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角を狩るモノ  作者: Samail
六章 仇討

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五十六話 傷と紅い眼

風を追う。

山道を駆ける。

兵介が木の根を飛び越えた。


「近い!」


ムジナが鼻を鳴らす。


「あぁ。」


「すぐそこだ。」


ソウは黙って走る。

血の臭い。

濃い。

新しい。

木々の隙間。

開けた場所。


そこにいた。


男。

いや。

鬼だった。

一角。

全身が血で濡れている。

肩で息をしながら。

何かを抱えていた。

兵介が息を呑む。


「……人?」


鬼の足元。

村人が倒れていた。

すでに動かない。


鬼はゆっくり顔を上げる。

角。

牙。

赤く濁った目。

それでも。

どこか苦しそうだった。


ソウが前へ出る。


「兵介。」


「ああ。」


二人が同時に地面を蹴る。

鬼が吠えた。


「ガアアアアアッ!!」


拳。

兵介へ。


「っ!」


受ける。

重い。

身体ごと吹き飛ばされる。

木へ叩き付けられた。


「ぐっ……!」


ソウが踏み込む。

天穿。

一閃。

肩を裂く。

血が飛ぶ。


だが。

鬼は止まらない。

腕を振るう。

ソウが身を捻る。

避ける。


その隙。

兵介が立ち上がる。


「おおおおっ!!」


横薙ぎ。

鬼の脇腹を斬る。

悲鳴。

ムジナが叫ぶ。


「兵の字! 下だ!」


兵介が跳ぶ。

次の瞬間。

鬼の拳が地面を砕いた。


土煙。

兵介が着地する。

息が荒い。


「速ぇ……!」


「……。」


鬼を見る。

苦しそうだった。

動きが乱れる。

何かと戦っているみたいに。


その時。

鬼の口が動いた。


「……に、げ……。」


兵介が止まる。


「え?」


次の瞬間。

鬼が自分の頭を押さえた。


「ガアアアアアアッ!!」


理性が消える。

ソウが目を細めた。


「いくよ。」


「ああ!」


もう迷わない。

二人が同時に踏み込む。

兵介の刀が鬼の足を払う。

体勢が崩れる。


その一瞬。


ソウ。

天穿。

一閃。


首が飛ぶ。


静寂。

鬼の身体が崩れる。


黄色い光が浮かぶ。


今までより少ない。

天穿が静かに吸い込んでいく。

兵介が息を吐く。


「終わっ……。」


その時だった。


悪寒。


木の上。

月明かり。

一人の男が立っていた。


抜き身の刀。


左頬。


一本の傷。


男はソウではなく。


天穿を見ていた。


静かに笑う。


「アマガツ。」


ソウの目が細くなる。

兵介が刀を構えた。

男は木から降りない。


ただ。

笑っていた。


「やっと見つけた。」


風が吹く。

男の髪が揺れる。

ソウはゆっくり天穿を構えた。


「……お前か。」


男は答えない。

ただ。


左頬の傷と。


血のように紅い眼が。


ぼんやり浮かんでいた。

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