裏庭にて
【東京都 千代田区 永田町 首相官邸 裏庭】
首相官邸裏庭は、面積が小さいものの、陽当たりが良く、ちょっとした息抜きに最適な場所で、官邸職員の間では密かな人気スポットだ。
しかしその人気スポットは、とある苗木の為に、貸しきりとなっていた。
光太郎は鉢植えからこの裏庭に植え替えられて、今朝は夏乃からスポーツドリンクを含んだ水をジョウロで根本にかけてもらいながら、鼻歌交じりに気持ち良く根を伸ばしていた。
光太郎の左右の枝にはそれぞれ電極コードが繋がれていて、官邸内窓際に設置された分析機本体に接続されている。
分析機本体は、嘘発見器を応用して作られており、光太郎の感情が激しいとブザーが鳴る様になっていた。
余りに耐え難い苦痛になると、サイレンまで作動するようになっている。
そして、夏乃の水やりが終わってからその分析機は盛んにブザーを鳴り響かせていた。
「止めて~吸わないで~」
ビーッ、ビーッ。
アブラムシが取りついて、光太郎の枝葉から樹液を吸っていた。光太郎の感覚からすれば、果てしない献血である。
「痛いっ、千切れる~!」
ビビッ、ビーッ、ビーッ。
青虫が光太郎のみずみずしい葉っぱをかじる。
「ちよっ、くすぐったい!鳥肌が立つ~」
ビッ、ビビッ、ビーッ。
蟻の隊列がアブラムシに向かう。
スズメの一団が光太郎苗の周囲で砂浴びをしたり、細い枝に何羽も留まってチュンチュンさえずる。
「ええい!やかましいわー!」
ヴウーーン。
サイレンが盛大に鳴り響き、分析機が火花を発して沈黙した。
「堪え性のない男よのぅ」
一郎が呆れ、二郎と三郎は笑い転げている。
「光太郎さん、頑張ってね♪」
夏乃が励ます。夏乃の白いワンピースと太股が太陽より眩しい。
絶対に今度は透視能力を身に付けたいと光太郎は本気で思うのだった。
ここまで読んで頂きいつもありがとうございますm(__)m




