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角を狩るモノ  作者: Samail
六章 仇討

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五十九話 王の咆哮

風が吹く。


山は静まり返っていた。


月はまだ雲の向こう。

ソウは天穿を構える。

男は抜き身の刀を肩へ担ぎ、静かに笑った。


「ようやく見つけた。」


低い声だった。

兵介が刀を構える。


「お前……。」


男は兵介を見ない。

視線はただ一つ。

天穿(てんせん)


「アマガツ。」


懐かしむように呟く。


「随分、長いこと探した。」


ソウが一歩前へ出る。


「……親父を殺したのは。」


男が笑う。


「あぁ。」


短い返事だった。


「間に合わなかった。」


「あと少し早ければ。」


天児(あまがつ)も手に入った。」


兵介が眉をひそめる。


「天児?」


男は天穿を見る。


「その刀の、真名だ。」


ソウは黙っていた。

男は少しだけ首を傾げる。


「知らんのか。」


「親父は何も話さなかったようだ。」


風が吹く。

男は刀を構えた。


一瞬。

距離が消える。

ギィンッ!!

火花。

凄まじい衝撃。


袈裟、唐竹。

全て防がれる。


「くく、お前より。」


少し笑う。


「親父の方が、まだ骨があった。」


ソウは止まらない。

斬る。

返す。

踏み込む。

速い。

兵介が思わず呟く。


「押してる……。」


男が受ける。

受ける。

受ける。

そして。

笑う。


「まだまだ。」


刀を弾く。

ソウは飛び退く。


静かに。

天穿を見る。


「ふぅ。」


そして。

カチリ。

鞘へ納めた。

兵介が叫ぶ。


「ソウ!」


男は笑った。


「諦めたか。」


ソウは首を振る。


「違う。」


拳を握る。


「刀じゃ。」


静かに息を吐く。


「勝てない。」


次の瞬間。

踏み込む。

拳。

腹へ。

鈍い音。

男の身体が浮く。

兵介が目を見開く。


「なっ……!」


追撃。

肘。

膝。

回し蹴り。

男が初めて後退した。

岩へ叩き付けられる。


土煙。


ソウは構えたまま動かない。

男はゆっくり立ち上がる。

口元の血を拭く。

そして。

笑った。


「そうか。」


懐へ手を入れる。

取り出したのは。

小さな徳利だった。

兵介の表情が変わる。


「おい、あれ……。」


ムジナは鼻を引くつかせ。


「あぁ。例のやつだ。」


男は栓を抜く。

赤黒い酒。

迷いなく口へ流し込んだ。


ごくり。

静寂。

何も起きない。

そう思った。


――――ぱきん。


骨が軋む。

男の身体が震えた。

腕が膨らむ。

角が伸びる。

皮膚が裂ける。

紅い眼が。

さらに濃く染まる。


兵介の背中を冷たい汗が流れた。


「なんだよ……。」


男は苦しそうに笑う。


「これで。」


息を吐く。


「ようやく。」


全身から黒い瘴気が噴き出す。


――――グォオオオオオオオオッ!!


山が震えた。

木々が揺れる。

空気そのものが重くなる。

ソウは静かに拳を握り直した。


二本の角の真ん中に、歪な禍々しい角。

本日七夕なのでもう1話投稿します。30分後。

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