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角を狩るモノ  作者: Samail
四章 名前

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三十九話 見届ける人

焚き火が揺れていた。


虫の声。

風。

火の爆ぜる音。


ソウは話し終えていた。


しばらく、 誰も喋らない。


静かだった。

やがて。


「……ぅヒ。」


変な音がした。


ソウが顔を上げる。

兵介だった。


「……ぇ。」


顔がぐしゃぐしゃだった。


涙。

鼻水。

体液全部出てる。

酷い。


「お、おまえぇぇ……。」


震えている。


「そんなっ……そんな過去がぁああぁ……。」


ぼろぼろに、泣いていた。


ソウが少し引く。


「……なんで泣いてるの?」


「泣くだろ普通ぅぅ!!」


兵介が叫ぶ。


「親父殺されて!!村追い出されて!!名前まで捨ててんだぞお前ぇぇ!!」


「いや、名前は別に捨ててないけど。」


「細けぇよぉぉ!!」


その横で。

ムジナが腹を抱えて転げ回っていた。


「ぶはははははっ!!」


尻尾を叩く。


「うわぁ、泣いてるよこの浪人!!」


「うるせぇ狸!!」


兵介が鼻を啜る。


「笑うな!!」


「だってお前、さっきから鼻水すげぇぞ!?」


「うるせぇ!!」


焚き火が揺れる。

ソウは少しだけ呆れた顔をしていた。


「……ムジナ。」


「ん?」


「お前、知ってたでしょ?」


ムジナが尻尾を揺らす。


「まあな。」


軽い声。


「だいたい見てたし。」


兵介が顔を上げる。


「はぁ!?」


「追放されるとこも見てた。」


「お前ぇ!?」


「良司のくだりとか最高だったなぁ。」


また笑う。


「似合ってない!って!」


「やめろぉぉ!!」


兵介が頭を抱える。

ソウも少しだけ笑った。


火が揺れる。

風が吹く。

兵介はしばらく鼻を啜っていたが。


やがて。


ぐい、と涙を拭いた。

真っ赤な目のまま、ソウを見る。


「……九条。」


低い声。


「良司。」


拳を握る。


「任せとけ。」


ソウが首を傾げる。


「何が?」


兵介は立ち上がった。

びしっと天を指差す。


「ソウは!!」


無駄に良い声。


「俺がしっかり見届けてやるからなぁぁぁ!!」


静寂。


ムジナが吹き出した。


「ぶはははははっ!!」


「笑うなぁあっ!!」


兵介が叫ぶ。

ソウはしばらく黙っていたが。

やがて。


「……はは。」


少しだけ笑った。


焚き火が、静かに辺りを照らしていた。

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