第77章
ボンベイに到着すると、ベレニスと母親は、この美しい街に通じる進入路に感動した。海からの長くて広い水路には、山のような島々が点在して、都市に続いていた。左手には立派な建物群がそびえ立ち、ずっと右ではヤシに縁取られた本土の海岸が徐々に高さを増して、はるか遠くの西ガーツ山脈の頂に至るまで続いていた。
ボンベイでは、セヴェレンス卿からマジェスティック・ホテルの経営者に宛てた手紙を持っていたおかげで、二人は滞在期間中ずっととても丁寧で快適なサービスを受けられた。そのため、西洋の都市と対照的なこの都市の多くの特徴を探るために、二人は数週間滞在するほどだった。そして嬉しいことに、多くのさまざまな印象深いものにたっぷりと報われた。広い大通りには商品を運ぶ牛車が点在し、混雑した商店街は、展示品が豊富で品揃えが充実し、いろいろな人種や宗教の人たちでごった返していた。その多くは薄茶色から黒までのあらゆる肌の色をした、粗末な服の裸足の人たちで、アフガニスタン人、シーク教徒、チベット人、シンハラ人、バグダッドのユダヤ人、日本人、中国人などだった。しかし、ああ、それよりも貧しくて痩せ衰えた人たちがいた。細い体とくぼんだ胸をしていて、その多くが、人力車を引いて街中あちこちを駆け回り、美しい建物や、豪華な装飾が施された寺院や、大学を駆け抜けた。すべてがヤシ科の植物で縁取られていた。ココナッツ、ナツメヤシ、パルミラ、ビンロウジュ、果物、木の実、ゴムがあった。要するに、カルカッタまで行く幹線でボンベイの東に位置する都市ナーグプルに向かう列車でボンベイを離れるまで、新しい南国の風景と人々は、二人の関心であり続けた。
こうなった理由は、二人がセヴェレンス卿から出された指示に従うことにしたからだった。卿はグル・ボロダンダジを探すよう助言した。その者は問題を解き、エネルギーをコントロールする者として卿に語られ、ナーグルプ市の近くに住んでいた。そこで旅行者は時々、都市中央の広場を一望する昔風の造りの簡素な建物に迎えられるのだ。
落ち着いて早々、ベレニスはグルを探し続けたい一心で、セヴェレンス卿からもらった指示書を持って出発した。指図に従い、ナーグルプを通る南北の幹線道路をたどって、廃工場のように見える古い荒れ果てた建物に着くまで進んだ。それから急カーブを右に曲がって、ひと気のない綿畑に沿って半マイルほど歩き、大きな黒檀とチークの木立にたどり着いた。木々は太陽のまぶしい熱をさえぎるほど密集して植えられていた。セヴェレンスが正確に描写していたため、ベレニスは直感的にここがグルのいる場所だとわかった。ためらいながら怪訝そうにあたりを見回すと、でこぼこの細い道が木立の中心に向かって曲がりくねって続いているのが見えた。それをたどって行き止まりまで進んだ。ベレニスはそこで、大きくて四角い半ば朽ちかけた木造の建物を見た。後々知ったところによると、この建物はかつて、この木立が一部となる森林を管理した役所の建物だった。壁には一度も修理されたことのない大きな穴がいくつもあり、そこから、また、同じように荒れ果てた他の部屋に行けた。実際、後で知ったが、この廃墟となった建物は、瞑想の指導と、ヨガを通じてすべての体内エネルギーをコントロールする力を実演するためにグル・ボロダンダジに与えられたものだった。
ベレニスがやや恐る恐る近づくと、静寂と、高く張り出した木々の影が、どういうわけか孤独と平和が支配する領域を思わせた。ベレニスが後に残した世界は彼女にとってまったく受け入れられない、満足できないものだったから、ベレニスには平和がとても必要だった。内側の建物の一つに向かって歩いていくと、色黒で年配のヒンズー教徒の女性がベレニスの前に現れ、奥の建物に続くアーチ型の中庭に向かうよう手でうながし、同時に言った。「こっちからどうぞ。先生がお待ちです」
ベレニスは女性の後に続いて、壁の壊れたところを通り抜け、明らかにベンチに代用されていた数本の丸太の周りに散らかった割れたお椀を通り過ぎた。それからヒンズー教徒の女性は大きな重たい扉を押し開けた。ベレニスは靴を脱いでから敷居をまたいだ。
