一郎の懺悔
【東京都 千代田区 永田町 首相官邸】
「やはりこうなったか」
日向が嘆息して久島兄弟を見た。
「まるで先日の儂らみたいじゃのぅ」
久島兄弟がふぉっふぉっと笑う。
「誰だってああいう反応になるわい。まったく、儂らの仲間は昔からそういう所は変わらんのじゃ」
久島一郎が苦笑する。
「これからどうなると思いますか?」
日向が訊ねる。
「今の状況は人類側に立つもの、あくまでも自然淘汰を望むもの。それと――――――」
一郎が言葉を少し切る。
「人類同士で争わせて勝者の側で強い種を進化させようとする者達じゃ」
一郎が苦い顔で言った。
「最後の選択じゃと多くの植人が為す術もなく命を失ってしまうじゃろ。何のために、多大な犠牲を払って新しい''種''を誕生させたのか分からん事になってしまう」
そこで久島は日向に1つの真実を語る。
「植人と言う存在は、ケルトの奴が地球の生命に合った進化の形を模索して造り出した理論の産物じゃ。
お前さん達ではヴォイニッチ手稿と言ったの?あれがケルトの研究論文であり、古からの火星と地球文明の集大成とも言うべきものじゃ」
「ケルトはひとえに人類のより良い進化を心から望んでおる。儂と同じようにな」
一郎の説明に驚きで言葉が出ない日向首相。
日向から視線を外して外に目を向けて一郎が語り始める。
「……儂が屋久島の縄文杉になる遥か前、太平洋には大きな大陸が在っての」
「自然と科学の調和を目指した文明が在ったのじゃ。確かムー王国じゃったか」
「その文明はたいそう栄えての。''もう1つの文明''とは正反対な考え方じゃったから、自然と対立する形になったのじゃよ」
「じゃがある日、もう1つの文明が栄えていた大陸にケルトが落っこちての。一晩で沈んで滅んでしまったのじゃ。ケルトはたいそう落ち込んで、一緒に海の底に沈んで眠ってしまったのじゃ」
「それに安堵したこちら側の文明はますます発展したが、やがて他者を侮って傲慢となり自らを律する事も出来ずに自然との調和も疎かになっていったのじゃ」
「宇宙からそれを見ていた儂は、ケルトの嘆きも耳にしてな。あまりな無念さに少し腹を立てての。ムー王国の奴等に、ちょっと一言言ってやろうと太平洋の大陸に降りたのじゃがのぅ。儂の重さで太平洋に沈んでしまったのじゃ」
あんまりな展開に空いた口が塞がらない日向首相。
「儂も結局は、ケルトと同じ過ちを犯したのじゃ。じゃから、お前さん達に手を貸そうとしておるのじゃ」
一郎は苦しそうな顔で日向を見た。
日向は頭を振って気を取り直すと一郎を見る。
「私達日本国は先日の話で得た結論といささかも変わりない」
一郎は日向に深く頭を下げた。
やがて須賀官房長官がワシントンとロンドンからのホットラインが入ったと伝えに来るのだった。
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