生存者
【東京都 渋谷区 渋谷センター街】
光太郎が久島一郎のご褒美を空中で満喫?していた頃、二郎と三郎は自衛隊衛生学校の教官達と「渋谷センター街 森林公園」に来ていた。
此所は審判の日」に樹木化した人々を根本ごと移し替えた公園である。
未だ人の意識を保つ人間を捜索する手伝いを二郎と三郎はしていた。
「おぉ~い、生きてるかのう」
二郎が傍に立つ若い樹木にそっと手を充てる。
「うっさいジジイ、どこ触ってんだよキモい!このセクハラジジイ!」
口の悪い少女の声が聴こえた。
「何かやりたいことはあるかのぅ?」
二郎が少女の樹木に尋ねる。
「はぁ?!あんたウチに奢ってくれんの?ウケる~w」
「ちょっと夜寒いからパーカー欲しいんだけど買って? お・じ・さ・ま♪」
「欲にまみれておるのぅ」
二郎がそっと手を離すと、少女の樹木がドロッと溶けてしまった。
「何をしているのですか!樹木でも国民だったんですよ!」
憤る衛生学校教官。
「儂はなんもしておらんよ。こやつが勝手に蕩けただけのこと」
足元の液体を見て答える二郎。
「欲望が肥大すると暴走して生き物の枠が外れてしまい、ああなるんじゃ……」
少し寂しそうな顔で二郎が衛生学校教官に説明する。
彼らは少女のなれの果てに合掌しながら、二郎の説明を真剣に聴いていた。
「ほう!おぬし軍人じゃと?」
二郎から少し離れた場所で若い樹木に手を充てていた三郎が声を上げた。
「は、自分は陸上自衛隊 練間駐屯地、第23普通科連隊所属、林 三郎 2曹であります!」
心なしか樹木の枝の一部が敬礼したかのように僅かに動く。
三郎の後ろで視ていた衛生学校教官が目を瞠る。
「こんな所で何しとるんじゃ?」
「自分は夜勤の休息時に詰所のテレビであの変なニュースを見てしまい、あのニュースが忘れられないまま、夜勤明けに買い物に来たら突然こうなったのであります」
「これからどうしたいのじゃ?」
「自分はもともと身寄りもなく、児童養護施設で世話になりました。駐屯地でも仲間に助けて貰いました。出来ることならば、皆に恩返しがしたいであります!」
「分かった。しばらく安心して休んでおれ。また後での」
三郎は後ろにいた衛生教官に合図する。
教官達は感涙を隠しながら戦友の樹木を根本からそっと持ち上げると、柔らかい土が敷き詰められた自衛隊トラックの荷台に載せた。
その日、二郎と三郎は「いつものように」自衛隊衛生学校の教官達と、渋谷、新宿、池袋、上野、銀座に出来た新しい森を廻って、植人の生存者を探して救出していくのだった。
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