十八話 忍気呑声
足を踏み入れる。
声が聞こえる。
下卑た笑い声。
一歩。
床が軋む。
「……。」
進む。
廊下。
暗い。
風が通らない。
「……ソウ。」
兵介の声。
止まらない。
奥の部屋。
開いている。
中を覗く。
転がっている。
人。
動かない。
一つ。
二つ。
増える。
「……。」
足を止める。
視線を落とす。
小さい。
子供。
動かない。
「……。」
それだけ。
声は、低い。
兵介が息を呑む。
「……許せん。」
小さく吐き捨てる兵介。
歩く。
奥へ。
血の臭い。
酒の臭い。
濃い。
足音。
振り向く。
男。
五人。
装備がいい。
「なんだ、お前ら。」
「仕事。」
それだけ言う。
男が笑う。
「仕事ォ?」
剣を抜く。
「ここがどこだか分かってんのか?」
「さあ。」
「俺たちをコケにして、ただで済むと思ってんのか!」
「うるさい。はやく来い。」
間。
男の顔が歪む。
「おまえも殺されるぞ!」
「誰に。」
沈黙。
目が逸れる。
「……知らねえ。」
「……あ、そ。」
踏み込む。
速い。
一人。
斬る。
深い。
倒れる。
二人。
間合いに入る。
斬る。
止まらない。
三人。
振り向く前に、終わる。
血が落ちる。
兵介が動く。
受ける。
「うらああああああ!」
裂帛。
斬り捨てる。
その後ろ。
ソウが斬る。
沈む。
「……すまねぇ。」
声。
答えない。
奥へ進む。
広間。
男が一人、立っている。
頬。
傷。
「……見つけた。」
男が笑う。
「あん?なんだてめぇは。」
踏み込む。
速い。
ぶつかる。
重い。
受ける。
返す。
斬る。
浅い。
男が笑う。
「はっ、弱えな。」
もう一歩。
踏み込む。
斬る。
深い。
腕が落ちる。
男が叫ぶ。
「待――」
止まらない。
斬る。
崩れる。
静かになる。
天穿を納める。
兵介が息を吐く。
「……終わり、か。」
視線を落とす。
死体。
多い。
「……違うな。」
小さく言う。
「何がだ。」
「……違う。」
それだけ。
外へ出る。
風が抜ける。
空は暗い。
「……外れか。」
小さく呟く。
歩き出す。
「……ソウ。」
兵介の声。
止まる。
振り返らない。
「……あいつら、せめて埋めてやってもいいか。」
少しだけ、間。
ソウは息を深く吸う。
「……ああ。そうしよう。」
それだけ言う。