目が、部屋の中央の大きな白い布の上に、ヨガ流の座り方で座っている、色黒でやせた顔の長身の人物に行った。まるでお祈りをしていたかのように、両手が両膝の間で組まれていた。しかし相手は動かず、何も言わず、深い、ほとんど黒の、鋭い、探るような目をベレニスに向けただけだった。それから口を開いた。
「どちらからお出でですか?」と尋ねた。「ご主人が亡くなって、丸四か月が経ちましたね。私はあなたを待っていました」
この質問と相手の態度全体に驚いて、ベレニスは本当に怖くなったかのように、思わず数歩後ずさりした。
「怖がらないでください」グルは言った。「あなたが求めている現実、ブラフマンを恐れることはありません。それより、娘さん、ここに来て座りなさい」そしてグルは、自分が座っている白い布に向かって細長い腕を振り、相手が座るべき布の隅を示した。ベレニスが腰かけると、グルは話し始めた。
「あなたは、自分に安らぎを与えるものを見つけるためにはるばるやって来ましたね。あなたは自分のサマーディ、神との一体化を求めています。そうではありませんか?」
「はい、先生」ベレニスはとても驚き、畏怖の念を抱いて答えた。「そのとおりです」
「そして、あなたは世間からの悪意にとても苦しんだと感じていますね」グルは続けた。「そして今、あなたは変わる準備ができたのですね」
「はい、そうです、先生、そのとおりです。変わる準備ができました。今は、私が世界を傷つけたのかもしれないと感じています」
「そして今、できるのであれば、その傷を治す準備ができたのですね?」
「はい、そうです、そのとおりです!」ベレニスは穏やかに言った。
「でも、この苦労に何年も捧げる準備ができていますか、それとも一時的な好奇心ですか?」
「自分がつくった傷をどうすれば治せるのかを勉強するためなら、私は何年でも捧げる準備ができています。知りたいのです。学ばなければならないと思っています」その声には不安があった。
「わかっているでしょうが、それには忍耐、苦労、自己修練が必要です。ブラフマンの教えに従うことで、あなたは偉大になります」
「はい、必要なことは何でもやります」ベレニスは言った。「そのために私は来ました。埋め合わせというか、修復できるほど賢くなるには、集中と瞑想を学ばねばならないことを知っています」
「瞑想する者だけが、真実を悟ることができます」グルはベレニスを観察し続けながら言って、最後に付け加えた。「よろしい、あなたを弟子にしましょう。あなたは誠実だから、私のクラスに入れましょう。明日の呼吸法のクラスに参加するといい。深い呼吸、中間の呼吸、完全呼吸、鼻呼吸について説明します。呼吸をとめるということは、体内に生命をとどめるようなものです。それが第一歩です。そしてこれは、あなたが自分の新しい世界を築く土台なのです。それを通して、あなたは無執着を達成します。あなたは欲望から生じる苦しみを失います」
「先生、精神の安らぎのために、私はたくさんのことをあきらめるつもりです」ベレニスは言った。
グルはしばらく黙ったままだった。それから厳粛と言っていい態度で始めた。
「立派な家に住み、立派な服を着て、おいしい物を食べるのをやめて、砂漠に行く人は、最も執着の多い人かもしれません。唯一の所有物、つまりは自分の肉体だけが、自分にとってのすべてになればいいのです。生きている間は自分の肉体のために、苦労するだけでいいのです。実は、無執着とは、私たちが永遠の体に何をしてもいいという意味ではありません。すべては心の中にあります。ある人は玉座に就いても完全に無執着かもしれないし、またある人はボロを着ていても、とても執着が強いかもしれません。しかし、人間に精神的な識別力が与えられ、アートマンを知って啓蒙されると、疑いはすべて払拭されます。自分の嫌なことをするのを避けないし、好きなことをやりたいと願いません。人間は行動を完全にあきらめることはできません。しかし行動の結果をあきらめる者は、無執着であると言えます」
「ああ、先生、この偉大な知識のほんのわずかでも得られたらいいのですけど!」ベレニスは言った。
