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角を狩るモノ  作者: Samail
七章 三人と一匹

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六十九話 奥州

朝。


奥州。


空気はさらに冷たくなっていた。

街道の脇には背の高い杉。

遠くには青い山並み。

兵介が大きく伸びをする。


「ここまで来たかぁ。」


ソウが笑う。


「あと少し。」


ミコトも静かに頷いた。


「うん。」


「いこう。」


ミコトはどこか嬉しそうだった。



街道を歩く。

旅人とすれ違う。

馬を引く商人。

荷を背負った僧。


兵介が呟く。


「北の方まで来ると、人も少ねぇな。」


ソウも頷く。


「ここから先は山ばっかりだからね。」


ムジナが肩で欠伸をする。


「やっと静かになった。」



昼。


小さな川。


橋は無い。


浅瀬を渡るしかないようだった。

兵介は勢いよく飛び越える。


「よっと。」


ムジナも軽く跳ぶ。


「ほい。」


ミコトは立ち止まった。


流れは緩やか。

それでも石は少し滑りそうだった。


ソウが振り返る。

何も言わず。

右手を差し出す。

ミコトはその手を見る。

少しだけ笑って。


「……うん。」


手を取る。


一歩。

また一歩。

無事に渡り終える。

ソウは自然に手を離した。


兵介は振り返る。


「……。」


ムジナが小さく笑う。


「ニヤニヤして気持ち悪いぞ。兵介。」


「いや。」


兵介は頭を掻く。


「なんでもねぇよ。」


軽やかに歩き出す。



夕方。

丘の上。

遠く。

深い山々が見えた。

ミコトは静かに指を差す。


「あっち。」


ソウは目を細めた。


「遠野?」


「うん。」


兵介は景色を眺める。


「遠かったなぁ。」


「でも。」


ソウは笑う。


「あと少し。」



夜。


焚き火。


火が静かに揺れていた。

兵介は大の字になって眠っている。


「ぐぅ……。」


ムジナも丸くなって寝息を立てていた。


静かな夜。

虫の声。

薪がぱちりと爆ぜる。


ソウは火を見つめていた。


隣ではミコトも座っている。

眠そうに。


「……寝てていいよ?」


「……うん。」


ソウの肩へ頭を預けた。


静かな寝息。


ソウは横を見る。

起こさない。

眉尻が少し下がる。


風が吹く。


前髪がミコトの顔へ掛かる。


ソウはそっと髪を耳へ掛けた。

ミコトは安心したように。


小さく笑った。

ソウも小さく笑う。


何も言わない。


焚き火へ薪を一本くべる。

火が少しだけ大きくなった。

その温もりに包まれながら。


遠野はすぐそこまで来ている。

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