世界の復興に向けて
9月5日【米国 フロリダ州 ケープカナベラル空軍基地内 NASA(アメリカ航空宇宙局) ケネディ宇宙センター】
その日、バリーは中国の宇宙ステーションが軌道を外れたと聞いて真っ直ぐに駆け付けたセンターの個室で、ポピガイの呟きをキチンと聴いていた。
「ポピガイっちの奴、死に急ぎやがってっ」
クシマと同じくバリーにも彼の焦りの気持ちや動機はよく分かっていた。
だからヨーロッパまで加勢に行かず、シュタインハイムやメルトリンガーに対応させていたのだ。
バリーが一番心配しているのは、これ以上の''訪問者''が現れる事だった。
案の定、ポピガイのやり方を”生温”いと思うマヤの魔女チクシュループ婆が乱入してきた。
もっとも、ポピガイのデブリ攻撃が無ければ、パナマ運河の近くで永い眠りについていた婆を起こす事も無かったのだが……。
「あの婆は手強すぎるなぁ……」
遠い目をするバリー。
本当に敵対して来たら、それこそ人類滅亡もあり得るかもしれない。
チクシュループ婆が6500万年前、地球に来たとき「恐竜は絶滅」してしまったのだから。
バリーは憂鬱にならざるを得なかった。
フロリダ州にはカテゴリー3の嵐が近付いていた。荒れそうだな。バリーは覚悟した。
9月10日午後7時【東京都 千代田区 永田町 首相官邸 会議室】
「まさか、世界がこの様な有り様になるとはな」
日向首相が慨嘆して言った。
モスクワが壊滅し、ロシア連合と休戦条約が結ばれた事を受けて再びG8が開かれる事になった。
第三次世界大戦により世界の分割統治は若干変更する事となる。
まず、ヨーロッパはポーランドから西側とバルト3国が、英国、フランス、ドイツの影響力に応じて統治される。
混乱していた南欧もフランスとドイツがギリシャまで統治することになった。
ロシア連合共和国がポーランドから東側のウクライナ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、スロバキアを併合して統治を行う。南はジョージアを併合してトルコ国境までだ。
「……これが妥当なとこか」
欧州地図を見渡すとリンドバーグ英国首相が言った。
「我が国は生産力が地獄の底まで落ち込みましたので……」
マリノフスキー ロシア連合共和国大統領が澄まし顔で応える。
「これ以上の統治範囲拡大は逆に国力が下がりますわ」
フランスのマリー大統領も賛同した。
「アフリカは残念だが、手の施しようがない。」
ドイツのレンバルト首相が言う。
「多くの友好国を見捨てる形になりますが、自国の再建がままならない限りどうにもなりませんわね」
マリノフスキーが応じる。
「ワシリーナに同感だ。南アジア、中東や南米地域は無法地帯になるが致し方ない。我々に残された力は小さいのだ」
ペンス米国大統領も応じた。
トルコはエルドー政権が統治するが地域防衛軍としてNATO軍が再び駐留する。
この地域のロシア連合軍はアルメニアまで退却している。
中東はイスラエルがシリア、チグリス川西岸までのイラク領土、ヨルダン、リビア、スエズ運河までのエジプト領土、イランが存在した地域まで大幅に勢力圏を拡大したが、それらの地域は第5次中東戦争の影響で放射能汚染が酷く実際には統治不可能だった。
この地域は実質的にイスラエルと諸外国との間に拡がる緩衝地帯となるだろう。
「これでユダヤロビーはワシントンに居なくて済むだろう」
ペンス大統領が自嘲気味に言い、リンドバーグ首相も苦笑した。
「……我が国近隣ですが」
日向首相が他の首脳に情勢を説明していく。
アジアは台湾と上海政府が主体となって中華共和国が誕生したが、内陸部や東北部といった広大な地域を弱体化した中央政府が統括するのは困難と思われる。おそらくは地方派閥が自然淘汰的に緩く治めていくだろう。
チベット、ネパール、新疆ウイグル自治区は1つの政治統合体となり、緩やかな国家連合として再出発する見込み。
中国東北部から北京にかけては、ロシア連合共和国に併合され、瀋陽自治区となった。
「中国の核はロシアが引き取ります。元はロシア製の廉価版ですから」
マリノフスキーが無表情に言い放つ。
日向首相を始めとする各国首脳は無言で頷く。
朝鮮半島は北朝鮮共和国と大韓民国が緩やかな国家連合として高麗連邦となった。
高麗連邦の核兵器保有は日米英の強い反対により禁止され、核施設には日本と豪が駐屯して管理、廃棄監督をする事になった。
南アジアはオーストラリアがインドネシアを併合。
ベトナムはフランス支援の下、カンボジア、ラオス、ミャンマーを併合。
日本国はオーストラリア、ニュージーランド、中華共和国と集団安全保障条約を締結し、JACN(日豪新中連合機構)が発足。事務局本部は東京に置かれる事となった。
世界はアフリカ・インド・アジア地域が壊滅して無法地帯となる一方で幾つかの勢力圏に別れて地域の復興に力を注ぐ事となった。
「さて、国連はどうしますか?」
日向が最後に各首脳に問う。
「G8の連絡調整機能はシェルパで対応可能だ」
オーストラリアのレントン首相が否定的な意見を口にする。
「世界規模の復興が成されない限り、問題解決機能のない組織は必要ないだろう」
カナダのトルドー首相が支持した。
「では、そう言う事にしよう」
ペンス米国大統領が宣言する。
こうして国際連合は公式声明や発表が有るわけでもなく自然消滅した。
国際連合の数多の下部組織は必要と判断した部署のみが各国麾下の復興機関として存続したのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
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