第44章
ベレニスは、この関係を発展させることが賢明なのか確信が持てなかったが、クーパーウッドが戻るのを遅らせたことで、ある程度の進展があった。クーパーウッドはローナのことがあったから、迫りつつある大統領選挙が終わるまではロンドンに戻れないとすでに手紙を書いていた。もしすぐに戻れないようなら、呼び寄せるからニューヨークかシカゴで落ち合おうとも、ちゃっかり書き添えてあった。
この手紙は憶測を呼びはしたが、何の疑惑も生まなかった。ベレニスとステインの会話があった翌週に届いた、アイリーンに差し出された切り抜き以外は、何も生むことはなかった。ベレニスはある朝コテージの東側の寝室で、自分宛ての手紙に目を通していて、ニューヨークの自宅宛でこちらに転送されてきた一通のありふれた封筒を手に取った。中身は、ローナ・マリスの写真と説明と〈タウン・トピックス〉から切り抜かれた記事で、内容は、
今世間をにぎわしているちょっとしたゴシップの中に、世界的に有名な億万長者と彼の最新のお相手で、今をときめく人気ダンサーに関するものがある。聞くところによると、この話は極めてロマンチックである。とある中西部の都市で巨万の富を築き、若くて美しい乙女好きで有名なこの紳士が、辺境の街のひとつで、最高の美人にして今シーズンの最も有名な舞台のスターに出会って、たちどころに征服してしまったらしい経緯をお話しよう。このマエケナスほどの富と、たまたま興味を引いた人たちへ行う贅沢な出費や寄付などもある彼の評判は、同じくらい大きいが、女が舞台から引退してヨーロッパに同行するよう求められたのではなく、むしろ惚れた弱みで、男の方がここに残るよう説得されたようだ……彼は最新の事業に使う資金を調達しに最近ヨーロッパから戻っていた。ヨーロッパは呼んでいる。しかし彼の人生最大の経済活動は、この最新の美女の輝きを浴びるために中断された。シルクハットをかぶった楽屋口の男たちが無駄に待ちぼうけ、その一方で一台の自家用車が彼女を私たちが推測することしかできない喜びへと連れ去るのである。クラブ、レストラン、バーはこのロマンスの話題で持ちきりである。それにしてもこの結論は疑わしい。確かにヨーロッパをいつまでも待たせるわけにはいかないからである。見た、来た、勝った、とはこのことだ!
ベレニスは最初ショックを受けるというよりも驚いた。クーパーウッドは自分に夢中だったし、自分との交際にも仕事にも極めて満足しているように見えたので、少なくともしばらくは安全だと思い込んでいた。同時に、ローナの写真を見てすぐに、この最新のお気に入りを一段と生き生きさせている色っぽさに気がついた。これは本当だろうか? こんなにも早く別の相手を見つけたのだろうか? ベレニスはしばらくの間この身代わりを到底許すことができなかった。クーパーウッドがベレニスに、女性らしさの最高の資質をすべて備えたもの、すべての女性の中でもあなたは変動や競争を恐れる必要はない、と公言してからまだ二か月も経っていなかった。そしてクーパーウッドは、ローナ以外に彼をそこに留めるまっとうな理由もなく、このニューヨークにいた。おまけに、大統領選挙にかこつけたくだらない手紙まで自分に書いて寄こした!
次第に、怒りが膨れ上がった。ベレニスの灰色がかった青い目は冷ややかになった。しかし、最後に理性が救いに来た。自分に強力な武器はなかっただろうか? タビストックがいた。しゃれものでも、社会的には盤石で、親子でよく王室の催し物に顔を出すほどだった。他にもいた。ベレニスにとってこの新しい世界のたくさんのとても重要で魅力的な人たちの視線や良さがわかる目は「私をお忘れなく!」とはっきり言ってくれた。そして最後にステインがいた。
しかし、ベレニスのこういう最初の考えは、クーパーウッドに敵対するように見えたかもしれないが、そこに絶望はなかった。結局、ベレニスはクーパーウッドが大事だった。二人とも、お互いを通じてどれほど多くの本物の価値がすでに自分たちにもたらされたか、わかっていた。ベレニスは困惑し、傷つき、驚き、少なからず怒っていたが、反抗を目論むものではなかった。ベレニス自身は、自分の持つような愛情と気質が、クーパーウッドを昔の考え方ややり方から完全に引き離せるだろうか、とよく考えなかったのか? 自分にはできないことをベレニスは認めていた。もしくは半分確信していた。ベレニスの望みはせいぜい、この二人の資質と関心の組み合わせが、両者を魅力的な関係に、少なくとも有益な関係に保てればいい、というものだった。そして今、こんなにも早く、すべてがすでに破綻してしまった、と自分に言わねばならないのだろうか? クーパーウッドだけでなく自分の将来を考えると、これを認めたくなかった。すでにあったことが、あまりにもすばらしすぎた。
すでにベレニスはステインに招待されたことをクーパーウッドに書き送り、返事を待つつもりでいた。しかし、この特別な証拠が目の前にある今、クーパーウッドに対する最終判断がどうなろうと、ベレニスはステイン卿の招待を受けて自分に向ける彼の熱意を高めることにした。クーパーウッドのことをどうするかは、その後で決めるつもりだった。ベレニスは、ステインが自分に示した関心がクーパーウッドにどんな影響を与えそうか、に特に関心を持っていた。
そして今度はステインに、母親はかなり回復し、転地でいい効果が出そうな状態になったので、数日前に届いた二度目の招待を喜んで受ける、と手紙を書いた。
クーパーウッドには手紙を書くのをやめることにした。どんな形であれステインを相手に妥協したくなかったので、クーパーウッドとの決裂を招くことは何もするつもりはなかった。待って、自分の沈黙が相手に与える影響に注意していた方がいいだろう。




