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角を狩るモノ  作者: Samail
六章 仇討

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六十話 刀に成る

王角。


一歩。

踏み出すだけで。

地面が軋んだ。


兵介の足が止まる。

呼吸が浅い。

身体が言うことを聞かない。


「なんだ……。」


声が震える。


「こいつ。」


ソウは拳を構えた。


迷わない。

踏み込む。

拳。

肘。

膝。

蹴り。

全部。


受け止められる。


鬼は嗤った。

受け止めたまま、そのまま地面に叩きつける。


血を吐くソウ。


叩きつける。

叩きつける。

叩きつける。


放して、拳を振るう。


ソウは腕で受ける。


衝撃。

吹き飛ぶ。


木を何本も折りながら転がった。


転がるソウ。


兵介が歯を食いしばる。


「ソウ!」


王角が歩く。


ゆっくり。

確実に。

ソウへ。


兵介が前へ出た。


刀を構える。

手は震えている。

怖い。

それでも。

退かない。

その隣へ。

静かに立つ。


「兵ちゃん。」


ミコトだった。


「死ぬぞ。下がってろ。」


首を横に振るミコト。


王の咆哮。

震える大気。

衝撃。


兵介は吹き飛ぶ。

岩へ叩き付けられた。


ミコトは踏ん張る。

一歩。

二歩。

耐えきれない。

吹き飛ぶ。


「ソウ、起きろ!何やってんだ!!兵介とミコトが殺されちまうぞ!!」


ムジナ、気絶したソウへ怒鳴る。


揺蕩う意識の中。

聞こえる声。


『……研ぎ澄ませろ。』


『……鬼になるな。』


『……刀になれ。』


『俺がしっかり見届けてやるからなぁぁぁ!!』


『結婚してください。』


ソウがのそり立ち上がる。


目の前。

倒れている。

ソウを守ろうとして。


『刀になれ。』


静かな声だった。

続けて。

ミコトの声。


『天を穿ったという話も残っている。』


ソウは。

ゆっくり。

天穿へ手を伸ばした。

鞘を握る。


「……そう、か。」


小さく呟く。


抜刀。

静かな音。


王角が嗤う。


「今さら。」


ソウは答えない。


腹へ手を当てる。

熱い。

今まで。

鬼を斬ってきた。

溜まり続けた。

黄色い光。

静かに。

柄へ流す。


「食え。」


その一言だった。


天穿が震える。


刀身が鳴く。


黄色い光が駆ける。


柄。


刃。


切っ先。


そして。


刀を振る。


夜を裂く。

光。

兵介が息を呑む。

ミコトが。

静かに呟いた。


「……アマウガツ。」


王角が初めて笑みを消した。


「それは……!」


ソウは踏み込む。


速い。

今までで一番。


王角が腕を振るう。


遅い。

光が走る。


静寂。


一拍遅れて。

王角の身体へ。

一本の線が走った。


そして。


夜空へ。


光は真っ直ぐ伸びていく。


厚い雲を。


音もなく。


真っ二つに裂いた。


隠れていた満月が。

静かに姿を現す。


王角の身体が崩れる。

黒い瘴気は風へ溶ける。


ソウはゆっくりと天穿を納めた。


月明かりだけが。

静かに山を照らしていた。


その一太刀は、天を穿った。

七夕なんでね。

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