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ストイック  作者: ドライサーの小説の翻訳作品です
50/79

第50章

 

 チェスの名人のように、クーパーウッドは、地下鉄の計画で自分に敵対する完全な国粋主義で、もちろん人間的に利己主義な勢力をすべて出し抜くことを提案した。広域的で包括的な計画を進化させていて、彼の願う進展はこうだった。

 まずは、既存の〈チャリングクロス鉄道〉に、完全に非現実的で敵対的な派閥争いを抱えた〈ディストリクト鉄道〉と〈メトロポリタン鉄道〉で構成される既存の中央環状線が加えられねばならない。すべてがうまくいけば、クーパーウッド、ステイン、ジョンソンがこの問題の鍵を握ることになるが、中心はクーパーウッドだった。

 次に、〈ディストリクト鉄道〉と〈メトロポリタン鉄道〉の支配権を掌握したと仮定し……状況に応じて自分の鉄道設備建設会社と合併させるかさせずに……この全てを支配する〈ユニオン交通地下鉄会社〉を設立するつもりだった。

 さらに、今の仲間の誰も知らないが、アビントン・スカーからは〈ベーカーストリート&ウォータールー鉄道〉のチャーター権、また、〈チャリングクロス鉄道〉と同じような状態にあると聞きつけた〈ブロンプトン&ピカデリー鉄道〉のチャーター権、その他からも特定の他の路線や有望な路線やチャーター権、を買収するつもりだった。

 これらを確保しておけば、〈ユニオン交通地下鉄会社〉の全資産や、彼が個人的に取得するつもりでいたチャーター権や鉄道を含む、〈ロンドン地下鉄総合会社〉を作ることができると感じた。これは完全な都市の交通システムを提供すると同時に彼の資産なので、彼個人に支配権を与えるのである。ちなみに、最終的にこの巨大資産の会長職に公然と就任できなくても、少なくとも、彼がその影の支配者だとは認められるだろう。また、もし自分の取締役を置けないのであれば、運営にあたる者がこの資産を傷つけることが何もできないように準備をするつもりだった。

 そして、最終的にすべてがうまくいけば、莫大な利益をあげて静かに自分の持ち株を処分し、その後はできるだけうまくやれるよう会社に任せるつもりだった。彼は事業の創立者だけでなく建設者として権利を確立し、シカゴのダウンタウンのループでそうしたように、自分の才能の足跡を残すことになる近代的で包括的な大都市のシステムをロンドンにもたらすのである。後に彼は自分の富を使って、アートギャラリーを維持し、慈善団体を作り、昔考えていた病院を建設することができ、同時に自分が恩義を感じたすべての人に疑いなく満足に報いることができた。その夢が彼をそそのかした。彼の見立てでは、すべてをやりとげるには、早くて二、三年、遅くても五、六年を要した。

 しかし、この計画に関係する彼の精神的、肉体的活動のすべてを追うことは、手品師のすばしっこくて混乱を誘う思考、トリック、動作を追うのと同じだった。もちろん、ジョンソンとステインとの交渉が主なものだった。ベレニスとの和解直後にジョンソンと話をしたところ、以前よりも随分協力的なことに気がついた。ジョンソンとステインはクーパーウッドの留守中にこの問題を随分検討したと言ったが、ジョンソンはステインがいるときにこの結論を伝えたがった。

 ほぼその直後にバークレー・スクエアであった別の話し合いの場でこれは終了した。そこは商談というより親睦に近い雰囲気だとクーパーウッドは気がついた。クーパーウッドが到着したとき、ジョンソンは引きとめられていて、その場にはいなかった。すぐにステインの態度が明るいことに気がついた。ステインはアメリカの情勢を尋ねた。あちらの選挙はどうなるのでしょう、ロンドンは楽しいですか、被後見人のフレミングさんはお元気ですか? それにお母さまは? クーパーウッドさんもご存知かもしれませんが、結構頻繁にプライアーズ・コーブを訪れているんですよ。親子そろって何て魅力的なんでしょうね。ステインはそんな話をしながらクーパーウッドの顔色をうかがい、上手に間をおいた。クーパーウッドはその要求に応えた。

「きっと、あなたはあの二人と私との関係が気になっているんですね」彼は穏やかに言った。

「実は、カーター夫人とは長年の知り合いなんです。夫人が私の遠縁の者と結婚し、その者が私を遺言執行人と親代わりの後見人に指名したのです。当然のことながら、私はベレニスが大好きになりました。とても才能のある娘ですからね」

