↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
角を狩るモノ  作者: Samail
七章 三人と一匹

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/91

六十九話 奥州

朝。


奥州。


空気はさらに冷たくなっていた。

街道の脇には背の高い杉。

遠くには青い山並み。

兵介が大きく伸びをする。


「ここまで来たかぁ。」


ソウが笑う。


「あと少し。」


ミコトも静かに頷いた。


「うん。」


「いこう。」


ミコトはどこか嬉しそうだった。


◇


街道を歩く。

旅人とすれ違う。

馬を引く商人。

荷を背負った僧。


兵介が呟く。


「北の方まで来ると、人も少ねぇな。」


ソウも頷く。


「ここから先は山ばっかりだからね。」


ムジナが肩で欠伸をする。


「やっと静かになった。」


◇


昼。


小さな川。


橋は無い。


浅瀬を渡るしかないようだった。

兵介は勢いよく飛び越える。


「よっと。」


ムジナも軽く跳ぶ。


「ほい。」


ミコトは立ち止まった。


流れは緩やか。

それでも石は少し滑りそうだった。


ソウが振り返る。

何も言わず。

右手を差し出す。

ミコトはその手を見る。

少しだけ笑って。


「……うん。」


手を取る。


一歩。

また一歩。

無事に渡り終える。

ソウは自然に手を離した。


兵介は振り返る。


「……。」


ムジナが小さく笑う。


「ニヤニヤして気持ち悪いぞ。兵介。」


「いや。」


兵介は頭を掻く。


「なんでもねぇよ。」


軽やかに歩き出す。


◇


夕方。

丘の上。

遠く。

深い山々が見えた。

ミコトは静かに指を差す。


「あっち。」


ソウは目を細めた。


「遠野?」


「うん。」


兵介は景色を眺める。


「遠かったなぁ。」


「でも。」


ソウは笑う。


「あと少し。」


◇


夜。


焚き火。


火が静かに揺れていた。

兵介は大の字になって眠っている。


「ぐぅ……。」


ムジナも丸くなって寝息を立てていた。


静かな夜。

虫の声。

薪がぱちりと爆ぜる。


ソウは火を見つめていた。


隣ではミコトも座っている。

眠そうに。


「……寝てていいよ?」


「……うん。」


ソウの肩へ頭を預けた。


静かな寝息。


ソウは横を見る。

起こさない。

眉尻が少し下がる。


風が吹く。


前髪がミコトの顔へ掛かる。


ソウはそっと髪を耳へ掛けた。

ミコトは安心したように。


小さく笑った。

ソウも小さく笑う。


何も言わない。


焚き火へ薪を一本くべる。

火が少しだけ大きくなった。

その温もりに包まれながら。


遠野はすぐそこまで来ている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。