握手はいらないのでビンタしてください!」
「えぇ…?」
林田がウインクして促す。おっさんのウインク…
俺は仕方なく、男をビンタした。生まれて初めて平手で人を叩いたので加減が分からず、スパーン!といい音が催事場に響いた。
「あ、ありがとうございます!」
お礼を言われた。なんだこれ。
その後も国枝食品のプリンは飛ぶように売れていった。
「疲れた…」昼の休憩時間。俺は控え室のソファーに腰掛けていた。うずくまると背中のジッパーがはちきれそうなので、俺は天を仰ぐ様に座っていた。
「いやぁ、東雲さん!ものすごい勢いで売れてますよ!いやぁ、本っ当にありがとうございます!」林田は上機嫌だ。
「それはどーも…」
俺が生返事をした瞬間、スカートのポケットに入れていた女神フォンが震えた!
「転移者が近くにいます」
…来た!おそらく、ガルガトルの魔導師エドガーだ。曽根崎が言っていた待ち合わせの時間より30分ほど早い。
曽根崎にメッセージを送る。
返事が来た。
『約束より早い。一応注意する』
『遠隔地の声を聞く術の他にも使える術があるかもしれません。気をつけて下さい』
注意喚起のメッセージを送ってすぐ、俺は催事場に戻った。
「国枝の、ミルクたっぷりぷりんはいかがですかぁ…」
周囲の様子を伺いながら売り子をするのはなかなか難しい。
「しのぶさんじゃいですかぁ。なんですかぁ?その格好ぉ。かーわいぃ~」
スマホのカメラで写真を撮りながら話しかけてきたのは同じ部署の新入社員…田野島だった。
ぶりっ子をしているが、なんとなく俺に当たりが強い。
「田野島さん…バカにしてない?」
「してませんよぉ~。おっぱいもはちきれそうなほど詰め込んでてぇ、羨ましいですぅ」
ホント、いちいちトゲがあるな…
こんなところに来てどうしたの?営業は?と反撃してみたかったが、なんだかドラマで見た女同士の諍いみたいで嫌だ。やめよう。俺は男なんだし。
「田野島、用事ってのは東雲のジャマか?」
作田が田野島の背後に立っていた。
「…違いまぁす…応援ですもん!」田野島は両拳を握って顎の下に置いた。
このポーズ…俺が男の時は多少なりとも可愛いと思ったものだが、女の脳になったからか殺意が湧くほどイラっとした。
「応援受け取ったから、もういいよ」
俺の殺意を感じ取ったのか、田野島は一瞬眉をひそめ「はぁい」と言って作田とともに去った。
あ。じゃあ女神フォンの反応はあの2人か。
どっちが転移者なのか、まだわからないな…
一応、女神フォンを見た。
「転移者が離れました」
「転移者が近くにいます」
ん!?
今度こそエドガーだ!
辺りを見渡すが…当然分からない。
曽根崎と坂巻の話だと、ガルガトル人はほとんど日本人と同じ見た目をしており、アジアに溶け込みやすいらしい。
女神が言っていた、転移者が日本に多い理由がこれだ。
仕方ない。曽根崎に任せて俺はいざという時に動こう。
「あの、すいません」
「はーい。プリンはこちらですよ」
「いえ。貴女に用事があります!」
男は興奮気味に俺に詰め寄る。
「私、ですか?」
またビンタかな…
「はーい!売り子と握手はご購入特典ですよぉ!」林田が俺と男の間に割って入った。
「…」
男は林田を無視して離れていった。
「いやぁ、厚かましい人ですね…」林田が俺に耳打ちする。
「ええ…」
あの男がエドガーかもしれない…
俺は曽根崎にメッセージを送った。
曽根崎はその男が向かった方向へ向かった。
この時の俺は安心しきっていた。自分の失敗に気付かずに。




