13:剣を創ろう!part1
息苦しいほどの熱気が私にぶつかってくる。出てくる汗もあっという間に蒸発し、消える。
眩しい光が体を照らし、思わず目を細め、ジリジリと焼かれる感覚から逃れるために一歩下がる。その中で、熊の様なムサい男が大きな金槌を振り上げて金属に叩きつける音が規則正しく響く。
そう、今私はバルドさんの鍛冶場で見学しちゃっているのだ。
ミレディさんの監視の下、数日間しっかり養生した私は、その間にやりたい事をまとめていた。
その中の一つに『剣を創る』というものを出した。
「ファンタジーと言えば、キラキラなエフェクトがあって、魔法を飛ばせたりする剣だよね!」
と前々から思っていたので、ぜひ使ってみたい!とバルドさんに頼んでみた。
しかし、その期待は裏切られた。
『そいつぁ、ムリだな。シルヴィが言ってるのは《魔剣》の事なんだろうが、そいつは迷宮で稀に発見された時にしか流通しない。発見されたとしても発見者が使用するから、まず一般人が手に入れる機会なんてのは無い。勿論、鍛冶で作ることは不可能だ』
という返事がバルドさんから返ってきたからだ。
くぅっ、こうなったら、私の能力で創るしかない・・・と思い立ち、現在に至る。
創りたいといっても、剣の作り方を知らない内には、イメージに左右される付与魔法を使えないので、バルドさんの鍛冶仕事を見させてもらっているのだ。
『まずは、軟鉄を真っ赤に熱して柔らかくし、叩いて不純物をとばす。高品質な鉄なら必要ない。
縦に長くした軟鉄を真ん中で折り、その間に硬く丈夫な金属(今回は鋼)の板を挟む。
次に鉄と藁の灰を混ぜた粉を軟鉄と鋼の間に入れ、叩いてをサッとくっつける。(速くしないと酸素が邪魔をしてくっつき辛くなるらしい)
タガネというノミで要らない部分をとったりして剣の形に整える。
最後に焼き入れすれば刃ができる。
更にこの後ヤスリで研いだりして切れ味を良くし、血や脂が刃にこびりつかないようにしてから、柄にはめる。
これで大部分は完成だ。
裏技や微調整も山のようにあるが、基本的なものはこんな感じだ』
・・・と説明された。
正直、殆ど覚えられなくて焦ったが、バルドさんが一緒に、手順を確認しながら作ってくれたので、なんとか覚えられた。ふぃー。
「後は、頭で考えるよりも先に体が動くまで剣を作り続ければ、好きなものも創れるようになるんじゃないか?」
タオルで顔を拭きながらバルドさんは言った。
え?道のりが遠すぎる気がするんだけど?裏技とかは?
「作り続けている間に、いいとこまでたどり着いたら、その度に教えてやるぞ」
あれですね、徐々に道のりが引き延ばされていくみたいですね・・・トホホ。
でも、凄くワクワクして、楽しい気持ち!
私、やっぱり職人気質なのかも?
私が浮かれていると、少年の様な澄んだ高い声が聞こえた。
『ご主人様、夕食の時間なので家に帰ってきてほしいとミレディさんが言っていましたよ』
その声のした方向を見ると、白い仔猫――シルクがいた。
その首もとには、金色の丸い飾りがついた青いリボンが巻かれている。
実は私、ベッドから出た瞬間にこの首飾りを創っちゃったのだ!
これには、『翻訳機能』が付与されていて、シルクと私たちとの間で会話を可能にした素晴らしいアイテムなのです。
さらに、金色の飾りはダイヤルになっていて、会話できる人を限定することができるようになり、他人の前では『ただの猫』に成りすますこともできちゃうですよー。
それでですよ、この首飾りを付けてすぐに、シルクがなんて言ったと思います?
『シルヴィア様ぁーーー!!』
ですよ!
私今までそう呼ばれてたの!?
