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角を狩るモノ  作者: Samail
七章 三人と一匹

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六十三話 一路順風

堺を出て、一週間。


街道は少しずつ山深くなっていた。


風は心地よく。

鳥が鳴き。

荷を背負った旅人とすれ違う。


「旅って感じだなー。」


兵介が大きく伸びをする。


「けっこう旅してるけどね。」


ソウが笑う。


「鬼もそんなに出ないな。」


「いいことだよ。」


ムジナが肩の上で欠伸をした。


「俺ぁ、毎日飯があるだけで十分だけどな。」


「お前は食って寝るだけだろ。」


「最高じゃねぇか。」


兵介が呆れた顔をする。


「ちょっとは働け。」


「ちゃんと見張りしてる。」


兵介が笑う。


「こいつ本当に狸か?」


「狸だよ。」


ソウが普通に答えた。


「いや、お前に聞いてねぇ。」


ミコトは道端へしゃがみ込んでいた。


草を摘む。

兵介が覗き込む。


「また薬草か。」


「うん。」


「やっぱよくわかんねぇな。」


「兵ちゃんは熊なので。」


「やめてくれない?獣で揃えるの。」


ミコトは真面目な顔だった。


「兵ちゃんだから。」


「さっぱり理由になってねぇ!?」


ソウが笑う。


風が吹いた。

山道の先。

石段が見えてきた。


古い鳥居。

その脇には、小さな茶屋が一軒建っている。


「少し休もうか。」


「賛成!」


兵介が真っ先に駆けていく。

茶屋の老婆が四人を見る。


「旅のお方かい。」


「ええ。」


ソウが軽く頭を下げる。


「遠野まで。」


老婆が目を丸くした。


「そりゃまた遠いねぇ。」


団子と茶が運ばれてくる。

兵介は一口食べて固まった。


「うまっ。」


老婆は嬉しそうに答える。


「ありがとうねー。」


ムジナはものすごい勢いで団子を食べていた。


「喉詰めないでよ?」


「ムシャムシャムシャ。」


返事もしないムジナ。


老婆が笑う。


「仲が良いねぇ。」


兵介が苦笑した。


「毎日こんなんですよ。」


老婆は頷く。


そして。

山の方を見た。


「あんまり奥へは入らない方がいいよ。」


兵介が団子を頬張る。


「なんで?」


「太郎坊様のお山だからね。」


静かな声だった。


「機嫌を損ねると帰って来られない。」


「太郎坊様?」


「天狗様だよ。」


風が吹く。

ソウが山を見る。

深い森だった。


「昔から?」


老婆は頷く。


「ずっと昔からさ。」


「旅人を試すお方だ。」


「悪さをしなけりゃ何もされない。」


ソウも頷いた。


「じゃあ大丈夫そうだね。」


兵介が吹き出す。


「まあ悪さはしねぇけど。」


茶を飲み終え。


四人は再び歩き出す。

石段の脇を通り。

山道へ入る。


風が少しだけ冷たかった。

鳥の声が止む。

木々が揺れる。

誰も気付かない。

遥か頭上。

大杉の枝の上。


旅人達を見つめる影が、一つ。

風が吹く。

長い髪だけが、静かに揺れていた。

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