第40章
クーパーウッドとアイリーンはニューヨークで定期船サクソニア号から降り立った。いつものように会見があった。新聞各紙はロンドンの地下鉄事業参入について発表されたクーパーウッドの意図を察知し、取締役、出資者、経営者は誰なのか、また、突如報じられた〈ディストリクト鉄道〉と〈メトロポリタン鉄道〉の普通株と優先株の大掛かりな買い付けは、本当に彼の部下にされていたものではなかったのかどうかを知りたがった。これは巧みな声明で彼に否定されたが、発表されたときは、大勢のロンドン市民とアメリカ人をにやりとさせた。
アイリーンの写真、彼女の新しい服、そして大陸の社交界に近いところに現れたことが紹介された。
そして時を同じくして、ブルース・トリファーはマリゴールドと一緒にノース岬を目指して出航していた。しかし、こっちはどの新聞も全く触れなかった。
そして、プライアーズ・コーブでは、ベレニスが地元で大成功を収めていた。自分の抜け目なさを、素朴、無邪気、伝統重視のベールでとても慎重に隠していたので、誰もが彼女はそのうちに立派で正当な結婚をするものだと信じ込んだ。明らかに、退屈な人、平凡な人、好色な人を避ける本能があって、男女を問わず伝統的な思考の持ち主だけを好意的に見ていた。彼女の新しい友人たちが見たところでは、ベレニスのもっと見込まれている特徴は、社会的に恵まれた環境で生まれながら何の楽しい配慮も払われない魅力的でないタイプの女性……無視された妻、オールドミス、行かず後家……を好むことだった。もっと若くて魅力的なもてなし役や女主人を気遣う必要がなかったので、こういう人一倍孤独な女性たちを味方にできたら、一番重要な催しにも参加できることをベレニスは知っていた。
幸い、完全に無害で付き合っても大丈夫な青年や、肩書や社会的名誉を持つ若い領主を好む傾向があった。実際、プライアーズ・コーブ周辺の数マイルにいる若い副牧師や教区牧師たちはすでに、この若くて新しい住人の崇高な洞察力に大喜びだった。安息日の朝、英国高教会の近所の礼拝堂のどこかで、自分の母親か年配の保守的な女性といつも一緒にいる彼女のおとなしい姿が、彼女について噂されるすべてを裏付けた。
偶然にも、クーパーウッドはロンドンの計画の件で、シカゴ、ボルチモア、ボストン、フィラデルフィアを飛び回り、アメリカの機関投資家、銀行や信託会社のうちでも最も信心深いところの奥の聖域で、最も利用価値があって最も影響力があり、扱いに一番困らない人たちと協議をしていた。そして、地下鉄の計画でこれまで得られた利益よりもはるかに大きくて永続的な利益が確実であることを説明するとき、彼の表情は淡々としていた。つい最近まで彼を公然と非難していた割には、畏敬の念、本物の尊敬の念さえ持って耳を傾けられていた。確かに、シカゴでは軽蔑や憎悪がつぶやかれたが、所詮は嫉妬だった。何しろ、この男は実力者で、相変わらず魅力的で、世間の注目を集める本物のまぶしい存在だった。
クーパーウッドは、ひと月という短い期間で、自分の主要な問題が解決されるのを目にした。すべての路線を引き継ぐために今、作られようとしている持ち株会社の株を購入する仮契約が多くの場所で結ばれた。引き継がれた路線の株式一株に対して、クーパーウッドの大きな会社の株式三株が支払われることになっていた。実際、シカゴの資産に関するいくつかの小さな話し合いがなかったら、本当は自由にイギリスに戻れたし、古くからお馴染みのタイプの新しい出会いがなかったら、そうしていただろう。過去にもよくあったことだが、名前が公衆の前に誇示されているときは、富、名声、個人的な魅力に耐えられない野心的で魅力的な女性たちに言い寄られた。そして今回はボルティモアを訪れなければならなかったために、この種の鮮烈な出会いがあった。
それは彼が滞在していたホテルで起きた。そして当時のクーパーウッドの考えでも、これは決してベレニスに対して彼が抱いた愛情に影を落とすものには見えなかった。それでも、真夜中、ちょうど〈メリーランド信託〉の社長宅から戻って、机でさっきの会話を書き留めていたところ、ドアを叩く音がした。返事をすると、親類の者だがお話がしたい、と女性っぽい声で告げられた。クーパーウッドは微笑んだ。すべての経験を振り返っても、確かにこんな言い寄られ方をされた覚えはなかった。ドアを開けると娘が一人いた。一目見て、無下にすべきではないと判断し、さっそく興味をもった。娘は若く、ほっそりしていて、背は中くらい、自信家で、力強さがあり、魅力的だった。顔立ちもドレスも美しかった。
