表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
角を狩るモノ  作者: Samail
八章 遠野

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/74

七十二話 麓の村

朝。


小鳥の鳴き声。

障子から柔らかな朝日が差し込む。

兵介は大きく伸びをした。


「いい朝だぁ……。」


廊下へ出る。


「ソウー。」


返事がない。


「どこ行った?」


縁側。

ソウ。

わらし。

河太郎。

三人並んで、お茶を飲んでいた。


兵介は思わず笑う。


「馴染んでんなぁ。」


ソウは湯呑みを置く。


「おはよう。」


河太郎が笑う。


「朝のお茶、おいしいよぉ。」


わらしも小さく頷いた。


「……おいしい。」



朝食。


アキが穏やかに口を開く。


「今日はゆっくり休んでください。」


ミコトは少し考えてから微笑んだ。


「それなら。」


ソウを見る。


「村、案内するね。」


「うん。」


兵介は勢いよく立ち上がる。


「市場ある?」


ミコトは笑う。


「あるよ。」


「よし!」



村。


朝から賑やかだった。


畑。

商人。

鍛冶屋。

井戸端。


その横を、小さな妖怪が走っていく。

誰も驚かない。


河童が荷物を運び。

白い狐が子供と遊んでいる。

ムジナはそこへ向かっていく。


「こっちの狐は白いのかよ。」


「田舎臭い狸がいるねぇ?」


「なんだと!?てめえだって田舎モンだろ!?」


一触即発。

いや、ただのじゃれあい。


ソウは可笑しそうにそれを眺め。


「人と妖怪が普通に暮らしてる。」


ミコトは頷く。


「ここでは当たり前だから。」



「ミコト様!」


野菜屋のおばあさんが笑う。


「おかえり!」


「ただいま。」


籠いっぱいの野菜を渡される。


「持っていきな。」


「ありがとう。」


少し歩けば、


「団子食べる?」


「あら、新しいお客様?」


「元気そうで安心したよ。」


次々と声が掛かる。

兵介が笑う。


「人気者じゃねぇか。」


ミコトは照れ笑い。


「みんな優しいから。」


ソウは静かに頷いた。


「いい村だね。」



「あっ。」


子供がソウを見つける。


「お兄ちゃん!」


もう一人。

また一人。

気付けば囲まれていた。


「刀かっこいいねー?」


子供たちは目を輝かせる。

群がってソウに遊んでとせがむ。


「鬼ごっこ!」


「木登り!」


「肩車!」


ソウは少し困ったように笑う。


「順番ね。」


子供たちは歓声を上げた。

村人たちはその様子を見ながら微笑んでいる。


「優しい人だね。」


「ミコト様にぴったりだ。」


「婿殿か?ありゃ。」


「あっちのでかいのは?」


「アイツはちがうだろ。」


ミコトは聞こえないふりをした。



兵介。

一人で団子屋へ。


「うめぇ!」


店番の娘がくすっと笑う。


「そんなに?」


「今まで食った団子で一番うめぇ!」


娘は一本包む。


「はい。」


兵介は首を傾げる。


「俺、二本しか頼んでねぇぞ?」


「一本、おまけ。」


「え?」


兵介は少し照れながら受け取る。


「ありがとう。」


娘はにこっと笑った。


「また来てね。」


兵介、ぎこちなく笑う。


「あ、ああ。また来るよ。」


娘は嬉しそうに頷いた。



帰り道。

夕日が山を赤く染めていた。


ソウがぽつりと言う。


「平和な村だ。」


ミコトは頷く。


「うん。」


少しだけ空を見上げる。


「私、この村が好き。」


ソウも空を見上げた。


「そうだね。」


少しだけ間。


「守りたくなる。」


ミコトは嬉しそうに笑った。


「うん。」


二人の少し前を。

兵介がとムジナが歩く。


後ろには子供たちと白い狐。


「また遊ぼうな!」


「約束ー!」


「おう!」


遠野の一日は、

ゆっくりと暮れていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