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ストイック  作者: ドライサーの小説の翻訳作品です
64/79

第64章

 

 ジェームズ医師が去った今、クーパーウッドは留守中にたまった多くの仕事に直面していた。これには数か月分の集中力と注意力が必要になるだろう。一方で自分の個人的な問題の特定の項目に目を向ける必要があった。その一つがアイリーンからの手紙である。新しい増築部分で行われている変更が、建築家のパインの監督下で進められているが、手遅れになる前にその是非を判断しに、クーパーウッドができるだけ早くニューヨークに戻って全体の計画に目を通すべきだと思う、と手紙に書いて寄こした。アイリーンは、新しいギャラリーに、クーパーウッドが最近コレクションに加えた絵を展示する十分なスペースがあるのか確信が持てなかった。芸術の専門家としてカスバートの意見を尊重しはしたが、もしクーパーウッドがいたら絶対に反対するだろうと感じることが何度かあったのだ。

 クーパーウッドは、これは注意を要することだと認識した。それでもこの時期に、ニューヨークへ行く余裕はないと感じた。自分が直接監督しなくてはならない地下鉄に関係した緊急性の高い政策や実務的な細かい部分があまりにも多すぎた。もちろん、よくそばにいるステイン卿が、システム全体の今後順調な進捗を請け合い、関心と努力によってさまざまな関係者の間にあったかつての摩擦を軽減することに成功した。ステインは、クーパーウッドの回復にすっかり安心して喜んでいるようだった。

「おや、クーパーウッドさん」戻ってきた最初の朝にステインは言った。「新品と同じように好調のようですね。いったいどうしちゃったんですか?」

「私は何もしてませんよ」クーパーウッドは答えた。「みんな旧友のジェフ・ジェームズのおかげです。過去にも数回私を病気から救ってくれましたが、今度は仕事の危機からも同じように救ってくれましたよ」

「こうしているわけですからね」ステインは言った。「確かに見事な方法で大衆を騙しましたね」

「あれはジェフの名案でした。彼は疑惑や噂を鎮めるために私を旅行に連れ出しただけでなく、旅をしながら治療までしてくれました」クーパーウッドは言った。

 この時、彼が個人的に気にかけねばならなかったもう一つの問題は、レクスフォード・リンウッドとの打ち合わせだった。彼はクーパーウッドが建設するつもりだった墓のことで、ジェーミソンに提案された三人のアメリカの彫刻家の一人だった。リンウッドの能力がクーパーウッドに気に入られたのは、最近亡くなった南部の州のひとつの知事の墓を表す墓石と像に贈られた賞の中で、彼のデザインが、その表面のひとつにその男性が生まれた小屋を再現していたのと、苔に覆われたオークの大木の根もとに、故人が南北戦争のさまざまな戦いで乗っていた馬の輪郭が描かれていたからだった。クーパーウッドはそれを見て、デザイン全体の哀愁と簡素さに惹かれた。

 後日、巨大な作業机の向こう側のリンウッドと対峙して座ったとき、クーパーウッドはこの男性の古典的な顔立ち、深くくぼんだ目、背の高い角ばった姿に感銘を受けた。現に、たちまち相手を好きになった。

 クーパーウッドがリンウッドに説明したように、彼が墓について考えていたことは、その純粋な墓の概念には収まらず、ギリシャ・ローマ風の建造物に近かった。むしろ、細部のデザインに多少の独創性を持たせて修正したものにしたかった。常に宇宙のことを考えるのが好きだったので、そこは広くして、豊かな質感をもつペブルグレーの花崗岩で作られる予定だった。片方の端には窓となる細い切り込みをつけ、二人の石棺の収納場所には、開くと墓の中に入れる二つの重い青銅の扉をつけたかった。リンウッドは了承し、この建物を作る機会に恵まれたことを喜びさえした。リンウッドはクーパーウッドの話に沿って、いくつかの図案を描いた。これがまたクーパーウッドを大喜びさせた。契約が成立して、直ちに仕事を始めるように指示された。リンウッドは図案を集めて書類入れに収め、一呼吸置いてクーパーウッドのことを見た。

「では、クーパーウッドさん」リンウッドは帰り際に言った。「あなたの様子から判断すると、これが必要になるのは、まだずっと先になると思います。少なくとも、私は心からそう願っています」

「それは、どうもありがとう」クーパーウッドは言った。「でも、それを当てにしないでください」

 


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