「親類なの?」微笑みかけ、入るのを許しながら言った。
「そうです」娘は極めて冷静に答えた。「すぐには信じてもらえないかもしれませんが、私はあなたの親類です。あなたの父方の兄弟の孫娘にあたります。名前はマリスです。母の名がクーパーウッドでした」
クーパーウッドは娘を座らせて、自分はその向かいの席についた。娘の大きくて丸い銀色がかった青い目が、揺るがぬ決心で彼を見すえた。
「出身は国のどちらですか?」クーパーウッドは尋ねた。
「シンシナティです」娘は答えた。「でも、母はノースカロライナで生まれました。母の父親はペンシルバニア出身で、あなたの出身地からそう遠くありません、クーパーウッドさん。ドイルズタウンです」
「確かに」彼は言った。「私の父には、かつてドイルズタウンに住んでいた兄弟がいました。それに、私が付け加えてよろしければ、あなたはクーパーウッド一族の目をしています」
「ありがとうございます」娘は返事をして、相手が自分を見るのと同じくらいじっと相手を見続けた。それから彼の視線に臆することなく続けた。「私がこんな時間にここに来たことを変に思うかもしれませんが、私もこのホテルにとまっています。私はダンサーなんです。一緒にいる仲間が今週ここで公演をしています」
「こんなことがあるとはね? 我々クエーカー教徒は不思議な分野をさまようようですね!」
「はい」娘は答えて温かく微笑んだ。その微笑みは控えめでありながら満ち足りていて、想像力、ロマンス、精神的な強さ、色気を連想させた。クーパーウッドはその特徴をたっぷり観察するだけでなくその力まで感じた。「さっき劇場から帰ってきたばかりなんです」娘は続けた。「でも、ここの新聞であなたの記事を読んで写真を見て、いつもあなたのことを知りたいと思ってましたので、今来た方がいいと決心したんです」
「あなたは優秀なダンサーなんですか?」クーパーウッドは尋ねた。
「見に来て自分で判断してほしいわ」
「私は朝のうちにニューヨークに戻るつもりでしたが、私と一緒に朝食をとるつもりがあるなら、滞在を延ばしてもいいと思います」
「ええ、もちろんご一緒します」娘は言った。「だって、自分がこうしてあなたと話している姿を何年も想像してきたんですもの。二年前に一度、何の仕事にも就けなかったときに、あなた宛の手紙を書いたんですが、結局破りました。だって、うちは貧しいクーパーウッド一族なんですもの」
「その手紙を出さなかったことが悔やまれます」彼は言った。「私にどんなことを伝えたかったんですか?」
「私がどれほど優秀であるかとか、あなたの甥の娘であることです。それと、もしチャンスが与えられたら、立派なダンサーになる自信があるとか、です。今は手紙を出さなくてよかったと思ってます。だって、私はここで今あなたと一緒にいますし、あなたは私のダンスを見ることができるんですもの。ところで」娘は魅力的な青い目でずっと相手を見つめたまま続けた。「夏にニューヨークで公演があるんです。そこでもお会い出来ればいいですね」
「もしあなたが見かけどおりのすてきなダンサーなら、評判になるはずだ」
「明日の夜、あなたにそう言わせてみせます」娘は行動するかのように少し動いたが、そこで躊躇した。
「名前の方は何ですか、言いましたっけ?」彼は最後に尋ねた。
「ローナです」
「ローナ・マリスか」彼は繰り返した。「芸名も同じですか?」
「ええ、一度、クーパーウッドに改名しようと思いました。そうすればあなたのお耳に入るかもしれませんから。でも資本家にはいいけどダンサーには向いてないと判断しました」
二人は互いに見つめ続けた。
「あなたは何歳ですか、ローナ?」
「二十歳です」と簡単に言った。「十一月に」
その後に続いた沈黙は思惑でいっぱいだった。目は、目が語れるすべてを語った。さらに数秒後、クーパーウッドはただ指で合図を送った。娘は立ち上がってすばやく彼のところに来た。そうする間は、まるでダンスをしているようであり、クーパーウッドの両腕の中にその身を投じた。
「美しいね!」クーパーウッドは言った。「こんな風に来てくれるなんて……すてきだ……」




