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角を狩るモノ  作者: Samail
四章 名前

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三十六話 禁忌

納めた天穿が揺れる。


双角の腕が、 良太の息子へ伸びている。


間に合わない。

刀では。

届かない。


呼吸をする。


腹の奥。

何かが、うねる。

熱い。


ずっと押さえ込んでいたものが、目を覚ます。


嫌な感覚だった。


だが。

同時に、ひどく馴染む感覚でもあった。


景色が変わる。

風の音。

人の息。

血の臭い。


全部が近い。

鮮明だった。


時間さえ、止まったように感じる。


一歩。


地面を蹴る。


二歩。


景色が流れる。


追いつく。

鬼へ。


右腕を、双角の背中へ当てる。


渦を描く感覚。

流し込む。

熱い。

重い。


腹の底で、何かが脈打つ。


「――ッ。」


貫く。


双角の身体が止まる。


左手。

振り抜く。


鬼の首を。


落とす。


遅れて。

血が噴き出した。

巨体が崩れる。


地面が揺れた。


静かだった。


風だけが吹いている。


良太の息子が、へたり込んでいた。

良太が駆け寄る。


「大丈夫か!?」


強く抱き締める。


泣き声。

震える声。


「……よかった。」


良太の目から、 涙が落ちる。


「ありがとう……蒼司……。」


俺は息を吐く。

助かった。

守れた。


それだけで、十分だった。


妙な視線を感じた。

振り向くと。

村人達が、こちらを見ている。

誰も近付かない。

声もない。


恐ろしいものを見る目だった。


九条も、動かない。


血だらけのまま、ただ俺を見ている。

愕然とした顔で。


腹の奥が熱い。


黄色い光が、双角から溢れた。


流れ込む。

重い。


理解する。

これが父上の言っていた。


彼岸の力だ。


息が詰まる。

腹に黄色い光が溜まって。

消えていく。


俺は、自分の手を見た。

指先が、微かに震えていた。

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