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魔剣姫と狂愛の魔女   作者: 澪木 たま
居候編
11/15

10:朋友たち

――――――あやつだ。


私は久方ぶり・・・約110年ぶりに、友の気配を感じた。しかも、怒っている。かなり。


下界からは遥か高みにある山の洞穴から、老いて重くなった体を引きずり出す。冷たく澄んだ空気は、どこかぼんやりしていた意識を覚醒させる。


付き合いの長い友は、あの青い石ころの中に閉じ籠った後も何度か話しかけてきていたのだが、最近メッキリと姿を現さなくなっていた。

流石に年数が三桁目に入ってきて、何かあったのかと思ったが、どうせボケているだけだろうと気にせずにいた。


・・・が、何かしらあったらしい。いつも沈着冷静なあやつがこれ程怒りを表に出すのは、あの女(・・・)の時以来だ。


あやつの居場所を突き止めるためにと鼻先を空に向ける。

南東の・・・確か香木がよく採れる森林にいるようだ――――――!?


北の国に、存在してはならない(・・・・・・・・・)者の気配が、あった。


私は、空気を伝わってくる邪悪な恐ろしい波動を感じた。3000年も前に封印したはずの者が、解き放たれているという証だった。

・・・まさか、本当にあの女がらみだったとは・・・。これは、急いで行かねば。


大きな翼を広げて、大地を蹴り上げる。

それだけで翼は風を掴み、巨体が宙に浮く。

私は力いっぱい翼をはばたかせて、全速力で朋友の元へと向かった。


南東の森に到着すると、早くも木々が大幅に無くなっている箇所から友の気配を感じた。

丁度よく開いている道を行くと、青い石ころを首に下げた美しい少女と、黒い子猫・・・いや、猫ではなく(シャドウ)(パンサー)の子どもだ。なぜAランク+の魔物の子どもが人間の女の顔を舐めているのだ?


まぁ、それはどうでもよい。

それよりも、この熊の方が怪しい。

少女の傍らには、禍々しい気を纏ったジャイアントベアが、ドラゴンの気によって強化された木に貫かれていた。

その禍々しい気は、北の国から駄々漏れな、あの女のものだった。どうやら、ジャイアントベアを突然変異させた原因は、コレらしい。


友人を首から下げている少女へ目を向ける。

少女からは竜の気が漂っていて、否応なく友人の子孫であることを理解させられる。

そして、その顔を見た時、何回目か分からない驚きで、体が震えた。


なぜ、友人の奥方にソックリなのだ!?

目鼻立ちも体の色彩も、魂でさえも、亡きランディア王国初代王妃『ディアナ』とまったく同じであった。


あまりのことに呼吸をすることも忘れていたが、突然響いてきた友の声で、我に返った。


『白の治癒竜よ、私の気配が消えて大分経ったはずだが、何も疑問を持たなかったのか?』


我の爪の先ほどにも満たない小さな石ころから、凄まじい怒気が溢れでた。一瞬、ゴゴゴゴゴと音が聞こえた気がした。


『そ、そのだな、我は貴様が耄碌したと思っ・・・』


『・・・ブチッ』






―――――――数時間後。

我は屍となっていた。

百と十何年分の鬱憤を説教に込められたのだ。

そりゃ我でも死ぬわ。


『お前なんぞを説教しているせいで時間を無駄にしてしまったではないか、このクソムシ』


なっ、なっ、この我をクソムシ呼ばわりだと!?

それに、説教をしたのはお主ではないか!


『貴様は黙っていろ。それよりも、この娘のことだ』


むむむ、仕方がない。今回は我が折れてやろう。

・・・しかしこの娘、ずいぶんと内蔵が負傷しているではないか。何があったのだ?


『この娘は・・・シルヴィアは、そこの熊に襲われて腹を抉られたのだ。先祖返りすることで命を繋いだが、まだ不完全なために怪我が治りきっていない。癒しの術が得意なそなたに治してもらおうと思って呼んだのだ。勿論、それだけではないがな』


先祖返りとな。奥方に似ているだけでなく、しっかりそなたの血を引いているのだな。

ふむふむ。死んだ細胞を排除して新しい細胞を活性化させ、毛細血管を張り巡らせて・・・よし、できた。


『友よ、娘を治したぞ。ついでに気の流れを良くしたから、先祖返りも支障はないぞ』


『うむ、助かる。・・・シルヴィアは今までの記憶を無くしているから、下手に姿を現したり、語りかけたりはするな。シルヴィアでありディアナである魂は、今休んでいるところだからな』


・・・確かに、表に出ている魂は、我も視たことが無いような、異質な光を放っているな。コレは何なのだ?


『シルヴィアの魂は、あの女から逃げる時に深く傷つき、奥深くに閉じ籠ってしまった。そのままでは生命活動が停止してしまうから、近くを漂っていた魂を急遽いれたのだ。だか、転移魔法を使っていたせいで空間の境目が緩くなったところに、異界の、しかも記憶消去を行っていない魂が、偶々私達の側を通ったのだ』


・・・では、今現在シルヴィア殿の身体を動かし、話しているのは、異界の記憶消去をされていない魂なのか!?


『そういうことだ。だが、その魂の持ち主はシルヴィアよりもしっかりしていて、賢い。シルヴィアが目覚めるまでの間は何とかなるだろう』


ふむふむ・・・むむむっ!?

魂が、とんでもないことになっておるぞ。


『・・・シルヴィア殿が目覚めた後はどうするのだ、友よ』


『その時は、彼女の魂を元の時空の流れに戻してやる。・・・神は全てを視ているからな、彼女に悪いようにはしないだろう』


『友よ、それはできないぞ』


『なぜだ?』


我は視たままを語った。


『既に、シルヴィア殿であり奥方である魂は、表に出ている魂と一部が融け合っているのだ』


『な・・・んだと・・・!?』


『普通はあり得ない事だ・・・が、もしも仮に神々が関わっているとすれば、シルヴィア殿が産まれたことも、あの女が目覚めたことも、全て辻褄が合う』


『もしや、運命の女神が・・・』


『シッ。言葉にはしない方がいい。が、その可能性は高いな。異界の魂がシルヴィア殿に入ったことも、魂同士が融け合ったのも、意図的な何かがあったのかもしれない』


『確かに運命の流れに歪みが起きているのなら、異界の存在でも使わないと修正ができないのかもしれないな』


『・・・ともかく、我は遠くからシルヴィア殿を見守っていれば良いのだな』


我は大きく伸びをし・・・ようとして、足元にいる存在に気付いて、止めた。


先程の影豹の子どもだった。

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