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角を狩るモノ  作者: Samail
二章 刀の名

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二十話 過去と未来

踏み込む。


土を踏む音が乾いていた。

兵介の刃が来る。

速い。

迷いがない。

受けない。

刃を流す。

角度だけ変える。


風が裂ける。

間合いに入る。


一歩。

それで十分だった。

止める。


刃先が、喉元で止まる。

兵介の呼吸が乱れる。

肩が上下している。


「……はぁ、はぁ……。」


汗が頬を伝う。


「……やっぱ強いな、お前。」


「そうでもないよ。」


短く返す。

刃を引く。

兵介も刀を下ろした。


軒先。


新吉が身を乗り出している。


「すげぇ……。」


ムジナは横で見ている。


兵介が小さく息を吐く。


「そういえば、弥助坊のところは行ったのかよ。」


「ああ。」


それだけ。


「……どうだった。」


「依頼はしたよ。」


――――――


墓地。


昼でも何処か暗い。


「これ、何かわかる?」


布を差し出す。

弥助坊が受け取る。

広げる。


「……紋だな。」


角度を変えて見る。


「どっかで見た気はするが……。」


「武家屋敷で見つけた。調べて。」


弥助坊は顔をしかめる。


「ちなみに傷の男は人違いだったよ。」


「そんなのは知らん!」


顔を上げる。


「言われた通り左頬に傷はあったろうが!」


「そうだね。」


それだけ。


ソウは黙っている。

ただ、見ている。

弥助坊の顔が、わずかに曇る。


「……まあいいか。」


舌打ちの代わりのように吐く。


「あと、武家屋敷にいたやつら、かなり上等なものを着ていたんだ。出所とか、調べられる?」


一瞬、沈黙。


「おまえ、それ結構面倒だぞ。」


布を揺らす。


「どうせロクでもない大物がいるに決まってるやつじゃねえか。」


目が笑っていない。


「1000文でいいかい。」


「乗ったぁ!!」


即答だった。

声が弾む。


「……いやもっとあってもいいな、それ。」


一瞬だけ、真顔。

すぐに、にやりと笑う。


「まあいい!やってやるよ!」


布を懐に押し込む。


――――――


「そんな感じかな。」


軒先。


兵介が呆れたように息を吐く。


「……あんまりいじめてやるなよ。ソウが一人で武家屋敷行くつもりだろうから、俺にも行ってやれって言ったの、あいつだぞ。」


「へー、そうだったんだ。」


ソウ、気付いてた顔をする。


「1500でもよかったかな。」


「なんでそんな金回りいいんだよ!」


「働いてるからね。」


当たり前のように言う。

新吉がけらけらと笑う。


「よし、じゃあ休憩おわりだ。」


「お、やる?」


二人、構える。


そして剣戟が響く。


遠くで鳶がゆっくり飛んで。

そのまま何処かへ消えていった。

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