第65章
この間、クーパーウッドは、一日が終わったらプライアーズ・コーブとベレニスのところに戻るという心地よい考えの中で主に暮らしていた。クーパーウッドは何年かぶりに、本物の家庭の素朴さを満喫していた。ここはベレニスが注いだ精神のおかげで、チェッカーゲームからテムズ川沿いの短い散歩まで、何でもあらゆることが、色彩も感情も豊かに思え、それが永遠に続けばいいと彼に願わせた。こういう環境で過ごすことができたら、年をとることでさえそれほどの試練にはならないだろう。
しかし、仕事に復帰して五か月ほど経ったある午後、オフィスでアイリーンに手紙を書いていたときに、突然、これまでに病気で経験した中でも最大の激痛に襲われた。それは、左の腎臓のあたりに鋭いナイフを突き刺されてえぐられた感触に似てなくもない。そしてそこから心臓へ飛び移ったようだった。椅子から立ち上がろうとしても、立ち上がれなかった。実際、トレガサルのときと同じで、息が苦しそうだった。動けなかった。しかし、痛みはすぐに収まり、ジェーミソンを呼び出す押しボタンに手を伸ばすことができた。しかし、ボタンを押そうとしたが手を引っ込め、おそらくこれが、あると警告されていたただの激痛のひとつで、これ自体は命にかかわるものではないと保証されていたものだと判断した。自分は治っていないという明らかな証拠に極度に落ち込んで、最終的にこのまま終わるのではないかと恐れながら、しばらく座っていた。さらに悪いことに、打ち明けられる相手が誰もいなかった。これが世に知れたら自分の公の立場が、以前とまったく同じ状態に戻ってしまう。ベレニス! ステイン! アイリーン! 新聞! そしてベッドにいる日が増えていく!
こうなったらニューヨークに戻るしかない。あそこなら、ジェームズ医師が近くにいるし、アイリーンに再会して、彼女を悩ませている問題を解決することができる。もし死ぬのであれば、片付けておくべきことがあった。ベレニスには、この最新の発病を全部話さずに必要なことを説明して、彼女にもニューヨークに戻ってもらえばよかった。
クーパーウッドはこの決定に達してから、とても慎重に椅子から立ち上がった。そして数時間後には何も悪いところがないふりをしながら、プライアーズ・コーブに戻ることができた。しかし、ディナーの後で、特に楽しい気分でいたベレニスが、すべては順調にいってますかと尋ねた。
「いや、そうとも言えないんだ」クーパーウッドは答えた。「ニューヨークの問題で不満を言っている手紙をアイリーンから受け取りました。家の改築に関係することなんですがね。アイリーンは、私がコレクションに加えた絵画を収めるのに十分な空間が残されていない、と思っているんです。そして、改修作業をのぞいた画商の中にも、パインの意見とは関係なく、アイリーンと同じ意見の者が数名いるようなんです。理由はこれだけでなく、前回行ったときにしてもらった融資のことで、いくつかの継続を確認するためにも行くべきだという気がしています」
「旅行できるだけの体力はあるのかしら?」ベレニスは目に不安の色を浮かべて尋ねた。
「大丈夫」クーパーウッドは答えた。「実は、数か月ぶりにいい調子なんです。それに、ずっとニューヨークと連絡を取らないわけにはいきませんからね」
「私はどうしましようか?」ベレニスは困った口調で尋ねた。
「あなたには同行してもらいます。むこうについたら便宜上、ウォルドルフに滞在すればいい、もちろん、身元は知られないようにします」……顔の悲しそうな表情が変わったのが返事だった。
「でも、いつもみたいに別々の船なんでしょ?」
「残念ながら、それが最善の方法ですね。考えるだけでもつらいことですが。世間に知られたら危険なのは、よくわかってますね」
「はい、わかってます。あなたの気持ちはわかってます。あなたが行かなければならないのなら、行くしかないですね。私は次の船ですぐ後を追います。出発はいつですか?」
「ジェーミソンの話では、次の船は水曜日に出るそうです。それまでに準備ができますか?」
「必要なら明日であろうと準備は整えられます」ベレニスは答えた。
「あなた! いつも積極的で、助かります……あなたがいなかったら私の人生はどうなるかわかりませんよ……」
クーパーウッドがそう言うと、ベレニスは近寄って、両腕をまわして、ささやいた。「愛しているわ、フランク。だって、あなたを助けるためですもの、できることは何でもやるべきじゃないかしら……」