「すべての知識というものはね、娘さん」グルは続けた。「精神の贈り物なんです。精神の中で感謝する人だけ、知識が蓮の花びらのように開くのです。あなたは西洋の先生から、芸術や科学を学びますが、東洋の先生からは、知恵の内面的な神秘を発見します。ただ、いい学校へ通っても、教えは得られません。内面の真理に啓発されたときだけ、本当に教えが得られるのです。内面の真理は死の事実を受けとめてそれを生かします。心を奮い立たせて他の人の役立つように知識を使います。主を見るのは、知性ではなく心を通してです。そのためにいいことをしなさい。そのとき、無執着になれます」
「私は一生懸命に呼吸法を学びます、先生」ベレニスは言った。「それがすべてをよく知るための基礎だとわかるくらい、私はヨガについて知っています。呼吸が命であることも知っています」
「必ずしもそうとは限りません」グルは言った。「お望みなら、呼吸がないところに命があることを、今見せましよう」
グルは小さな鏡を手に取り、それを相手に渡して言った。「呼吸を止めたら、私の鼻と口の前にこの鏡をかざして、鏡に湿気が見て取れるか確かめなさい」
グルは目を閉じた。それから徐々に体がまっすぐになり、彫像のように動かなくなった。深い昏睡状態に陥ったようだった。ベレニスはグルを観察しながら、その鼻孔近くに自分の手のひらをかざして待った。手に当たるグルの呼吸が弱くなったのを感じるまでに、数分が経過した。すると、驚いたことに呼吸がとまった。周期的な呼吸の気配が完全になくなった。ベレニスは待った。それから鏡をとって数秒間鼻と口の前にかざした。湿気の痕跡は全然なかった。それどころか、今確認できるように、呼吸がとまっていた。石に彫られた像のようだった。ここでベレニスは心配になって腕時計を見た。少し呼吸が始まったのを確認するまでに十分が経過し、それから完全に正常な状態になった。とても疲れた様子のグルが、目を開けて相手を見て微笑んだ。
「すばらしいものを見せていただきました!」ベレニスは言った。
「私はこうやって何時間も呼吸をとめていられます」グルは言った。「ヨガの行者の中には、何か月も呼吸をとめてしまう者がいます。ヨガ行者が何週間も密閉した地下室に閉じ込められたのに、完全な健康状態で出てきた例もあります。この他に」グルは続けた。「心拍をコントロールするのも似たようなものです。私は完全に心拍を止めることができます。ご存知でしょうが、血液と呼吸の関係はとても密接なんです。しかし、それはまた別の日に見せましよう。目には見えませんが、呼吸は重要な器官に潜む不思議な力の表現にすぎないことをあなたは学ぶでしょう。これが体から離れると、自ずと呼吸がとまります。死はその結果です。でも呼吸をコントロールすることで、この目に見えない流れを多少コントロールできます。
しかし言っておかねばなりません。これはラージャ・ヨガの修行ですから、いずれハタ・ヨガの修行をしばらくやってからでないとできません。それにもう、あなたは少しお疲れのようだから、帰って明日いらっしゃい。修行は明日から始めればいい」
これで、このとても珍しい男性との今日の対面は終わったことがベレニスにはわかった。それでも、仕方なくグルから離れるとき、自分が未知の知識の大きな貯蔵庫を残して去っていくのを感じた。来る時に来たでこぼこ道を引き返すとき、もう少し早足で歩かなければならないと感じた。日が暮れるとインドはすぐ夜になることをもう彼女は知っていた。欧米のように悠長な日没ではなかった。それどころか、孤独が包み込むような、あっという間に訪れる暗闇だった。
再びナーグプルの村に近づくと、突然、神聖なラムテックの丘の美しさに圧倒された。目につく、輝かしい白の寺院の数々が周囲の国土を完全に支配していた。ベレニスはここで立ち止まって、この光景の絶妙な美しさに思いを巡らせて、遠くの音に聴き惚れた。薄い空気の中をゆっくりと大きくなって漂う、ヒンズー教のマントラの落ち着いた詠唱だった。ベレニスはそれが、信仰の神聖な言葉を詠唱するために一日の終わりに集う、ラムテックの信心深い人たちの声だと知っていた。最初のうち、その声は低いつぶやきのように、穏やかで優しく聞こえたが、彼女が近づくにつれて詠唱のテンポは大きな太鼓を安定して叩いている感じになった。するとそのとき、まるでこの偉大な神を求め、魂を愛する土地の鼓動に合わせるために、ベレニスの心臓は鼓動の速度を変えたかのようだった。そしてベレニスは、ここが自分の魂を見つける領域であることを知った。




