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角を狩るモノ  作者: Samail
九章 角を狩るモノ

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八十一話 うつし世に再び

山道。


朝靄が木々の間を漂う。


「一角。」


瀬良が短く呟く。

茂みから三体。

牙を鳴らし飛び掛かる。


「俺が行く。」


兵介が踏み込む。


刀が走る。

一体。

二体。

三体目が背後へ回る。


「兵介。」


ソウの声。

振り向くより早く。


――ズン。

鬼の首が落ちた。


「悪ぃ。」


兵介が息を吐く。


「まだまだだな。」


瀬良が目を見開く。


「お前どんだけ成長してんだよ。」


三人は再び歩き始めた。

山道は静かだった。

ムジナだけが辺りを見回す。


「たぶんこっちだ。」


「うん。」


ソウは短く返した。

しばらく歩いた後。

瀬良が口を開く。


「現再のことだ。」


兵介が顔を上げる。


「何か知ってんのか。」


「ああ。」


瀬良は前を向いたまま話し始める。


「源蔵が調べてた。」


「幽木現再。」


少し間を置く。


「……たぶん、それも偽名だ。本名は知らねぇ。」


ソウは黙って聞いている。


「元は赤松家の家臣だった。」


兵介が目を丸くする。


「侍?」


「ああ。」


「忠義に厚くて、頭も切れたらしい。」


「乱で主君が討たれた。」


風が吹く。


「残党を集めて戦い続けた。」


「赤松を取り戻すためにな。」


誰も口を挟まない。


「だが負けた。」


瀬良は静かに続ける。


「それからだ。」


「奴が鬼を従え出したのは。」


兵介が顔をしかめる。


「鬼の力で天下を取ろうとしたってことか。」


「最初は。」


瀬良は頷く。


「赤松を立て直すためだったらしい。」


「だが。」


少しだけ声が低くなる。


「ある日。」


瀬良は空を見た。


「首塚大明神へ行ったとき。」


ムジナの耳がぴくりと動く。


「……。」


「そこで。」


瀬良は息を吐く。


「酒呑童子の声を聞いた、と言い始めた。」


兵介が眉をひそめる。


「本当に聞いたのか?」


「知らねぇ。」


瀬良は首を振る。


「源蔵も分からねぇって言ってた。」


「魅入られたのか。」


「取り憑かれたのか。」


「気が触れただけなのか。」


「だが、本人だけは。」


瀬良は小さく笑う。


「本当に聞いたって信じてたらしい。」


ソウは前だけを見て歩く。

瀬良は続けた。


「その頃から。」


「鬼を作る術。仙花の研究を始めたらしい。」


「幽木現再、と」


「名を改めて。」


兵介は小さく呟く。


「じゃあ。」


「もう、その頃には……。」


「ああ。」


瀬良が答える。


「人間じゃなくなってた。」


風が止む。

静寂。


瀬良は続ける。


「角狩りの仇だったの紅眼も。鬼に堕ちかけた時、現再と手を組んだらしい。」


「仙花も。」


「鬼も。」


「全部そこで繋がる。」


「関係ない。」


ソウが答える。


「ミコトを連れ戻す。」


「それだけだよ。」



遠く。

山が見えた。


「あそこだ。」


瀬良が指差す。

深い森。

雲を突き刺すような山。


「早池峰。」


ソウは静かに頷いた。


「行こう。」


三人は歩き出す。

迷いはなかった。

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