G8サミット
7月29日GMT(グリニッジ標準時)7:00
「審判の日を乗り越え、再び皆さんと話す事が出来てこんなに嬉しい事はありません」
ペンス米国大統領が何百回と使い回したセリフでモニターの向こうに居る各国首脳に話し掛けた。
「そして今回はクリミア以来となりますね、イェシカ大統領閣下」
ロシア大統領は僅かに頬を緩ませて頷く。
「人類全体の危機が未だ続く中、かつての対立構造は審判の日を境に意味を為さない物になりました。我々は前に進まねばなりません」
「故に、アメリカ合衆国はロシアへの経済制裁を全て解除します。生き残った人々が必要な物資をお互いに融通する事も大切です」
ペンス大統領の発言の後は、粛々と各国から各地域の状況報告と対策がペンス大統領主導のもと、話し合われた。
シェルパ会議での擦り合わせ通りに、G8による世界の分割統治が正式に決まっていく。
G8首脳による世界分割統治の話し合いが大筋で合意に達し、首脳達の間に弛緩した空気が漂った。それを察した日本の日向首相が休憩を提案し、暫しモニター越しに軽食を取りながら歓談する事になった。
「実は先日面白い来客があってね」
コーヒーの入ったカップを片手に寛ぐペンス大統領が話し始める。
「なんとヒッチハイクの男性が長距離トラックごと、ホワイトハウスの正面玄関に乗り付けたんだ」
くつくつと思いだし笑いを堪えながら楽しそうに語るペンス。
「警官やSPによる銃撃や、攻撃ヘリの対戦車ミサイルも全てバリアーで跳ね除けて平気な顔で玄関に降りたってね。平気な顔で『アリゾナからここの偉い人に会いに来たんだけど?』ときたもんだ」
「仕方無いからオフィスに通して話を聴くと、自分は大昔にアリゾナに落ちた隕石で火星から来たと言うんだよ。普通なら、与太話でその場でSPに射殺されてもおかしくない」
「だが、彼は審判の日に樹木と化した国民と会話出来るんだよ。驚愕したね」
「彼が言うには、樹木になった国民は人間に無い能力を持っているから、お互いに共生してはどうかと提案してきたよ」
そこまで語ったペンスは、スクリーンを見回して各国首脳の反応を窺う。
「どのような姿になろうが樹木と化したとしても国民である事に変わりはないと思います」
日向が発言した。
「彼らは植人と言うそうだ。植物と人間の融合体で、意思の疎通は相手に触れて思念を流せば普通に話せるよ。
それと、言い忘れていたが我が国にも鳥の姿で首相官邸にやって来た老人達が居てね、彼らは植人達の面倒を見てくれる事になっている」
日向の発言に各国首脳の反応は動じない意外なものだった。
「奇遇ですな。クレムリンにもシベリアから歩いてきた漁師と農夫が訪ねて来ましたよ」
イェスカがニヤリとしながら応じた。
「ほう、うちには可愛らしい男の子と老人が連れ立って官邸の食堂に突然現れてサンドイッチを注文されて唖然としましたな」
笑いながらカナダのトレドー首相が続いた。
「うちの客人はザワークラウトが気に入っておりますな」
とドイツのレンドルフ首相。
「この中で変わった来客に出会わなかった首脳が居るのかしら?」
嘆息したフランスのマリー大統領が話す。
誰一人として、彼女の発言を否定しなかった。
「……それでは我が国の客人を紹介しても構わないだろうか?」
日向が口火を切る。
「彼は私のような立場の人間に、自分達の仲間が訪ねている筈だと言ってね。是非仲間と話したいそうだ。私は彼らの目的が漠然としているので、見極める為にも彼ら全員の話を聴いてみたいと思っている」
「マコトに同感だ」
ペンスが日向の提案を支持した。
「彼らの目的、これから我々と共に歩める存在なのかどうか、植人との共生をする意味、聴いてみたいと思いませんかな?」
こうして各国の訪問者を首脳達に紹介し、訪問者同士が意見交換する場が設けられる事となった。
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