↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/107

第二章 -24-

ようやく坂がなだらかになり、ところどころに潅木の生えた草原に出た。


ここを北に抜ければ、夕方に二人がいた脳の磯へ戻ることになる。


東へ向かえば、楯縫郡だ。頑張って一晩中馬を走らせれば、明け方までに郡家へ戻れないこともなかった。


だが、耳を澄ますと、早くも背後の山の中から蹄の響く音がする。


どうやら、佐底麿たちは側の林の中に馬を隠していたらしい。


追っ手の気配に気づいた麻奈古は、ふいに馬を止めて堅魚を呼び寄せた。そして、声を押し殺して囁く。


「西へ向かう。ついて参れ」


「どうして? 楯縫は東でしょう」


「追手が迫っている。楯縫に向かえば、途中に意保美おほみの小川があるだろう。川を渡るのに手間取っているうちに追いつかれる」


確かに、ここへ来る時、その川を渡るのに少々苦労した。


大した川幅はないが、橋がかかっておらず、浅瀬もところどころにしかないのだ。ましてや、こんな夜中では、浅瀬の在り処などわかるはずもない。


「でも、西へ向かって、それからどうするのです」


「隠れることのできる場所がある」


「それは?」


「黄泉穴だ」


黄泉穴……それは、稲目の窟戸のことだった。


この土地の者はそう呼ぶのだと、郡家にいる時史から聞いていたのだ。


では、麻奈古は稲目の窟戸の存在を知っていて、しかもそこへ向かおうとしているのか。


「あそこなら、誰も追って来ない」


「どうして」


「あそこには、この辺りの人間なら決して近づかない。皆、あれに近づくと死ぬと信じているから」


「でも、あいつが諦めるでしょうか」


「佐底麿はただの臆病者だ。黄泉穴まで追ってくる度胸はない」


そう言っている間にも、背後の山道からは蹄の音が近づいてくる。


木々の隙間から、松明の明かりがちらちらしているのが見えた。


もう猶予はない。


麻奈古と稲目の窟戸へ行くのは計算違いだったが、麻奈古が言い出したことだから仕方がなかろう。


こちらを見つめている麻奈古に、堅魚は黙って頷いた。


そして、同時に馬へ鞭をくれると、二人は西に向かって走り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。