「私も見てそう思いました」ステインは言った。「プライアーズ・コーブがカーター夫人親子に気に入ってもらえてよかったです」

「ええ、二人とも確かにあそこを理想的な場所だと思っているようです。本当に美しいですね」

 幸い、この時、ジョンソンが到着して会話が個人的な方向に行くのを止めた。慌ただしく現れ、やむを得ない用事で引きとめられたことを詫びて、クーパーウッドの健康を気遣ってから、みんなが待ちわびる重役の態度をとった。そして彼の口からこれまでに行われたことのすべてが、現状を振り返りながら、簡潔に力強く説明された。ロンドンの地下鉄分野へのクーパーウッドの参入計画は確かに大騒ぎを引き起こしたとジョンソンは言った。一部の例外はいたが、旧ループ会社両方の取締役も株主もクーパーウッドに反対だった。

「どうやら、クーパーウッドさん、彼らはあなたのアイデアを引き継いで、自分たちでそれを実現したがっているようです。それが遅々として進まないのは、ただ一つ、彼らの間で合意が取れないからです。そして、もちろん」ジョンソンは目を輝かせて付け加えた。「それにかかる金額に少々動揺しています。彼らは、どうすれば自分たちが莫大な費用をかけずにそれができるのかわからないのです」

「そのとおり」クーパーウッドは言った。「まさにそれなんです。遅れるにまかすのが一番高くつくんです。果敢に取り組めば、魅力的な予算内で仕上げられる工程表もここにあります。遅れと議論は、投機家と山師を引きつけるだけです。あいつらは出回っているどんな株でも運営権でもオプションを積み上げて、値上がりを狙って保有する連中ですから。だからこそ、一刻も早く合意に達することが重要です」

「とりあえず、私が理解するところでは」ステインは好意的に言った。「あなたの提案は、ジョンソンと私が〈ディストリクト鉄道〉と〈メトロポリタン鉄道〉の我々の株式を一元管理して、その上で〈ディストリクト鉄道〉か〈メトロポリタン鉄道〉のいずれか一社あるいは双方の五十一パーセントを買い付けるか、あるいはあなたが管理することになる何らかの事業協定のもとでまとめるというものですね」

「そうです!」クーパーウッドは言った。

「そして、それに対してあなたは、百年なり無期限の借り上げに、五パーセントの利息を保証することに同意する」

「そうです!」

「そして、その上で、あなたかその大きくなった会社が適切と判断して作った、親会社と合併させるかもしれない、すべての子会社の株式の十パーセントと一緒に、〈チャリングクロス鉄道〉の優先株の少なくとも十パーセントの先買権を、額面価格の八パーセントで提供する」

「そうです!」

「このすべて株式の権利は、会社が完全に出来上がった時点でのすべての会社全体の資産の第一順位の先取特権になるんですね」

「それが、私の提案です」クーパーウッドは言った。

「これには何の問題もないと言わねばなりません」と言いながら、ステインはジョンソンを見つめ、ジョンソンもステインを見つめ返した。

「要するに」ジョンソンはクーパーウッドに向かって言った。「いったん私たちが役割を果たしたら、あなたは古い路線と、確保できる新しい路線の両方を、最新のやり方で改修して設備を整えて、〈ディストリクト鉄道〉と〈メトロポリタン鉄道〉の現在の株式のすべての権利と、我々が八十で申し込みを決められる新会社か子会社の株式の十パーセントの全部も保証できるように、その全財産を抵当に入れることを誓うのですね」

「そのつもりです」とクーパーウッドは言った。

 再び、ジョンソンとステインは互いに顔を見合わせた。

「では」最後にステインが言った。「我々がきっと遭遇するいろいろな問題に出くわしても、私はできるだけ早く、全力で、自分の役割を果たすことを誓います」

「それでは私も」ジョンソンは言った。「喜んでステイン卿と一致協力して仕事にあたり、これを成功に終わらすために必要なことは何でもやりましょう」

「それでは、お二方」クーパーウッドは立ち上がりながら言った。「私はこの合意にたどり着けたことがうれしいだけではなく、光栄に思います。そして、私の意図が健全であることを示すために……もちろん、お二人がこの考えに同意していただけるならばですが……ジョンソンさんに私の法律顧問になっていただき、我々の間のこのいろいろな協定をまとめた書類をすべて準備してもらいたいのです。そして、その時が来たら」彼は二人に微笑みかけて付け加えた。「あなた方お二人には取締役として活躍していだければ幸いです」

「それに関しては、時間と状況が、決定を下さねばなりません」ステインは言った。「それに限りますよ」

「全力でお二人のお役に立ててうれしいです」ジョンソンは付け加えた。

 三人とも、互いに祝辞を述べ合うことになってしまったこの改まった雰囲気に少なからず気づいていたが、ステインが古いコニャックで別れの一杯を申し出たことですぐに和らげられた……このコニャックのケースは、事前に断りを入れずに、彼がセシルのクーパーウッドの部屋に運び込んでおいたものだった。

 


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