『シルヴィア様ってムズ痒いし、謎の罪悪感が芽生えるから、別の呼び方にできない・・・?』
って頼んでみたら、
『ご主人様』
って返事をくらって、HPに30ダメージ。
どうしても『様』は取らないらしく、
『ほ、他には・・・?』
と恐る恐る言ってみたら、『お姉様』や『姫様』、果ては『聖女様』と・・・か・・・グハッ。
シルヴィアは急所に大ダメージ!!HPがなくなった!
最終的にご主人様で落ち着きましたよ。うん。
ちなみに、会話して分かったことだけど、シルクは男の子らしい!
『《黒色》が無くなった時点でどちらでもなくなってしまったんですけど・・・』
って言ってたけど。
じゃあ、今は男の娘かなー・・・グハッ(自爆)
実は、ちゃんと《黒色》をなくした経緯も聞いたの。
なんか物凄く申し訳なくて、心苦しかったんだけど、シルクは全然辛くないって言ってくれた。
『僕はもう帰るところも無かったし、命の恩人ってだけじゃなくて、単純にご主人様のことが好きで、ずっと一緒にいたかったんです』
・・・・・・。
こんなに必要とされた事なんて、生まれ変わる前はほとんど無かったから、なんか、嬉しすぎてちょっと怖いくらい。
いつも、女の子だったせいでお母さんからは嫌われてたし、お父さんも私には興味すら無かったもの。
本当に、生まれ変わって良かった。
シルクを抱き上げて、素肌にサラサラな毛を感じながら家へ向かった。
私の心の傷が癒されていくのに合わせるように、この安穏とした生活の終わりが近づいているとは知らずに・・・。
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――――とある城の執務室に、やつれながらも目を爛々と光らせている男がいた。
彼の周りには以前にも増して高く積まれた書類の山があり、男はそこで、ある一枚の紙に人外の速さで何かを書いていた。
「『私、近衛騎士兼臨時近衛隊長のアレン・リギンディアは、全ての責任を14日間総務課に譲り、バルド・リギンディアの報告についての調査を致します。つきましては~』・・・やっとこの仕事から解放されるぜ。見てろよクソ上司、俺がいない間に総務課の小言攻撃を大人しく喰らうんだな。あっはっはっはっ・・・」
そう、すっかり変わり果てた姿ではあるが、彼はバルドの息子のアレン・リギンディアである。あれからまた書類が増えて、訓練した後は執務室に籠り、そこで朝を迎えるという過酷な環境で働いていた。そこに、やっとこさ隊長各位が戻ってくるという知らせをもらい、隊長が帰ってくる一週間前から仕事を放り出して、帰郷並びに仕返しを企んだのである。
勿論、あれから全く連絡の無いバルドを心配したのもちょっとある。本人曰く、ちょっとである。そして、必要な書類を書き終わると部屋を出て、総務課に向かった。意気揚々と歩いていると、すれ違う人皆にギョッとした顔をされた。
結構なショックを受けたが、何故なのか分からずそのまま総務課受付に書類を提出した。
受付の人も、ギョッとした顔して、書類に目を通した後は憐れみの眼差しを向けられた。
流石に気になったアレンが自室に戻って鏡を見ると、バルドそっくりな髭の濃い顔に隈がついて、頬も痩けているという恐ろしいモノが映っていた。
「・・・こんなところが親父に似るとは。最悪だ。というか、なぜ誰も今まで指摘しなかったんだ」
と言って、アレンは頭を抱えた。
ちなみに当時、アレンの部下達はとばっちりを受け手伝わされるのが嫌だったので、敢えて指摘をしないという暗黙のルールができていたのである。
「出発する前に療養しないといけねぇよな、こりゃ・・・」
アレンは取り合えず髭を剃ると、そのままベッドにツップして眠り始めた。
結局、彼が元通りになって城を出発するまでに丸々3日かかった。
お久しぶりです。
私、リアルがとっっても忙しい中で気紛れに書いてるので、更新スピードがすごーく遅いですが気長にお付き合いいただけると、ありがたいです。
次回はアレンとシルヴィアちゃんが出会っちゃうかも・・・!
作中の剣の作り方は「刀」を参考にしています。西洋の剣とは違うので、ご了承下さい。
ちなみに、バルドはどっちかと言うと刀のような切ることに重点を置いた剣を作っています。




