第47章
一方で、九月下旬の四日間、ベレニスはトレガサルの絵のように美しい歴史的なものの数々を楽しんでいた。ステインは、隣接する地所に住む楽しくて面白い夫婦のロバート・ウォーラー夫妻と、この地域のとても重要な漁業団体の一つの裕福な顔役で、ずいぶん前に商人から紳士階級になっていたウォーレン・シャープレスをゲストに迎える手配をしておいた。この三人はカーター夫人をもてなす手伝いをするためにいた。
そして、ステインは自分について説明したとおりに、資金の流用を、自分のかなりの金融の利益と同等の立場に置く目立った傾向がある印象をベレニスに与えた。別の言葉で言うなら、彼は儲け方を心得ていた。トレガサルは湿地の広大な台地であり、ところどころが、森林かこの西海岸の粘板岩の岬か浜辺に続いていて、ステインは自分の領地と州の見所に対する熱い思いでいっぱいだった。ステインは、できるかぎり二人っきりになりたかったベレニスに向かって、石の円と線を指さした。それはおそらくドルイド教か他の初期の宗教に由来し、特定の場所で謎めいた明らかに先史時代の雰囲気を彼の地所に与えた。また、ローマ時代以前の銅や錫の鉱山や、マウントベイ、セントアイヴス、ペンザンスから出航する大がかりな漁船団や、自分の領内の内陸の村のいくつかで暮し、その中にはほとんど忘れられた言語を今も話す者がいる高齢で原始的な人々について語った。マウントベイには彼のヨットが停泊し、見たところ、十数人のゲストを楽しませるのに十分な広さがあった。そして、トレガサル台地の一番高いところからは、英仏海峡もセントジョージ海峡も見渡せた。
ベレニスはやがて、ステインがこの奇妙な国を、その中にある自分の領地と変わらないくらい誇りにしていることに気がついた。ステインはここで、自分は領主であり、誰からも認められ尊敬されていると感じた。もし今、酔いがさめなかったら、彼は永久にここには戻らないのではないだろうか、とベレニスは思った。しかし、ベレニスにとって、これはそれほど魅力的ではなかった。光景としては称賛するが、少し寒々としすぎるし、未開でありすぎた。トレガサルの本館は、長く、灰色で、地味であり、内装の装飾の格調の高さでベレニスに高く評価されただけだった。明るいカーテンと敷物、古いフランスの家具、フランスとイギリスの絵画、モダンな照明と配管があった。歴代の伯爵が百五十年以上かけて収集し、立派な愛書家の宝庫となっている書庫には感銘を受け、少し圧倒されさえした。
ヨットの一日と、崖の下での海水浴とピクニックの一日を含むこの訪問を通してベレニスは、快適さと物質的な完璧さに対するステインの愛情と奇妙に対照的な、ある種の無骨な素朴さにさらに感銘を受けた。ステインは木の枝で六回以上懸垂してみせるほど強靭だった。また、泳ぎも上手だった。ベレニスが疑いと驚きでしか見られない大波や砕波の奥深くに、わざわざ向かって行った。ステインは、自分を喜ばすすべてのことに関わるベレニスの反応を知りたくて絶えず質問し、一致と思えるあらゆる意見を熱烈に歓迎し、二人がいつか将来行うかもしれないことを提案して、彼女の滞在中ずっと忙しくしていた。
それでも、ステインは魅力的であり、クーパーウッドと彼の不誠実さへの当てつけとしてこの時は興味があった。しかし、よくよく考えてみると、ステインにはクーパーウッドにある燃えるような力が欠けていると判断した。彼には偉業や実力につきものの後光がなかった。彼はむしろ、創造の慌ただしさや激しい輝きの中で偉大な人物に付きものに思える、魅惑的なファンファーレや大騒ぎとは無縁な地位を求める静かな野心家だった。そして、この意味では、ベレニスは今でも、そしていつまでも、クーパーウッドに支配されるのだろう。クーパーウッドは不在で、しかも他の女性に興味を持ち、離れていたために彼という人がわからなくなっていたが、それでもベレニスがステインのあまり嫌にならない、より穏やかな性格の魅力に感動していると気づいたその時でさえ、ベレニスの考えはクーパーウッドのことでいっぱいだった。結局、ベレニスがクーパーウッドの魅力をあきらめ、ステインか彼のような人物を捕まえることによって自分の社会的立場を根本的に是正する問題に専念する選択肢はなかったのだろうか? 少なくともある程度の安全を確保したいという願望は否定できなかった。自分が、イギリスに、それもクーパーウッドと一緒にいると知ったら、アイリーンが何をしてくるか、ベレニスは考えた。おそらく、知っているのだ。〈タウン・トピックス〉の記事を送ってよこしたのはアイリーンだとベレニスはほぼ確信していた。それに、母親の過去の生活は、どうすればもみ消せるのだろう? それでも、ステインのベレニスに対する愛情に疑問の余地はなかった。おそらく、特定の問題さえ隠し通すことができれば、ステインはベレニスと結婚するだろう。ひょっとしたら、たとえすべてを知っても、二人の互いの幸せに大きく仇なすことは隠そうとして、ベレニスを助けようとするかもしれなかった。
ある日の早朝、何エーカーもの荒れ地を疾走してから、ステインと一緒にトレガサルに駆け戻る間にベレニスは考えた。ステインは実際にどれくらい強く自分の階級の慣習を基準と中心にしているのだろう、自分が本当に大切に思う人を守るために、彼はどれほど多くの犠牲を払わねばならなくなるのだろう。




