~未改稿~
7月27日 払暁
夜明け前の品川駅上空を光太郎と3羽のツバメがJRの線路に沿って北上していた。
昨晩は川崎市庁舎の高層ビルで羽を休めたが、眼下の川崎市街は道路と建物を問わず至る所に緑の小山が出現しており、それらを避けるように救急車やパトカー、自衛隊の装甲車が赤色灯を煌めかせながら巡回していた。川崎球場の辺りからは大きな火の手が上がっており、煙が空高く登っているようだ。光太郎には分からなかったが、川崎球場にはあの日、機内から大木を何本も生やしたジェット旅客機がバランスを失い墜落していたのだ。
品川上空を過ぎて東京都心に近付くにつれて街並みは緑の小山が目立ってきている。地上の道路は川崎市街と同じように所々緑の小山に寸断されており、高速道路も同じ状態だ。盛んにヘリが煩く飛び交っている。
光太郎は夏乃の身を心配しながら永田町上空にたどり着くのだった。
同日午前9時頃【東京都 千代田区永田町 首相官邸】
首相官邸の入口を警戒するSPの視線が上空から降りてくる3羽のツバメを捉える。
最近はドローンやラジコンでのテロが警戒されており、実際に官邸の屋根にドローンが不時着した事も有った。あの時の警備係は殆どが対馬や与那国島の派出所に最前線配置されたんだよな、ブルッと気持ち震えたSPは真っ直ぐこちらに向かってくるツバメに不審感を抱く。
光太郎は警備のSPがこちらをしっかりと捉えて警戒しているのを視ると一郎ツバメに、
「入口から少し離れた黒塗りの車が止まっている所でヒトになった方がいい」と告げる。
3羽のツバメは首相官邸の公用車が多く停まっている間に降りてゆき、地面に脚を着けると同時に光を発しながら3人の老人に変身した。光太郎は一郎の手に軽く握られている。
「じゃあ、行こうかの?」
気軽に喫茶店にでも行くような気楽な声で久島一郎は他の二人と光太郎に声を掛ける。
「それは無理でしょ」
半ば諦めの境地で光太郎は念話で一郎に応えた。
官邸前の駐車場を多数のSPと私服警官、自衛隊員が包囲して一郎達に銃を構えていた。
ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m