実験の成功
【東京都 千代田区 永田町 首相官邸 裏庭】
御池が光太郎の研究に加わり、久島兄弟と共に師匠として光太郎を厳しく鍛えて1か月が過ぎた。
光太郎の身長(樹高)60cmまで伸び幹も3cmを超え、しなやかだがしっかりとした苗木になった。
能力も成長し、シールドと物体移動も半径5mに拡大した。
今では鉢植えの状態でフワフワと浮遊しながら夏乃と官邸の周りを散歩出来るようになっていた。
久島兄弟、御池両師匠の厳しい指導により、透視の能力は芽吹かないよう厳重に監視・封印されている。
少しでも光太郎が視力を高めると、弓矢に加えわさび醤油やラー油がどこからともなく飛来して鉢植えに命中する事になっており、お目付け役でもある久島二郎と三郎は光太郎のお仕置き係となっていた。
そして思念の言語化研究はいよいよ1つの成果を挙げようとしていた。
「それでは実験を始めます!」
島原所長が厳かに、須賀官房長官、久島兄弟、御池に告げる。
裏庭の真ん中に置かれた鉢植えとなっている光太郎の左右の腕(枝)には、軽い皮素材のベルトが巻かれて細いコードが50cm程先の台に置かれた直径12cm程のスマホに似た機器に接続されている。
やがて、島原所長が、「それでは、どうぞ!」と合図をする。
離れた場所に設えられた簡易更衣室から白いワンピースとお洒落なサンダルを履いた夏乃が姿を現した。
『夏乃さん!とっても綺麗ですっっ!』
スマホに似た機器からややボカロイド気味ではあるが、光太郎の優しくどこかおっかなびっくりな声が響いた。
「言語化実験に成功しました!」
感激の面持ちで須賀達に島原が宣言すると、裏庭に詰め掛けた研究者達から歓声が上がった。
「ま、まあ。それは良かったですね」
呆気なく成功した実験に感涙する研究者達を見て、ちょっと異様な盛り上がりに引いている須賀官房長官。
「……光太郎さん。ついにやりましたね!」
感動のあまり言葉を詰まらせて喜びに顔を輝かせる夏乃が鉢植えに話しかける。
『これで中身も視れたらなぁ~』
心からの''光太郎の声''が裏庭に響いて喜びに沸いていた裏庭がしんと静まり返った。
「はぁ?」
夏乃は光太郎鉢植えを汚物を見るような絶対零度の目で一瞥すると、さっさと官邸の中に戻って行ってしまった。
「……ほほほ。なかなか正確な装置じゃな?」
呆れた顔で一郎が、何とも言えない表情をしている須賀に言った。
二郎と三郎は腹を抱えて笑っていた。
この装置は思念を捉えるため''思った事がそのまま''言葉に変換されてしまう、何とも''正確過ぎる''機能だった。
「orz………」
植人と会話可能な装置の開発に成功した研究チームが再び歓声を上げていた裏庭の隅では、夏乃にそっぽを向かれた光太郎鉢植えがげんなりと塩を振られた様に萎れて哀愁を漂わせているのだった。
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では、また(^^)/




