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角を狩るモノ  作者: Samail
五章 境界

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四十八話 任されたモノ

「これで……殺せる。」


口が裂けた。


黒い血が垂れる。

双角未満。


だが。

空気は、一角とは別物だった。


地面が軋む。

男が踏み込む。

速い。


「っ!!」


ソウが天穿を振る。

激突。

衝撃。

地面が割れる。


兵介が息を呑んだ。


「なんだよ、あれ……!」


男が嗤う。


「ころス。」


腕が膨れる。

爪。

牙。

鬼の臭い。


ソウが静かに息を吐いた。


「……。」


兵介を見る。


「兵介。一角二体、任せたよ。」


「お、おうよ!」


兵介が叫ぶ。


「ムジナ、兵介を手伝ってあげて。」


ムジナが舌打ちする。


「しゃあねぇな。」


ソウを見る。


「……死ぬなよ。」


「ああ。」


ムジナが兵介の頭へ飛び乗った。


横。


残った二体の一角が唸る。

兵介が刀を構えた。


足が震えていた。


その時。


「兵ちゃん。」


ミコトだった。


「……どうした。」


「時間、稼いで。」


静かな声。


「私も、戦う。」


兵介が振り向く。


ミコトの目。

一瞬だけ、金色に染まった。


兵介には、そう見えた。


空気が変わる。

近寄れない。

そんな凄み。


「何かわかんねぇけど、そんな保たねぇぞ!?」


「よろしく。」


ミコトは静かに目を閉じる。


何かを唱えていた。

風が揺れる。

地面が、 微かに震える。

兵介が笑う。


「……へへ。」


ムジナが呆れた顔をした。


「どうした兵の字。チビったか?」


兵介が刀を握り直す。


「ばかかよ。」


鬼が吠える。


「これで燃えねぇ男はいねぇだろ。」


相棒に託された。

守る者がいる。

負けられない。


井上兵介は。

ここで、男を上げる。


「おおおおおおあああっ!!」


踏み込む。

一角が腕を振る。

それに合わせて刀を振る。


ぶつかる、腕と刀。

重い。

振り抜け、ない。


「ぐぅっ!!」


吹き飛ばされる。

転ばない、耐える。


もう一度踏み込む。

今度は鬼の腕より速く。

刀を振る。

振り抜ける。

鬼の片腕を斬り飛ばす。

悲鳴。


だがもう一体。

横から牙。


「兵の字、右!!」


ムジナの声。


咄嗟に反る。


頬が裂ける。

熱い。

血が流れる。


「っ、ぅ……!」


速い。


それでも。


兵介は退かなかった。


「おおおおっ!!」


踏み込む。

振り抜く。


首。

浅い。

足りない。


一角が嗤う。

爪が迫る。

その瞬間。


ムジナが飛び出した。


「遅ぇんだよデカブツ!!」


顔面へ噛み付く。

怯む。

兵介が叫ぶ。


「助かる!!」


全力。

上段から振り抜く。

腕を切り落とす。

血。


しかし。


反対の腕で吹き飛ばされる。


木にぶつかる。

頭を強かに打った。


くらくらする。


だが。


気合いで立ち上がる。


鬼達が吠える。

片方ずつ腕を飛ばされた怒りを叫ぶように。


その時。


「……兵ちゃん、ありがとう。」


声。

ミコト。


ゆっくり。

目を開ける。

金色。


空気が揺れる。

見えない何かが、迸る。


【還れ。】


声。


世界が、

震える。


一角が止まる。


苦しそうに喉を鳴らす。

角が軋む。

肉が崩れる。


やがて。


足元から、沈む。


地面へ。

飲み込まれるみたいに。


消えた。



兵介が呆然とする。

「……はは。」


息が漏れる。


「なん、だよ、それ……。」


兵介は、ずるずると座り込んだ。

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